財務次官のセクハラ疑惑問題:“本人が否定する中で推定有罪に基づく手続きで処分を科した財務省” を批判しない人権派に居場所はない
財務省が「次官によるテレビ朝日の女性記者に対するセクハラがあった」と認定したと NHK が報じています。
結論を下すのは財務省ですが、結論を下すに至ったプロセスは問題視しなければならないでしょう。なぜなら、「セクハラがあった」という判断する手順において、次官に対する人権侵害が行われていたからです。
財務省は、被害を受けたと主張しているテレビ朝日の女性社員と、今月4日の夜に飲食したことを福田前次官が認めていること、また、テレビ朝日の主張を覆すだけの反論や反証が福田前次官から示されていないことから、福田前次官によるテレビ朝日の女性社員へのセクハラ行為があったと判断しました。
そして、官僚トップとして行政への信頼を失墜させた責任は重いとして、減給20%、6か月の処分とする方針を固めました。減給に相当する金額は、支払いを留保している退職金から差し引かれることになります。
処分の根拠は「テレビ朝日の主張を覆すだけの反論・反証が示されなかった」としています。
次官は「(録音されたデータの)全体を聞いてもらえれば分かる」と主張していましたが、財務省は “編集されていないオリジナルの録音データ” を確認したのでしょうか。結論に至るプロセスにかなり問題のある判断と言わざるを得ません。
財務省は「録音の内容」をどのように確認したのか?
セクハラ疑惑にどのような『結論』を下すのかは財務省の裁量次第です。そのことについては誰も異を唱えないでしょう。
しかし、今回は『結論』に至るプロセスに問題がある状態なのです。明らかな人権侵害が起きている状況なのですから、人権派は「財務省がセクハラ認定に至ったプロセス」を批判しなければなりません。
その理由は『推定有罪』に基づく処分を決定しているからです。
テレビ朝日は「編集された録音データを根拠に、セクハラ行為があったと思っている」と主張しているのです。次官は「全体を聞いてもらえれば分かる」と主張し、セクハラを否定しており、事実確認が必須と言えるでしょう。
事実確認には「録音データの内容を確認することが不可欠」ですが、そうした行動を起こしたとは述べていません。「どういう文脈で出たか」の確認すら行わず、「有効な反論がない」という理由で処分を下すことなど “あってはならないこと” なのです。
人権派が批判しなければならないのは「財務省のセクハラ認定に対するプロセス」
人権派やリベラルを自称する人々・組織が批判しなければならないのは「財務省のセクハラ認定に対するプロセス」です。
『結論』に関係なく、『プロセス』に問題があるのです。「被害を訴える根拠の信憑性」の確認を怠り、被害を認定するような『プロセス』が採用されると冤罪が生じることは火を見るよりも明らかです。
“火消し” のための「幕引き」を優先し、被害者のいい加減な主張に忖度したことで慰安婦問題が尾を引く結果になったことを忘れてはならないことなのです。
ですが、財務省への批判は「次官に厳罰を下せ」という活動家の声が多数を占めることでしょう。このような人権侵害を平気で野放しにしている訳ですから、“人権派” という肩書きが世間で信用されなくなる原因なのです。
当事者の見解が分かれている際の判断は『結論』よりも『プロセス』が重要
財務次官のセクハラ疑惑問題では当事者の見解が分かれていました。一方が事実を否定していたからです。その際、重要になるのは「結論を導き出すためのプロセスが適切であったか」です。
今回の件で、財務省は「テレビ朝日が主張する根拠となるデータを確認し、また当該職員(=財務次官)の反論内容も精査した結果、セクハラ行為に該当すると判断した。よって、人事院規則に基づき、以下の処分を下すものとする」と発表しなければならなかったのです。
要するに、財務省は “ザ・お役所仕事” が求められていたのです。「当事者が事実を認めていないにもかかわらず、役所が謝罪する」という行為こそ、当事者に対する人権侵害であり、批判されるべき対象と言えるのではないでしょうか。