MLS は「投資家にとっては極めて魅力的」だが、競争力が高まるかは「選手にとって魅力的であるか」次第

 Yahoo! が「世界の投資家が集まるMLSの魅力」と題する footballista の記事を掲載しています。

 投資家目線で見れば、MLS が魅力的であることは間違いありません。しかし、選手目線ではそうとは言い切れないのです。このジレンマを解決しない限り、アメリカのサッカーが世界をリードすることにはならないでしょう。

 

1:MLS の特徴

 MLS (メジャー・リーグ・サッカー)の運営手法には以下のような特徴があります。

  • 昇格・降格なしのクローズドな独立リーグ
  • サッカー協会とは独立したプロリーグ団体による中央集権的な運営とフランチャイズ制の採用
  • ドラフト制やサラリーキャップなどによる機会均等・競争促進的なシステム

 プロスポーツチームにとって最大の負担は「選手の年俸」です。これが MLS ではサラリーキャップ制で制限がかけられている状況なのです。

 チームオーナーにメリットが大きいため、魅力的に報じる記事が出たと言えるでしょう。

 

2:MLS で適用されているサラリーキャップ制度

 MLS ではサラリーキャップ制度が適用されています。

 2017年は384万5000ドル(約4億円)。これがチーム総年俸に対する上限です。ただ、『特別指定選手制度』があり、各チームは最大3名までは「サラリーキャップ用の年俸約48万ドルで、実年俸は無制限」で契約をすることが可能です。

 したがって、20名前後の選手とは約300万ドルの予算で契約しなければならないのです。1選手あたり約1500万円ですから、選手が金銭面で魅力を感じるとは言えないでしょう。

 “どんぐりの背比べ” の状況に加え、FA になるには8年が必要です。高給が期待できる『特別指定選手制度』は有名外国人選手に占められており、リーグとして成長するにはサラリーキャップの制限を緩和することが不可欠であり、どのタイミングで舵を切るかが注目点です。

 

3:メキシコリーグを上回ることが現実的な目標

 MLS の現実的な目標は「(平均年俸約5000万円の)メキシコリーグをプレーで上回ること」になります。

 アメリカは CONCACAF (北中米カリブ)に属し、クラブチームは CONCACAF チャンピオンズリーグでメキシコ勢との対戦します。ただ、クラブW杯の出場権はメキシコ勢が確保し続けていることが現状です。この状況を変えることができた時が1つのターニングポイントと言えるでしょう。

 MLS はそこまで達していません。チャレンジャーの立場が現在地なのです。

 サッカーは「ピッチ上で見せる選手のプレー」に価値があり、低い年俸を受け取っている選手が高いクオリティーのプレーを見せ続けることは非現実的です。また、ステップアップの道も閉ざされている現在の競技環境も魅力には映らないと考えられます。

 

 年俸総額が低く抑えられたサラリーキャップ制度が導入されたスポーツに投資家が魅力を感じることは当然のこと。ただ、選手は魅力を感じない訳ですから、このジレンマを解決できない限り、投資家やオーナーだけが「世界一」と自慢する “痛いリーグ” になってしまうということを認識する必要があると言えるのではないでしょうか。