クライアント(依頼人)の不利益となる行為をした大渕弁護士が懲戒処分を受けるのは当然では?

 『行列のできる法律相談所』などテレビ番組に出演する大渕愛子弁護士が東京弁護士会から業務停止1ヶ月の懲戒処分を受けたことがニュースとなっています。

 「処分は不当に重いので、異議申し立てすべき」との意見を受け、手続きを検討するとのことですが、大渕弁護士の行為を見ると、妥当な懲戒内容と言えるのではないでしょうか。

 

 東京弁護士会によると、大渕弁護士は2010年10月、女性から養育費請求の依頼を受任。その後、女性は弁護士への報酬支払いについて法テラスの援助制度を使った。

 法テラスの規定では、弁護士が依頼人から直接報酬を受け取ることはできない。しかし、大渕弁護士は法テラスからの12万5千円のほかに、受任時に約束した着手金の不足分や顧問料として、女性から17万8500円を受領した。

 女性が11年6月に返金を求めたが大渕弁護士は拒絶。同年10月、弁護士会役員の説得に応じて返した。

 

 弁護士資格を有する人物が法律相談を受け、対価を請求することは当然です。大渕弁護士は「養育費請求の依頼」を受任し、仕事を行った訳ですから、対価を請求する権利を有しています。

 今回の問題は、大渕弁護士に依頼した女性が報酬の支払いが困難となり、法テラスの援助制度を利用したことへの対処を誤ったことと言えるでしょう。

 

 弁護士や司法書士の費用は条件を満たすことで、立て替えてもらうことが可能です。この場合、弁護士への報酬は法テラスが立て替え支払いを行い、(法テラスの)利用者は立て替え代金を法テラスに(主に分割で)支払うという形が採られます。

 着手金や実費などが立て替え対象となるのですが、大渕弁護士は法テラスからの支払いに加えて、依頼人の女性から「着手金の不足分や顧問料」という名目で報酬を受け取っています。

 この行為は弁護士報酬の二重取りをしていることと同じであり、弁護士の品位を落とすものとして処分の対象になり得るものでしょう。

 もちろん、「法テラスの利用者から報酬は受け取れない」というルールを知らなかった可能性はあります。しかし、法テラスの立て替え制度を使用したことで返金を求められたことに対し、拒否したという事実は大渕弁護士の印象をかなり悪くしたものと思われます。

 

 弁護士資格を持つ者が依頼人に不利益が生じるような行為を働き、依頼人からの是正要求を拒否したのです。これを訓告で済ませるのは明らかに甘すぎる対応と言えるのではないでしょうか。

 大渕弁護士が依頼人の女性から返金要求を受けた時点で、法テラス利用者からの報酬を受け取れないルールに気づき、返金したにもかかわらず、業務停止1ヶ月の懲戒処分が下ったのであれば、「処分内容は不当に重い」という主張は説得力を持つはずです。

 コンプライアンスが重視される現代では、大渕弁護士をテレビで起用しづらくなるかもしれません。

 ですが、きちんと弁護士活動をしているのであれば、それほど大きな影響は生じないはずです。“弁護士資格を有するテレビタレント” が実態であるなら、処分内容に同情が集まることもないと言えるのではないでしょうか。