ドイツでの新型コロナウイルスによる死者数が3月10日の時点で2名と少ないのは「(健康な)若者の感染が多く確認されている」からでは?
ヨーロッパで感染確認者数が急増している新型コロナウイルスですが、その中でドイツだけで感染確認者に占める死者数が極端に少ない状況にあります。
隣国フランスとは所得水準などがほぼ同等であることを踏まえると、死者数が「10分の1」である現状は奇妙です。“からくり” は「症状が重症化しにくい若者に患者が集中しているから」と言えるでしょう。
ドイツとフランスの新型コロナウイルスによる感染者数と死者数
厚生労働省が発表している新型コロナウイルスの感染者数からフランスとドイツの数値を抜き出すと下表のようになります。
フランス (人口・約6700万人) |
ドイツ (人口・約8315万人) |
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感染者 | 死者 | 感染者 | 死者 | |
3月2日 | 130 | 2 | 131 | 0 |
3日 | 191 | 5 | 159 | 0 |
4日 | 212 | 4 | 196 | 0 |
5日 | 285 | 4 | 262 | 0 |
6日 | 423 | 7 | 400 | 0 |
9日 | 1126 | 19 | 902 | 0 |
10日 | 1412 | 30 | 1139 | 2 |
感染者の数は3月2日の時点で両国ともに130名。検査基準に違いはあるとは言え、ほぼ同じペースで新型コロナウイルスへの感染者数が増えています。
ただ、フランスとドイツの間には決定的な違いがあります。それは死者数です。日本時間3月10日の時点でフランスの死者が30名であることに対し、ドイツは2名です。これは何らかの “からくり” があると言わざるを得ないでしょう。
ドイツは重症化しやすい高齢者に感染確認者が少ないから、死者数が増えていない状況にある
ドイツでの新型コロナウイルスの感染者数は『ロベルト・コッホ研究所』が公表しています。その中で特筆すべきは年齢別の感染者数が日ごとに更新されていることでしょう。
現時点での最新版となる2020年3月10日時点での「年齢別の新型コロナウイルス感染者数(PDF)」は以下のとおりです。
- n=654
- 0〜4歳: 11人(1.7%)
- 5〜14歳: 14人(2.1%)
- 15〜59歳: 547人(83.6%)
- 60歳以上: 76人(11.6%)
新型コロナに感染したことで重症者しやすいのは「免疫力の低い人」です。基礎疾患を持っている人や高齢者が代表例ですが、ドイツで感染が確認された60歳以上の高齢者は全体の 10% 強です。
高齢者が新型コロナウイルスに感染していないなら、死者数が現時点で少ないことは何ら不思議ではありません。したがって、「高齢者をクラスターから可能な限り遠ざける」という対策は今後の方針として検討の価値があると言えるでしょう。
「ドイツの現状(=3月10日の状況)」は「フランスの3月2日の状況」と推測される
ドイツは(新型コロナの感染者が多く確認されている)現役世代が高齢者との濃厚接触を避ける行動を徹底していたのであれば、死者数を少なく抑えることは可能でしょう。
しかし、日常どおりの生活を送っていたのなら、かなりの確率でフランスの二の舞になると考えられます。
フランスは新型コロナウイルス感染を確認する『PCR 検査』の対象を限定していることに対し、ドイツは「ドライブスルー検査」を行うなど積極的に実施しています。だから、自発的に検査を受ける “現役世代” で感染が確認される結果になっているでしょう。
ただ、感染のアウトブレイクが発生するまでには “時間差” があることを見落としてはなりません。
ヨーロッパで新型コロナウイルスのアウトブレイクが発生したのはイタリアで2月24日から感染のペースが深刻になり、死者数が増加の一途を辿りました。フランスやスペインが同様の事態に見舞われたのは「1週間後の3月2日から」です。
ドイツ(やスイス、オランダなど)が「フランスやスペインから遅れること約1週間」で同様のアウトブレイクが発生する可能性があり得ることです。ドイツの場合は「積極的な検査実施による患者数の特定」から「重症患者へのケア」に切り替えなければ、医療崩壊が発生するリスクが高い状況にあります。
ドイツの現状は「積極的な『PCR 検査』を実施したことで “アウトブレイク前夜の状況” が見えている」と評することができるのではないでしょうか。