NHK 等のマスコミ、“国連の名を語る個人” の「福島への子供や女性の帰還を見合わせろ」との主張を大々的に報じる

 NHK などのマスコミが「国連の特別報告者が福島への子供や女性の帰還見合わせを求めている」と大きく報じています。

 ただ、この主張には科学的根拠はなく、福島に対する風評を引き起こすものです。しかも、「国連」ではなく、「国連人権理事会の特別報告者」が個人的に主張していることに過ぎません。

 “活動家の意向” が色濃く反映された『提言』なのですから、報道に値する内容ではないと言わざるを得ないでしょう。

 

 国連の人権理事会が任命したトゥンジャク特別報告者は、25日の国連総会の委員会で、東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、日本政府が避難指示を解除する基準の1つを年間の被ばく量20ミリシーベルト以下にしていることについて「去年、人権理事会が勧告した1ミリシーベルト以下という基準を考慮していない」と批判しました。

 これに対し、日本政府の担当者は、この基準は専門家で作るICRP=国際放射線防護委員会が2007年に出した勧告をもとにしており、避難指示の解除にあたっては国内の専門家と協議して適切に行っているとして、「こうした報告が風評被害などの否定的な影響をもたらすことを懸念する」と反論しました。

 

原発事故による放射線で肺がんなどを発症して亡くなった人はいない

 特別報告者バスクト・トゥンジャク氏が報告した内容で問題視されるはレポート(MS Word)に以下の一文があることでしょう。

 The death of a remediation worker from lung cancer was recently recognized as resulting from exposure to radiation.

 「原発作業員が肺がんで死亡したことは被爆による結果として認識された」と書いていますが、これは「肺がんで亡くなった原発作業員の労災認定が認められた」というケースを都合良く解釈しているだけでしょう。

 なぜなら、該当の作業員が被爆した線量は「原発事故前の方が多量」である上、労災認定には「被爆との因果関係を証明することが不要」だからです。こうした事実を無視して作成された “個人の報告書” を絶対視する必要はないと言えるはずです。

 

“自主避難” を正当化させたい活動家界隈などにとっては「渡りに船」の提言

 国連人権理事会の提言を喜んでいるのは「自主避難を正当化させたい活動家界隈」でしょう。なぜなら、「福島は人が住むことができない土地」との風評が強まるほど、自分たちはプラスを得るからです。

 “自主避難” を選択した人々は『生活費』を行政から得ることができます。また、「放射能に汚染された土地で人々に危険を訴える人道的活動をする人」という形で自尊心を満たすことも可能になります。

 そうした人々にとって、知見を持たない外国人が有名な肩書きを使って「1mSV 以下でなければ、生活できない」と主張することは非常に都合の良いことです。なぜなら、情報の訂正がほぼ不可能だからです。メディアが風評報道で収益を得ているのですから、誤りが訂正されることは絶望的と言えるでしょう。

 人権理事会の特別報告者がやっていることは「NGO や NPO が “述べて欲しい” と考えている主張を代弁している」だけです。

 彼らは「無報酬」であることを誇らしげに述べていますが、まともな調査・研究をするにはコストが必要です。そのコストを使っていないにも関わらず、特別報告者の手元には『情報』があるのですから、その情報は “誰か” の意向が入った内容になっているとの疑いを持つ必要があると言えるでしょう。

 

国連は「原発事故による被爆を原因とするガンの発生率増加は考えられない」と表明済

 マスコミは “国連人権理事会の特別報告者個人” を「国連」として用いた報道をしていますが、そうした名称の混同を許すことは報道機関として論外です。

 なぜなら、『国連放射線影響科学委員会(= UNSCEAR)』が「原発事故による被爆を原因とするガンの発生率増加は考えられない」と2016年11月の時点で表明しているからです。

 国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)のマルコム・クリック事務局長は17日、会津若松市の會津稽古堂で東京電力福島第一原発事故の被ばく影響に関する追跡調査の結果を学校、医療、行政の関係者に説明した。クリック氏は「原発事故による被ばくを原因とするがんの発生率の明らかな増加は考えられない」との見解を改めて示した。

 「国連人権理事会の特別報告者による見解」に異を唱えているのは日本政府だけではないのです。『国連放射線影響科学委員会』も日本政府と同様の立場なのですから、マスコミはこのことを正確に報じなければなりません。

 「国連人権理事会の特別報告者だけが科学的根拠に基づかず、1mSv という荒唐無稽な数値を出して不安を煽っている」と伝えるべきものなのです。そもそも、取り上げる必要すらない話題だと言えるでしょう。

 

 批判の根拠を提示できないから、活動家の性質が色濃くなった NGO や NPO が “御用報告者” を起用し、『国連』などの権威を使うなどの手法で我田引水を企んでいるに過ぎないのです。それに乗っかるマスコミも同罪だと言えるのではないでしょうか。