「大学授業料の “出世払い” は大学自身がやるべき」という荘司雅彦弁護士のアイデアは秀逸だと思う

 自民党の教育再生実行本部が『大学授業料の出世払い』を安倍首相に提言したことに対し、弁護士の荘司雅彦氏が自身のブログで「大学授業料の “出世払い” は大学自身がやるべき」と主張しています。

 このアイデアは非常に秀逸なものと言えるでしょう。各大学ごとに独自色を打ち出すことができ、教育による人材育成に本腰を入れることが期待できるからです。

 

現行の大学教育制度には問題がある

 「教育無償化」はバラマキの温床になるとの指摘が既に存在し、反発が起きています。『企業が求める人材』と『現行の大学制度によって育成された人材』の間にギャップが生じており、大学が好き勝手できる情勢ではないと言えるでしょう。

 大学全入時代であり、無償化に舵を切ることは論外です。

 

 「海外では大学無償化はできている」との主張がありますが、欧米は大学全入時代ではありません。“Fランクの大学” にまで多額の税金を投入することの意味を見つけることの方が困難なことなのです。

 大卒の学歴を持っていたところで、優良企業に就職できる保証はないのです。全員が大卒であれば、その中で優劣は就職活動を通して浮き彫りとなり、優劣に問わず学費の返済義務は残ることになるのです。

 

大学が授業料の “出世払い” を行うという考えは取り入れるべき

 「国が大学授業料の “出世払い” をする」というプランより、荘司弁護士が主張する「大学が授業料の “出世払い” をする」という方が好ましいと言えるでしょう。荘司弁護士は次のような利点をあげているからです。

  • 大学が入試段階で真剣に学生を選別するようになる
  • 授業密度が濃くなる
  • 能力のない教員は解雇され、新陳代謝が促進される

 荘司弁護士が掲げた主張の肝は「ダメな学生・教員による損失は大学側が被る」というものです。この意見は “落としどころ” として非常に秀逸なものと思われます。

 

「大学の自治」があるのだから、学生・教員が『不良債権』にしない教育方針を実施する自由度は存在する

 ダメな学生・教員が『不良債権』を生み出した場合の穴埋めを国民全体に強制されることは理解を得られないでしょう。なぜなら、納税者には各大学の教育方針を指導することはできないからです。

 しかし、教育方針を自ら決定できる大学には『不良債権』を生まないための施策を打ち出すことが可能なのです。そのため、「大学授業料の “出世払い” は大学自身がやるべき」との意見に反対しづらいはずです。

  • 能力のない学生・教員が『不良債権』を生み出した場合
    • 国からの出世払いだと、国民全体の負担
    • 大学からの出世払いだと、大学自身の負担

 現状は「学生を集めれば、教育効果は問わない」という無責任なものです。それが “Fランクの大学” という形で世間に知れ渡り、「不良債権と化す可能性が極めて高い学生の尻拭いをさせられるのは嫌だ」という感情が広がることは当然と言えるでしょう。

 

 ぬるま湯に浸かり、甘い汁を吸い続けている既得権益者は猛反発することが予想されます。しかし、“大学の自治” を掲げる学校ばかりですから、「大学による授業料の出世払い」で教育無償化を実施すべきと言えるのではないでしょうか。