“年功序列で救済されていたシャープ社員” がホンハイの実力主義に文句を述べているだけでは?

 ホンハイ傘下に入り、業績が急回復したシャープから実力主義に対する不満が出ていると時事通信が伝えています。

 ただ、不満を持っているのは少数であり、組織に与える影響は限定的と言えるでしょう。会社への貢献度は異なる訳ですし、貢献度を測定する手法が統一されたものが採用されているのであれば、問題が大きくなる見込みは小さいからです。

 

 シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ってから12日で1年。業績は急回復し、縮小均衡から海外市場を中心とする拡大路線に転じた。だが社員の間には徹底した実力主義に対する不満もある。

 (中略)

 社内融和の実現は容易ではない。課題の一つは、信賞必罰の人事制度の浸透だ。業績への貢献度に応じて賞与(ボーナス)を差別化。最高8カ月分、最低1カ月分という差をつけた。

 同社が行った社員1万1000人のアンケート調査では、戴社長のスピード経営などへの評価が高かった半面、信賞必罰人事については約15%が納得していないと回答。理由の多くは「評価の公平性・納得性を高めてほしい」といったものだった。

 

 「信賞必罰ではなく、年齢で給与が決まる人事制度」が通用する時代ではなくなったと言えるでしょう。

 競争条件が変化したのですから、それに適応しなければなりません。それができていなかったことが業績低迷の原因になったと言えるはずです。

 

1:トップが “変化” の方向性で正解を導けず、業績が低迷する

 シャープの業績低迷から外資の力で回復を遂げたというパターンは日産自動車を彷彿とさせます。強烈なリーダーシップを持ち、日本の “しがらみ” とは無関係な外国人トップが大鉈を振るったことで業績が改善したのです。

 どちらもトップによるコストダウンが行われ、業績が上向き、回復の勢いが増す結果となりました。

 日本では「従業員の解雇」は会社が破産しない限り、実施することは実質的に不可能です。そのため、希望退職という形で誤魔化していますが、限界があり、日産やシャープのように手遅れとなるケースが多いと言えるでしょう。

 

2:カリスマ的なトップなら、並みの社員を率いても業績を出すことはできる

 シャープは過去に3度の希望退職を実施しており、優秀と言われた社員は会社を去っていることでしょう。

 自分を評価しない会社から割増の退職金を得られますし、希望退職を募集するほどに追い詰められた会社に見切りを付ける有能な社員が発生していると考えられるからです。

 残った社員の中にも優秀な人はいると思われます。ただ、優秀な社員の絶対数は下がっているはずですので、社員の能力平均が下がっていることは否定できません。

 つまり、会社の経営資源は低下している状況なのです。その中でも業績を黒字転換させ、結果を残すことに成功している経営者はカリスマ的なトップとして高く評価されるべきことと言えるでしょう。

 

3:ダメな会社は潰れ、魅力ある企業に人が集まる雇用体系となるべき

 業績に貢献しない社員の解雇が判例で禁じられ、信賞必罰の人事制度は否定的。この環境は社員にとって非常に魅力的です。なぜなら、仕事で結果を出さなくても報酬は年々上昇するという恵まれた状況だからです。

 しかし、完全な “ぬるま湯の環境” です。年功序列であることは飛び級のような形で昇進は起こり得ません。その結果、時代の変化に適応する必要性を見出すことができず、業績が下り坂になっていることに気づかず、手遅れになることが起きるのです。

 現状のシャープで信賞必罰の人事制度に不満を訴えているの伝えらえているのは 15%。GE で君臨したジャック・ウェルチは「会社のボトム 20% は業績への貢献が乏しいので解雇すべき」と述べており、そこに位置付けられている社員が文句を述べているに過ぎないと見る必要もあります。

 もし、人事に不満を持つ 15% の業務遂行能力が新入社員より劣っていて、改善の見通しがないなら金銭解雇を可能とするよう政治が動くべきです。過去の業績を自慢するしか能力がなく、しかも高給取りであれば、会社にとって重荷でしかないからです。

 

 貢献度という形で社員の能力に見合った報酬体系を確立させ、競争力を高めて外資系企業と渡り合うことができなければ、厳しい状況を脱することはできないと言えるのではないでしょうか。