「解雇の金銭解決」に対する議論を本格化させた厚労省の姿勢は評価されるべき

 朝日新聞によりますと、厚生労働省が「解雇の金銭解決制度」をめぐる議論を本格化させる方針を示したとのことです。

 “労働者の味方” を自称するリベラル派は表面的に「労働側が反発する声」を取り上げることでしょう。しかし、ポンコツぶりの酷すぎる社員が原因で苦い思いをするのは他の社員です。記事を書いた千葉卓朗氏もそのことに感づいているのではないでしょうか。

 

 解雇のトラブルをお金で解決する「解雇の金銭解決制度」を巡り、厚生労働省は22日、解雇された労働者が職場復帰を求めなくても、解決金の支払いを要求できる権利を与える新たな制度の導入について本格的に議論する方針を明らかにした。厚労省の労働政策審議会で、今夏にも法改正に向けた議論が始まる見通しになった。

 

 どれだけ能力の低い労働者であっても、正社員の地位を一度得てしまえば、解雇されることは例外的なケースに限定されます。

 警察沙汰など法に触れるトラブルを起こさない限り、どれだけ業務遂行能力が低くても職を失うことはないのです。仕事ができない分が他の社員に押し付けられる結果を招く土壌になるため、長時間労働の温床になっていると言えるでしょう。

 能力の低い社員を金銭面で解雇できるようになることは多くの社員が恩恵を受けることになることが期待できます。

 

 「金銭解雇が可能になること」を批判する人はいるでしょう。しかし、金銭解雇ができないと、以下のような能力の社員ですら解雇できないのです。

  • 社員A
    • 新入社員が受ける1週間程度の研修を2週間行っても、試験をパスできない
    • 他の社員が四半期で30件ほど処理できる業務を1件も処理できない
    • 所用時間10分程度のデータ入力業務を1日6〜7件しかできない
  • 社員B
    • 服装規定に反し、Tシャツにサンダル姿で出勤
    • 業務に励む気はないと明言
  • 社員C
    • 遅刻・欠勤の常習犯

 上記は IBM と解雇無効を争った社員の実態なのですが、この水準の社員でも解雇できないのです。どれだけ業務遂行能力が乏しかろうと、素行が悪かろうと、“会社に残りたい社員” が極端にまで優遇されていることが現状なのです。

 新入社員未満の能力しか持たないポンコツ社員が年功序列の恩恵を受けて若手・中堅層の社員よりも高給を得ているのですから、業績が落ち込むことは当然と言えるでしょう。

 

 記事を書いた朝日新聞・千葉卓朗氏の周囲にも “金銭解雇の対象とすべき記者” はいるはずです。また、どの会社にも “金銭解雇の対象とすべき社員” はいるでしょう。

 一部の問題社員を守ることによるツケを他の社員がカバーさせられていることが問題なのです。「なぜ、新入社員未満の業務遂行能力しか持たない社員を新卒または中途社員と入れ替えないのか?」という問いに論理的に説明する責務が反対派にはあります。

 市場のニーズが変化したのであれば、会社は組織として変化しなければなりません。社員も対応する必要があり、対応できない社員は必要な能力を持つ新卒社員や中途社員と入れ替えることは当然であるはずです。

 しかし、入れ替えなければならない社員が “解雇4要件” を理由に、居座ることが容認されているのですから、企業の競争力が削がれる結果になって当然と言えるでしょう。減俸すら満足にできないのですから、有能な若手・中堅社員を雇用するだけの賃金が確保できなくなるからです。

 

 厚労省が金銭解雇の議論を本格化させる方針を明確化したことに反対するのは一部の組合員だけでしょう。労働者の雇用環境を良くするのことに本腰を入れているのであれば、業務遂行能力に劣り、年功序列の恩恵を受けただけの社員が “甘い汁” を吸い続けている状況は是正すべきと断言できるはずです。

 「解雇は許さない」というスタンスを朝日新聞が採るのであれば、まずは系列子会社を朝日新聞に吸収させることを始めるべきでしょう。その上で、『解雇できない特区』の採用を政府に働きかけ、解雇の必要性がないことを証明することで自らの主張が正しいことを証明すべきと言えるのではないでしょうか。