格差を問題視する民進党が年金による世代間格差を容認するのは奇妙なことだ
年金支給額の改定ルールを盛り込んだ法案が衆院での審議入りを巡り与野党の対立が激しくなっているとNHKが報じています。
“世代間格差” が存在する年金問題において、格差是正は不可欠と言えるでしょう。格差を問題視する野党・民進党が是正の動きに消極的なのことは奇妙に映ります。
厚生労働省は17日、民進党の求めに応じ、新たな改定ルールを仮に10年余り前に実施していた場合、年金を受け取っている人の支給額が現在より3%減る一方、現役世代の将来の支給額は7%程度増えるとした試算を明らかにしました。
これに対し、民進党は、「賃金が将来にわたって下がらない」など、ありえない前提に基づいた試算だとして、出し直すとともに、2つの法案を切り離して、受給資格期間を短縮する法案の審議を優先するよう求めています。
年金や医療費などの社会保障費が政府の予算を圧迫していることは明らかです。財政健全化には支出の部分を削減することが不可欠なのですが、民進党はあまり乗り気ではありません。
“現在の年金受給世代” は明らかに優遇されすぎです。
「生活の苦しいお年寄り」をメディアはクローズアップし、同情を誘おうとしていますが、同様に厳しい生活を強いられる現役世代の割合は年金受給世代よりも多いのです。なぜ、豊かな高齢者世代に現役世代から仕送りをしなければならないのでしょうか。
民進党は「年金受給額の削減に反対」の姿勢を打ち出し、受給資格期間の短縮を先にするよう求めています。これでは年金の世代間格差を放置し、格差の対象範囲を拡大するという格差是正とは真逆の動きです。
財政再建や格差是正というテーマにおいては、衆院で審議入りが目前となっている新たな改定ルール(=受給世代の支給を減額、現役世代の支給を増額)の方向が有力な選択肢です。
もちろん、反対意見を述べる権利はどの政党にも存在します。しかし、蓮舫新代表が就任した際に「対案を提示する」と宣言した民進党は財政再建や格差是正に直結する “年金問題についての具体的な対案” を出すべきです。
「お年寄りの生活を守れ」と主張するだけでは「その予算を具体的にはどこから用意するのか」と追求された時点で言葉に詰まるでしょう。
民進党が政権を担うために約束した “埋蔵金” はどこにも存在しませんでした。根拠を示せない甘い誘惑を鵜呑みにしたことへの反省を多くの有権者が現在もしているから、民進党への支持が回復する兆しが一向に見えてこないのでしょう。
「格差是正を求める」ことが口先だけではないなら、現・年金受給世代の支給額を減らし、現役世代の年金支給額を増やすか、それに相当する具体的な対案を提示しなければなりません。
予算の元手となる税収額は政策によって上下するものなのです。企業や個人など現役世代の負担が増加するほど経済は疲弊し、回復が難しくなることを野党やリベラルを自称するメディアは軽視しすぎているのではないでしょうか。