「築地を残す」と小池都知事が発言したことで、豊洲市場から運営企業が撤退し、違約金が発生する状況へ

 NHK によりますと、豊洲市場の敷地内に開業予定だった観光施設の運営権を持つ『万葉倶楽部』が「事業の前提条件が変化したこと」を理由に撤退を検討しているとのことです。

 条件が変われば、経営計画に狂いが生じます。また、すでに移転が遅れており、工事の計画にも影響が出ており、都の責任が免責されるというような事態にはならないと言えるでしょう。

 

 東京都は、築地市場の豊洲への移転にあわせ、豊洲市場の敷地内に「千客万来施設」という食文化を発信する観光施設をオープンさせる計画で、神奈川県に本社のある温浴施設の運営会社が整備・運営することが決まっています。

 しかし、小池知事が先月、豊洲に移転したあと築地を食のテーマパークとして再開発する基本方針を示したことを受け、この運営会社は事業の前提条件が変更され、このままでは豊洲から撤退せざるをえないとする意向を東京都に伝えていたことが、関係者への取材でわかりました。築地に同様の観光施設ができれば、互いに客を奪い合うことになり、事業の採算は取れなくなるなどとしています。

 運営会社と東京都は、現在、協議を進めていますが、東京都によりますと、仮に会社の撤退が決まった場合は、前提条件を変更した都側に違約金の支払いが発生する可能性があるということです。

 

 

1:移転延期と計画変更の責任は東京都にある

 小池都知事は「豊洲は安全だが、安心できない」と主張し、築地市場の豊洲への移転を延期してきました。当初の予定より遅れることになったのですから、移転を前提に経営計画を立案してきた企業は損害を被ることになります。

 観光施設の運営権を持つ『万葉倶楽部』はすでに工事開始を見合わせています。工事業者を無給で囲い込んでおくことはできず、追加費用が必要になることは明らかです。

 また、「築地を食のテーマパークにする」とも主張し、豊洲の隣接地にライバルを出現させる方針を示しました。これは事業の前提条件を大きく変えることであり、企業が撤退を決断する十分すぎる理由になると言えるでしょう。

 

2:“築地の場外市場” を築地市場全体と考えているのではないか

 築地市場が語られる際、『中央卸売市場』と『場外市場』が混ぜられた状態でマスコミに登場しています。一般に多く馴染みがあるのは『場外市場』の方でしょう。築地に買いに行く場合はほとんどは『場外市場』で済むからです。

 一方、移転で問題点が指摘されているのは『中央卸売市場』の方です。

 生鮮品が野ざらしでコールドチェーンが途切れる原因になっていたり、アスベストや開放型市場であることが問題になっているのは『中央卸売市場』なのです。『中央卸売市場』は衛生基準を満たせる機能を持っておらず、移転を拒む理由はありません。

 豊洲市場への移転する資金を捻出できない『中央卸売市場』の仲卸業者がゴネているにすぎない問題です。これを『場外市場』のイメージを持ち出し、「築地の食文化」などと語ることは論点のすり替えと言えるでしょう。

 

3:“リッチな東京都” なのだから、違約金の支払いは問題ではない

 東京都は裕福な自治体であり、万葉倶楽部に支払う違約金など大した額ではありません。ただ、ワイズスペンディング(=賢い支出)などと横文字で都民に訴えてきた方向性とは真逆となるため、知事の評価は下がることになるでしょう。

 築地に固執し、現状維持にこだわり続けるということも選択肢の1つです。ただ、その場合は東京五輪に多大な影響が出ますし、首都直下型地震が起きようものなら築地市場は甚大な影響が出ると予想されます。

 それらのリスクを踏まえた上で、小池知事は移転を延期してきたはずです。

 歴代都知事の無駄遣いランキングがあれば、小池知事はトップに立つ有力候補と言えるでしょう。美濃部都政(バラマキ)や石原都政(新東京銀行)で浪費した額を余裕で超えそうな勢いを見せています。

 それだけの資金力があることは贅沢なことですが、使い方が最悪であり、都民に上手く還元できているとは到底言えない状況です。この点は早急に見直す必要があると言えるのではないでしょうか。