NHK、「問題ではない福島での甲状腺ガン」への不安を『3・11甲状腺がん子ども基金』とともに煽る

 NHK が支援団体と「問題ではない福島での甲状腺ガン」への不安を煽る記事を掲載しています。

画像:NHK が報じたニュースに対するファクトチェック

 甲状腺ガンに対する確立された知見を無視し、偏見を広げ、必要でない不安を煽っているのです。その上、煽った側の組織が国に「不安に対処せよ」と要求することは活動家の振る舞いと言えるでしょう。

 

■ NHK が報じた記事

 NHK が報じた記事の内容は以下のものです。

 支援団体の「3・11甲状腺がん子ども基金」とNHKは、ことし8月、甲状腺がんの手術を受けた子どもまたはその保護者、合わせて67人に郵送でアンケートを行い、52人から回答を得ました。

 この中で、今不安に感じていることがあるか尋ねたところ、「ある」という回答が77%に上りました。

 (中略)

 見つかったがんについて、有識者で作る県民健康調査検討委員会が、現時点で放射線の影響とは考えにくいとする見解を示している一方、アンケートではほぼ半数が「事故の影響はあると思う」と答えていて、認識の違いも浮き彫りになりました。

 「3・11甲状腺がん子ども基金」は、これまで知られていなかった実態が明らかになったとして、患者への精神的なサポートや診療などにかかる費用など、国や県に十分な支援を求めることにしています。

 代表理事の崎山比早子さんは「何が原因であろうと、原発事故がなければこのような状況にはならなかったことは確かで、継続的な患者のケアが必要だ」と話しています。

 

■ 事実

1:福島県で発見される甲状腺ガンの割合は他県と同じ

 NHK や『3・11甲状腺がん子ども基金』が頑なに触れないのは「福島県で発見される甲状腺癌の割合が他県と変わらない」という事実でしょう。環境省は平成25年(2013年)に以下の資料を発表しているからです。

表1:甲状腺有所見率調査結果
判定 弘前市 甲府市 長崎市
A1 670人
(41.1%)
404人
(29.6%)
779人
(56.9%)
A2
(福島:40%)
939人
(57.6%)
947人
(69.3%)
582人
(42.5%)
B 21人
(1.3%)
15人
(1.1%)
8人
(0.6%)
C 0人 0人 0人
合計 1630人 1366人 1369人

 福島県で行われた県民健康管理調査の甲状腺検査では「約 40% の方に 20.0mm 以下の小さなのう胞などの所見が認められた」とのこと。これは上表の "A2" で示した項目に該当します。

 弘前市(青森)、甲府市(山梨)、長崎市(長崎)の方が "A2" での項目に占める割合の方が大きいのです。このデータから「福島県で見つかった甲状腺癌の原因は原発事故」と結論づけることは無理があると言えるでしょう。

 

2:ガン検査の目的は「ガンを発見するため」

 福島県で「甲状腺癌の発見数」が増えた理由ですが、これは福島県だけで甲状腺のマススクリーニング(早期発見のための検査)が行われたからです。

 「甲状腺ガンがあるかもしれない」という認識で検査を行うのです。その結果として、「発見数」が増えることは当然の結果と言えるでしょう。

 ただし、甲状腺の検診には問題点があります。それは甲状腺ガンの進行は極めて遅く、ガンの中では危険度が低いという性質を持っていることです。

 言い換えれば、「ほぼ命に別状はない」のです。マススクリーニングでは “ほったらかしにしてても問題ない甲状腺ガン” をも発見してしまうのです。必要のない不安を受診者に与える意味はないと言えるでしょう。

 

3:『3・11甲状腺がん子ども基金』は不安を煽る支援団体

 データや知見を根拠にすれば、甲状腺ガンを不安に感じることはないことは明らかです。不安に感じる福島県民などがいるのであれば、「問題がないこと」を説明し、不安を払拭することが支援団体の役目と言えるでしょう。

 しかし、『3・11甲状腺がん子ども基金』がやっていることは逆です。

 代表理事を務める崎山比早子氏は「何が原因であろうと、原発事故がなければこのような状況にはならなかったことは確か」と述べていますが、原因は『3・11甲状腺がん子ども基金』などが不安を煽ったことです。

 おそらく、批判が寄せられると「原発事故がなければ、マススクリーニングの必要性もなかった」と逃げることでしょう。原発事故が原因で福島県で甲状腺ガンが増えたと言うことはないのです。

 

 危険度が低い甲状腺ガンとは言え、ガンと診断されると患者は大きなショックを受けます。しかも、大量の過剰診断(ガンは見つかったが、手術すべきかどうか分からない状況)が発生することでしょう。

 その結果、「念のため、手術をしましょう」という事態が起きるのです。過剰診断は一定の割合で発生するものですが、危険性が低い甲状腺ガンではやるべきではありません。手術後は一生投薬し続けなければならなくなるからです。

 統計データが欲しい医師と不安を煽ることで活動資金を募りたい市民団体のタッグに NHK が理解を示すことに大きな問題があると言えるのではないでしょうか。