アメリカが2国間交渉を求めるなら、政府は甘利明議員を交渉役に再登用すべき

 アメリカでトランプ新政権が発足し、多国間の枠組みであるTPPではなく、よりアメリカの要望を強く押し通すことが可能である2国間交渉を要求することが濃厚と読売新聞が報じています。

 交渉が行われる可能性が考えられるだけに対策を講じる必要があります。国益を重視するのであれば、TPP交渉で結果を残した甘利明議員を再登用すべきと言えるでしょう。

 

 政府は27日、2月10日で最終調整中の日米首脳会談に向け、トランプ米大統領が主張する日米2国間の貿易交渉に応じる方向で準備に入った。

 環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を決めたトランプ氏は、首脳会談で2国間交渉を強く求めるとみられ、交渉は避けられないと判断した。ただ、トランプ氏が対日赤字を批判する自動車貿易については、日本側の立場から反論していく構えだ。

 

 アメリカ側が交渉を要求するのであれば、相手の交渉手段を熟知している人物をトップに任命する必要があります。

 アメリカは「交渉は互いに譲歩するもの」という認識で “最初の条件” を突きつけてくることが一般的です。これは自分たちが譲歩を求められた際に、「痛みを伴わない項目で譲歩し、本当に守りたい項目を守るための戦術」として使われるオーソドックスな手法です。

 この手法を知っているだけでも、交渉で下手に譲歩する必要はなくなります。そのため、どの分野の国益を優先して守るかが重要なポイントとなるのです。

 

GDPを14兆円も引き上げる通商交渉をまとめられる人物を起用しない手はない

 “口利き疑惑” が報じられた甘利明大臣ですが、TPP交渉で発揮した手腕は認めなければなりません。

 民進党が「TPP協定の発効が絶望的になったことでGDPが14兆円分下がったことへの対応をどうするのか」と与党を批判したことが甘利議員に対する何よりの賛辞と言えるでしょう。もし、アメリカが2国間協定の交渉を要求するなら、日本側は甘利議員を交渉責任者に登用すべきです。

 TPP交渉の実務者ですから、アメリカ側の “泣き所” は当然理解していると思われます。日本の国益を守るためには相手の弱みを突くことも必要ですので、交渉役として甘利議員以上の適任者はいないと考えられます。

 日本に年間14兆円分の経済効果をもたらす協定を締結してくれるのであれば、交渉に当たった甘利議員をトップにしたチーム全体に100億円の報酬を支払ったとしても、お得感があると言えるはずです。

 

もし、2国間協定の交渉をするなら、TPPの合意事項が基準となる

 仮に、アメリカ側が『日米2国間協定』の交渉を要求した場合、以前に言及したように「TPPの合意内容」を “交渉のカード” としてどれだけ有効に利用できるかがポイントになります。

 自民党は野党から「意味がない」と批判される中でTPP協定を国会で承認しましたが、これが交渉では活きてくるのです。

 自民党はTPP加入に前向きであることを示し、選挙に勝利しました。つまり、「有権者はTPP協定の条件ならOKだが、そこから譲歩するには “それなりの条件” が不可欠だ」とアメリカ側の要求を拒否する大義名分になるのです。

 また、トランプ大統領が主張するであろう自動車産業については「日本市場は世界で最も開かれており、ユーザーのニーズに合致した自動車であれば、売れることは明確だ」と反論することで一方的に譲歩する必要はなくなります。

 ただ、利害が一致する国と連携して交渉を優位に運ぶことが2国間協定の交渉では使えないことを念頭に置かなければなりません。そのため、優秀な交渉役が必須になることは言うまでもないことなのです。

 

 アメリカはEUからの離脱を宣言したイギリスとの2国間協定を優先的に進めることでしょう。どちらの国にとっても、貿易協定の締結に乗り出すメリットの方が大きいと言えるからです。

 それと並行して、アメリカ側は(アメリカにとっての実りが大きくなるよう)プレッシャーをかけてくることが予想されます。このような動きをアメリカが見せた場合、どのような対策を用意しているかで各政党に対する信頼が変わることになるでしょう。

 与党を批判していれば、ポイントが獲得できるの勘違いをしている野党は考えを改めるべきです。TPPに反対してGDPの押し下げに奔走した挙句、具体的な経済政策を持たないのであれば、多額の歳費を野党議員に支払う必要性はゼロと言われてしまうのではないでしょうか。