アメリカ司法省がスプリントとTモバイルの合併を承認 連邦通信委員会は承認濃厚のため、州当局からの訴訟次第に

 日経新聞によりますと、アメリカ司法省がスプリントとTモバイルの合併を条件付きで承認すると発表したとのことです。

 連邦通信委員会(= FCC)は「合併を承認する見込み」ですから、司法省からの承認はソフトバンクにとっては朗報と言えるでしょう。そのため、州当局からの「合併差し止め訴訟」が実質的な “最後の関門” になると考えられます。

 

 米司法省は26日、ソフトバンクグループ傘下の米携帯通信4位スプリントと、同3位TモバイルUSの合併を条件付きで承認すると発表した。同省は審査に1年以上かけたが、新規参入をめざす衛星テレビ大手にプリペイド式携帯事業や周波数帯を売却することを条件に合併を認めた。

 (中略)

 米連邦通信委員会(FCC)のパイ委員長は「司法省の承認を歓迎する。両社の合併は我が国の5Gにおけるリーダーシップに役立つ」と声明を出した。FCCも近く正式に合併を承認する見通しだ。

 連邦当局の司法省とFCCの承認が得られば、スプリントとTモバイルの合併は可能だ。だが、両社はニューヨーク州などが提訴した差し止め訴訟が続く間は合併手続きを保留する方針。

 

「司法当局が合併を承認した」という事実はソフトバンクにとって朗報

 ソフトバンクにとって、傘下のスプリント社は業績が伸び悩んでおり、経営の重荷となっていました。そのため、「Tモバイルに売却すること」が経営的に不可避な状況でした。

 ただ、ネックになっていたのは「司法当局からの承認」と「通信当局からの承認」を得ることです。

 今回、安全保障上の問題を審査する司法省が「合併承認」を発表いたしました。「『プリペイド携帯事業』を周波数を付けて他社に売却すること」が条件に付けられていますが、合併を目指す両者が “飲める” 条件です。

 もう一方の連邦通信委員会も「売却先の企業(= ディッシュ・ネットワーク)が参入することで “4社体制” が維持される」との観点から合併承認に前向きです。したがって、連邦当局である司法省が合併を認めたことはソフトバンクにとって朗報と言えるでしょう。

 

残る大きな課題は「州当局が提起した合併差し止め訴訟」

 連邦当局が「合併承認」の姿勢を示したことで、ソフトバンクとTモバイルは「山場を超えた」と感じていることでしょう。

 しかし、山場はまだ残っていることを忘れるべきではありません。それは「ニューヨーク州などの州司法局が提起した合併差し止め訴訟」の存在です。

 アメリカは合衆国ですから、内政では「州の権限」を無視することはできません。都市部で人口を抱える州が中心となり、合併差し止めを求める訴訟を起こしているのですから無視することは得策とは言えません。

 したがって、訴訟対応に比重を移す必要があると言えるでしょう。

 

ソフトバンクによるスプリント投資への最終的な収支が注目点

 ソフトバンクが投資したスプリント社は “出血多量” で、経営体力が衰弱している状態にあります。

 ソフトバンクが送り込んだ経営陣によるテコ入れでは効果が得られなかったのです。そのため、「損切り」を念頭に置いた「事業売却」を決断することになったのでしょう。

 スプリントへの投資が「最終的にプラス」であれば、ソフトバンク経営陣の判断は「悪くはなかった」と評されるはずです。「最終的にマイナス」を計上するのであれば、「マイナス分を可能な限り圧縮すること」が求められます。

 州当局からの訴訟が長引くほど、スプリントの赤字は拡大し続けることでしょう。これは「訴訟が終了するまで合併に向けた動きは自重する」と両者が見解を示しているからです。

 大きな負債を抱えた企業をソフトバンクが上手く切り離すことができるのか今後の注目点と言えるのではないでしょうか。