沖縄・名護市長選、市政を蔑ろにし続けてきた現職候補が敗れたのは民主主義が機能している証拠

 2月4日に投開票が行われた沖縄県・名護市長選挙で現職が敗れたと NHK などが報じています。

 地方自治体の首長選挙は国政と比較すると争点が小さいため、現職が圧倒的に優位です。現職が敗れたこと自体が波乱なのですが、名護市長選の場合は「現職の自滅」が大きな原因と言えるでしょう。

 

 沖縄県名護市の市長選挙は4日に投票が行われ、自民・公明両党などが推薦し、地域経済の活性化を前面に掲げた新人の渡具知武豊氏が、アメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設阻止を訴えた現職を破って、初めての当選を果たしました。

 

 新人の渡具知氏が現職の稲嶺氏に3000票の差をつけて当選した訳ですから、オール沖縄陣営にとっては大きなショックになったと言えるでしょう。

 現職が選挙で敗れた場合、その多くは現職が首長として成果を残せていないケースがほとんどです。名護市で現職が敗れた理由は稲嶺氏が市政を蔑ろにしてきたことが大きいと考えられます。

 

1:「辺野古への移設阻止」を掲げ続けた8年間

 稲嶺氏の市政評価は「辺野古への移設阻止を掲げ続けたこと」と言えるでしょう。しかし、地域経済の発展や社会保障の充実という市政レベルで要求されることが軽視されていました。

  • 辺野古への移設阻止 → 辺野古周辺の住民は賛成
  • 地域経済の発展 → パンダを呼びます
  • 社会保障の充実 → 基地助成金は受け取りません

 ゴミ分別や下水道の整備、崖くずれ防止の予防工事など住民からの要望を軽視するような市政をしていれば有権者からの支持を失って当然です。在日米軍基地に関する補助金を受け取らないなら、それに代わる収入源を確保し、社会保障などを通して地域住民に還元しなければならないのです。

 稲嶺氏は「辺野古への移設阻止」というイデオロギーを掲げ、その代償を “名護市民の生活水準” という形で支払っていたのです。これが選挙で NO を突きつけられたことが敗れた最大の原因と言えるでしょう。

 

2:在日米軍基地が身近でない那覇周辺のロジックを名護に転用したことが失敗の要因

 基地反対派の支援を受けた稲嶺氏の主張は有権者に届きませんでした。これは “那覇市では通用するロジック” を転用したことが理由と言えるでしょう。

 在日米軍基地は沖縄本島北部に多く存在しています。施設数は少ないのですが、面積が大きいため、これが沖縄県に占める割合を高くしているのです。

 沖縄の県庁所在地である那覇市は事情が違います。那覇市にある在日米軍基地は港湾基地だけ。また、地域振興予算の使い方を決める権限を持つ県庁の “お膝元” である上、基地移転問題の当事者ではないという立場にあります。

 「現状維持で行政的・経済的に困ることのない那覇周辺の住民」と「名護市の住民」は生活に対するプライオリティーが異なって当然です。前者は米軍基地がなくても、経済的に成り立つでしょう。しかし、後者はそうは行かないのです。

 「在日米軍基地がなくても、雇用は確保された上、行政サービスの質も維持される」ということを実証しなければ、翁長・沖縄県知事や稲嶺・前名護市長が訴える理想は “絵に描いた餅” になると有権者が懸念を表明したことが今回の市長選で明らかになったと言えるでしょう。

 

3:市長が市政を軽視し、国政に文句を付け続けた結果

 稲嶺氏が「50年先の安全、安心を訴えたが、目の前の経済を優先する形となってしまった」と語ったことを日経新聞が報じていますが、この発言にすべてが集約されていると言えるでしょう。

 50年先の安全・安心を訴えるのであれば、基地関連での補助金は全額返上すべきです。「基地は反対するが、補助金は必要」との姿勢を訴えるオール沖縄(≒ 翁長県知事)の方針が欺瞞という形で嫌悪されていることも足を引っ張っているのです。

 また、基地反対派の違法行為が野放しとなっていることがネット経由で明らかになっています。画像・映像による証拠付きで拡散している訳ですから、沖縄のイメージは悪化し、法律が適正に運用されない地域への投資は敬遠されるという悪循環を招くことになるのです。

 市がやるべき経済や社会保障を無視し、国政レベルでのイデオロギーを優先させれば、多くの働き盛り世代はそっぽを向くでしょう。この現実を見据えることが沖縄には必要と言えるのではないでしょうか。