“軍属” の範囲見直し、対象を厳格化する方向へ

 軍属の男が起こした事件を受け、沖縄では日米地位協定で定められた “軍属” に対する不満が煽られている状況です。その中で日米両政府が軍属の対象範囲を狭める形で協定の改定に動いているとNHKが報じています。

 

 沖縄のアメリカ軍の軍属による事件を受けて、日米両政府は5日、再発防止に向け、日米地位協定の対象となる軍属を4つの職種に分類したうえで、今後、対象範囲を詳細に見直す文書を交わすことを決めました。政府は、最終的に、対象範囲を狭める法的拘束力を持つ文書を交わしたいとしており、アメリカとの間で協定の実質的な改定につながる合意ができるかどうかが焦点になります。

 

 方向性としては「日米地位協定で定められた軍属の明確化」と「ルール運用の厳格化」の2点が軸になります。

 従来では軍属は「アメリカ国籍を有する文民で、日本にいるアメリカ軍に雇用され、勤務する者」という条文が根拠となっていました。ただ、これでは “派遣” という雇用形態の人物も軍属と解釈することが可能であるという問題があります。

 そのため、次のように変更される方向で話し合いが続いている状況であると報じられています。

  1. 軍属の範囲を明確化
    • アメリカ政府予算で雇用され、在日米軍のために勤務するか、監督下にある文民の被雇用者
    • アメリカ軍運行の船舶や航空機に乗船・搭乗する文民の被雇用者
    • アメリカ政府の被雇用者であり、アメリカ軍の公式目的のために日本に滞在する人物
    • 技術アドバイザーやコンサルタントで、在日米軍の公式招待などで日本に滞在する人物
  2. 日本に在留資格を有する人物を軍属から除外することを徹底
  3. 軍属の地位が与えられた人物の適格性を制度的・定期的に見直す

 

 どの国にも自国民の安全を守る責任があり、このことはアメリカも日本も同じです。ただし、アメリカや日本では法律で罰せられる行為であるにもかかわらず、軍属の地位にあるという理由で日本では罪に問われないというケースが存在するなら問題です。

 軍属の地位が認められるのは、アメリカ本国の軍事裁判で審判を受けるからという大事な前提条件を見落としてはなりません。

 今回の地位協定改定に向かう流れは、その範囲内であると言えるでしょう。アメリカが「責任を持てる人物に限定する」という方針はメディアなどからの言いがかり的なバッシングを避ける上でも重要なことであり、規則を遵守しているということをアピールすることになるからです。

 

 しかし、有事が発生していない平時の公務中に起きた問題を “軍属” として守られる状況は問題視され続けることになるでしょう。

 平時の出来事を軍法会議で裁くことは「想定外」と見なされることがあるからです。刑事/民事裁判となる代わりに軍法会議で裁かれるはずが、「地位協定のために自由の身が実質的に保証されている」とのバッシング源となるリスクがあることを意味しています。

 重要なことは問題が発生した場合の責任の所在を明らかにしておくことであり、軍属の絶対数を削減することではありません。問題があるなら、「自らが責任を負えないような人物を厚遇せよと主張するのはあまりに横柄だ」と真正面から英語も含めて批判すれば良いのです。

 具体例を沿えて論理的に批判すれば、アメリカの面子を潰すことなど朝飯前でしょう。何が問題なのかを主張することもせず、ただ「オキナワは被害者だ」などと踏ん反り返っているようでは相手にされません。

 軍属にどういった定義を求めているのか、具体的な案を示すことが求められていると言えるのではないでしょうか。