マスコミが本当に “弱者の味方” であるかは、東京ビックサイト使用制限問題の立ち位置で判明するだろう
おそらく、このニュースをマスコミが大きく報じることはないでしょう。
東京ビッグサイトがオリンピックでの “メディアセンター” として利用されることで、見本市などのイベント開催ができなくなり、損失を被る企業から批判の声が出ていると NHK が伝えています。
東京・江東区の東京ビッグサイトは、年間およそ300件の見本市などのイベントが開かれています。
しかし、東京オリンピック・パラリンピックで報道機関が拠点とする「メディアセンター」として利用されることが決まっていて、改修工事などのため大会の前年の2019年から施設のおよそ半分が利用できなくなり、大会期間中はすべての施設が利用できなくなる見通しです。
(中略)
これに対し企業からは、東京ビッグサイトをメディアセンターの会場とすること自体を見直すよう求める意見などが相次いだということです。
説明会に参加した、広島県の企業の経営者は、「イベントがなくなることで3億円の損害が出ると想定していて影響は深刻だ」と話していました。
要するに、世界各国から押し寄せるマスコミの報道拠点とするため、東京ビックサイトで開催されていた見本市など従来のイベントが開催できなくなるということです。これは見本市に参加している中小・零細企業にとっては死活問題です。
なぜなら、資本に乏しい企業にとって、“多数の企業との接点を持つことができる見本市” の価値は計り知れないからです。
名刺交換を行った企業に挨拶回りを行ったり、感触の良かった企業にセールスをかけたり、受注したりと企業の生命線なのです。砂漠のオアシス的な役割を果たしているのですが、その機能が損なわれることになれば、倒産する企業が続出することになるでしょう。
「1シーズンぐらい大したことはないだろ」と考えるマスコミは3ヶ月で良いですから、取材活動を自粛してみるべきです。その上で、売上・利益ともに影響がないことを示す必要があります。
オリンピックの取材に訪れるマスコミはどこも資金的に問題のない裕福な企業ばかりです。そのようなメディアでさえ、数ヶ月の取材活動自粛要請には大反発するのですから、東京ビックサイトで行われる見本市などを生命線にしている企業が怒りを示すことは当然です。
政治部の記者が政治の取材ができなければ、大きなマイナスを引き起こすことになります。経済部・スポーツ部の記者も自らが専門とする分野の取材活動が一定期間に渡り強制的にストップをかけられれば、成果が生まれず、業績不振による解雇の影響を受けることは想像できるはずです。
メディアセンターを設立することが中小・零細企業の業績不振を引き起こす要因として大きく懸念されているのですから、“弱者の味方” を日頃から主張するマスコミほど、この件を大々的に報じなければならないことは明確だと言えるでしょう。
解決策は「東京ビックサイトをメディアセンターとして利用しない」ということです。
中小・零細企業だからと甘く見ていると、そこから飛躍的に成長を遂げた企業が出現した場合、マスコミは屈辱的な扱いを受けることは目に見えています。銀行ですら、取引を拒まれる状況がある中で情報伝達を独占できなくなった既存メディアほど相対的に地位を落とすことが確定している業種はありません。
しかし、「東京ビックサイトを使わない場合の代替施設はどこにするのか」という疑問を持つ人はいるでしょう。
これは「築地にある朝日新聞(東京本社)の社屋を “メディアセンター” として開放する」ことですべては解決されることです。
「経産省がセキュリティーを強化し、取材活動に制限が出た」と朝日新聞は文句を述べています。であるなら、東京ビックサイトをメディアセンターとして利用しないことで取材活動に生じた負担を朝日新聞が担うことで、取材を受ける場を提供する側としての手本を示すべきです。
また、朝日新聞・東京本社は国有地を格安価格で払い下げられた物件です。“オイシイ思い” をした大手マスコミの1つなのですから、その恩恵を国民に還元することは当然の責務と言えるでしょう。
なぜなら、東京ビックサイトが “メディアセンター” として利用されることで締め出される中小・零細企業で勤務する人々も「マスコミが享受している恩恵を還元されるべき国民」だからです。
朝日新聞が「なぜ、自分たちだけが...」と不満に思うなら、大手町で社屋を抱える読売新聞や一ツ橋に本社を置く毎日新聞に「お前らも負担しろ」と主張すれば済む話です。“弱者の味方” を自称し、経産省のセキュリティー管理強化に批判的なメディアほど喜んで協力してくれることでしょう。
世界中の大手マスコミのために、日本の中小・零細企業が苦しい立場に追いやられる。本当に “弱者の味方” であるなら、このような暴挙に対し、「ペンの力」で断固として立ち向かうことが本物のジャーナリズムであり、報道機関なのではないでしょうか。