大手自動車メーカーも電気自動車へのシフトを表明するも、日本市場は取り残される状況に

 イギリスやフランスが2040年を目処にガソリン車やディーゼル車の販売を禁止することを表明したことに対し、日本の自動車メーカーも EV (電気自動車)に注力すると発表したと NHK が報じています。

 ただ、電気自動車には課題もあり、現状の日本市場では導入のメリットは極めて低いと言えるでしょう。その証拠に日本の大手自動車メーカーは国外市場に比重を置いているからです。

 

 イギリス政府が2040年以降、ガソリン車やディーゼル車の販売を禁止すると発表するなど世界的に自動車の排ガス規制が強化されることを受けて、日本の自動車メーカー各社は走行中に排ガスを出さないEV=電気自動車の開発や販売の動きを本格化させることにしています。

 

 EV の能力には限界があることは事実です。走行可能距離が短く、高価格であるという問題を解決できるかが普及に向けた課題と言えるでしょう。

 大気汚染や温暖化に対し、EV はエコです。しかし、火力発電に依存している状況では EV が普及したとしても、大気汚染や温暖化はガソリン・ディーゼル車が主力の時と比較した恩恵が得られることはほとんどないと思われます。

 

1:車の内燃機関を火力発電所が上回ることは非現実的

 EV (電気自動車)の普及に疑問符が付く理由の1つは「車両の内燃機関による効率を火力発電を使った効率が上回るとは考えらない」という点です。

画像:動力源の違い

 ガソリン車(やディーゼル車)の燃料は原油を精製したものですが、それは火力発電でも同じです。つまり、燃料の大元に当たる原油価格はどちらも同じであり、車両の内燃機関(≒エンジン)を火力発電所で代用しても効率が上がることはないのです。

 むしろ、プロセスが増える訳ですから、コストという点で火力発電では太刀打ちできない実状があります。

 

2:EV のメリットは都市部の大気汚染の度合いを低下させられること

 EV (電気自動車)が脚光を浴びている理由は「都市部の大気汚染を軽減させられるから」です。

 これは「既存のガソリン車・ディーゼル車が個別の火力発電所を運転しているから」と説明すれば、理解されやすいでしょう。大量の車両が都市部を走行すれば、複数の火力発電所が都市部で運用されていることと同じ状況が発生します。

 実際にはディーゼル車で排ガス不正が発覚して問題がなったように自動車の排ガス規制は火力発電所よりも緩く、ガソリン車やディーゼル車を EV に置き換えることは都市部の大気汚染が緩和されるというメリットが期待できるのです。

 

3:火力発電所から電力頼みではコストは下がらず、排ガスの発生源を付け替えただけとなる

 電気自動車(EV)が普及するかはコストとインフラが整備されるかという点に集約されるでしょう。都市部の大気汚染は軽減されますが、温室効果ガスを始めとする大気汚染物質の絶対量を減らさない限り、本質的な対策とは呼べないからです。

 大手自動車メーカーは EV のシフトを表明していますが、中国など政府が音頭を取り、原子力発電による安価な電力の供給が見込める国への参入が主体となっています。

 日本国内ではインフラ設備に政府が乗り出すような動きはなく、電気代も反原発派の活動を応援するメディアがあり、高い水準のままです。したがって、一般に普及する見込みは現状では極めて低いと言えるでしょう。

 

 EV の喫緊の課題は「バッテリー容量が充電の度に落ちていく」ということです。「給油の度にタンクの容量が減っていくガソリン車」に魅力を感じる消費者はいないでしょう。

 コケる要因がそこら中に転がっていますが、補助金をつぎ込むことで隠すことは可能です。しかし、その予算を国が捻出することは難しく、技術面が先行した上で原発による資金で環境を整備するなどの特区型で成功例を作ることから始める必要があると思われます。

 日本市場で EV が主力になる見込みは低い訳ですが、有望市場となる国(または地域)を対象にした車両開発を自動車メーカー側がすることは企業として理に叶った判断と言えるはずです。エンジンを始めとする駆動系を専門とするメーカーにとっては逆風が吹き始めたと言えるのではないでしょうか。