韓国で起きている徴用工訴訟、最大の焦点は「韓国・大法院が示す判決に日本政府がどう対処するか」だ

 韓国で元徴用工やその遺族が日本企業に損害賠償を求め、韓国の裁判所が原告勝訴の判決を下していると NHK が伝えています。

 勝訴連発となっているのは地裁・高裁レベルであり、個別の訴訟に反応する必要はありません。重要なのは「日本の最高裁に該当する大法院で結論が先送りになっている一次訴訟の判決への対応」と言えるでしょう。

 

 太平洋戦争中に徴用され、日本の工場で働かされたとする韓国の元労働者やその遺族らが日本企業に対して損害賠償を求めた裁判で、韓国の裁判所は原告側の主張を認める判決を言い渡しました。韓国ではこうした判決が相次いでいますが、日本政府は両国間で結ばれた協定ですでに解決済みだという立場です。

 

 請求権は日韓基本条約が締結された際に消滅しています。韓国の裁判所がそれを覆そうとする判例を出し、状況が混沌とし始めているのです。

 もし、韓国・大法院(日本の最高裁判所に相当)で請求権が認められるのであれば、日本政府として必要な対処を採る必要があると言わなければなりません。

 

1:韓国・徴用工訴訟の流れ

 韓国で徴用工訴訟が本格化したのは2000年のことです。一次訴訟と呼ばれる裁判で原告は負け続け、大法院までたどり着いたという過去があります。

画像:徴用工訴訟の流れ

 高等法院(日本の高等裁判所に相当)で敗訴となった原告ですが、2012年5月に大法院で「個人の請求権は消滅していない」と画期的な判決を勝ち取り、訴訟は高裁に差し戻されます。

 高等法院での差し戻し審は原告勝訴。被告側がそれを不服とし、大法院に再上告。それから4年以上判決が出ていない状況となっています。

 

2:韓国・大法院が「原告勝訴」とした場合の対応策を日本政府は用意しておく必要がある

 徴用工訴訟についての判決をいつ韓国・大法院が下すのかは不透明です。ただ、韓国国内から「いつになったら、判決が出るのか」との “突き上げ” が起きており、遠くないうちに出ることでしょう。

 その際、日本政府が対応する必要が生じるのは「原告勝訴(被告=三菱重工業に賠償命令が下る)」という判決が出た場合です。

 これは『日韓基本条約』を完全に無視した判決となりますので、「韓国は条約を守らない国」であることを世界中に向け発信し、条約を破ったことに対する代償を支払わせなければなりません。ICJ (国際司法裁判所)に提訴し、韓国側に非があることを示す必要があるのです。

 

3:韓国の地裁・高裁で原告がどれだけ勝訴しようが関係ない

 韓国の国内世論が盛り上がり、地裁・高裁のレベルでどれだけ原告が勝訴を積み重ねようとあまり意味はありません。重要なのは最高裁に当たる大法院で審議されているであろう一次訴訟の行方だからです。

 もし、徴用工の一次訴訟で原告勝訴が確定した場合、地裁・高裁レベルで連戦連勝の原告が後に続くことになります。

 高裁に原告勝訴の形で差し戻したのですから、大法院でも原告勝訴という判決を出したいのでしょう。しかし、そのような判決を出せば、ICJ に日本政府が提訴することが考えられますし、そうなると韓国側が敗訴する可能性が高いと指摘されています。

 少なくとも、日韓関係が悪化することは確定的ですし、ICJ で韓国側が敗訴すると韓国・大法院のメンツは完全に潰れるというオマケ付きです。ただ、「そうはさせまい」との思惑を持ち、ICJ への提訴を見送ることを主張するマスコミが現れることでしょう。注意すべきはそのような “裏切り者” と言えるはずです。

 

 事態が本当に大きく動くのは韓国・大法院(日本の最高裁に相当)で徴用工の一次訴訟の判決が出た時です。その際、原告・被告のどちらが求める判決が出たとしても、政府として適切な反応が速やかに採ることができるように準備しておくことが重要であると言えるのではないでしょうか。