NTTドコモ、政府からの要望を受け入れる形で「通信料金の値下げ」を踏まえたプランの開始を発表する

 NHK によりますと、NTT ドコモが「携帯電話の通信料金を 2〜4 割値下げする料金プラン」を来年度から始めると発表したとのことです。

 これは菅義偉・官房長官が要望していたことであり、政府の要請を NTT ドコモが飲む形になったと言えるでしょう。ただ、「長期利用者」へのメリットはほとんどないプランであると思われるだけに “抜本的な改革” と呼べる代物ではなさそうです。

 

 「NTTドコモ」は、携帯電話の通信料金を2割から4割値下げする新たな料金プランを発表しました。このプランでは端末の購入代金の割り引きは縮小するとしていて、ユーザーにとっては全体の負担がどこまで軽くなるかが注目されます。

 発表によりますとドコモは、端末の購入代金と通信料金をセットにした今の料金プランを見直し、毎月の通信料金と端末の購入代金を分離する新しい料金プランを来年度から始めると発表しました。

 ドコモは、このうち通信料金については2割から4割の値下げになるとしています。

 

“電波社会主義” の恩恵を受けて来た大手携帯各社が「政府の要望」を拒否することは不可能

 まず、大手携帯通信会社3社(ドコモ、au、ソフトバンク)は軒並み高収益を記録していますが、これはビジネスに不可欠な「電波」を総務省が “社会主義的” に割り当てていることが理由です。

 つまり、市場に斬新なアイデアを実行する競争相手が存在しないため、各社の料金プランが高止まりしているのです。

 そのため、世界中で生活必需品となった携帯電話を使おうとすると、“割高な料金プラン” を契約せざるを得ない状況となっており、「庶民の味方」として実績を残したい政治家に目をつけられる原因になってしまいました。

 もちろん、「民間企業の経営に政府は口出しするな」と主張することは可能です。ただし、それは「電波オークションで自分たちがビジネスで利用する電波帯を獲得していること」が大前提です。

 格安の利用料で総務省(≒ 政府)から割り当てられた電波帯を使っている現状では不満を述べることは難しいと言えるでしょう。

 

大手携帯通信会社1社が値下げをすると、他社は追従せざるを得ない

 収益を上げることが必須である私企業が「自らの利益を減らす経営方針」を進めることはありません。なぜなら、会社経営そのものが立ち行かなくなってしまうからです。

 携帯通信会社の場合は『他社から乗り換え顧客』を狙っていますが、その際に提示されるのは「乗り換えを決断した際のインセンティブ」であり、「通信料金の値引き」ではありません。これは「通信料金の値引き」が企業の収益を悪化させる大きな要因だからです。

 ところが、どこか1社が「通信料金の値引き」を発表すると、顧客が流出する事態が発生します。

 これは顧客流出が発生すると企業収益が悪化してしまうため、他社も値下げに追従せざるを得ないからです。ただ、「値下げ合戦」を誘発するような値下げは起きることは皆無に近く、“電波社会主義” の弊害が出ていると言って問題ないでしょう。

 

「長期利用者が報われる携帯料金プラン」を提示する携帯通信会社があっても良いはずだ

 携帯各社は「端末代を通信料金に上乗せ」することを基本にし、乗り換えユーザーには「端末代を実質的に割り引く」という料金プランを提示することで顧客獲得合戦を続けて来ました。

 そのため、携帯会社を頻繁に乗り換える “浮気者” が最も得をする形になり、忠誠心の高い長期利用者は全く報われないという事態が起きているのです。各社横並びの料金プランではなく、長期利用者が報われるプランを提供する大手携帯会社があっても良いと言えるでしょう。

 ただ、独自のサービスを展開するには「電波帯」を自前で確保することが前提です。

 しかし、現状は “電波社会主義” でビジネスに適した帯域はすでに割り当てられているため、新規に獲得することは困難です。また、テレビ局が格安で通信帯域を保持していることも、既得権を化しており、こちらにもメスを入れる必要があると言えるはずです。

 

 通信料金の値下げが起きるような市場環境が整うまでにはまだまだ時間を要することになるでしょう。その状況を作り上げることに行政側がどれだけ協力するのかが注目点と言えるのではないでしょうか。