システム刷新の予算を削り続ければ、小手先の改修で無理が生じるのは当たり前 厚労省の統計調査問題は “氷山の一角” だ

 安倍政権を批判できる『厚労省での統計調査問題』が発覚したことを受け、野党やマスコミが色めき立っています。

 NHK は「通常国会での焦点の1つになりそう」と報じていますが、他の案件はすべて棚上げしてメインテーマに据えて政権批判を展開することでしょう。しかし、システム言語として用いられていた COBOL (コボル)のバグが原因なのです。

 同様の問題は他の官公庁でも抱えていると考えられるのですが、根本的な対策を講じることが政治家としての役割だと言えるでしょう。

 

 厚生労働省の統計調査の問題をめぐって、24日に行われた国会の閉会中審査では、与野党双方から批判が相次ぎました。厚生労働省は再発防止を徹底するとともに、組織の立て直しを急ぐことで理解を得たい考えですが、政府のほかの統計でもミスが見つかったことから、来週召集される通常国会でも、引き続き統計をめぐる問題が焦点の1つになる見通しです。

 間違いなく、野党は統計調査問題を「最重要の争点」に位置付けて国会で騒ぐことでしょう。なぜなら、野党が熱心な支持者に向けてアピールできる “唯一の争点” だからです。

 そのため、「民主党政権時でも起きていた問題であること」や「問題が発生した原因の特定および解決策の模索」という本質的な議論は避け、政権批判ばかりを繰り広げる茶番劇が展開されることになるでしょう。

 

“長期的な役人の不正” の責任を現役閣僚が問われることは理不尽

 まず、統計調査問題で現役閣僚の責任が問われることは「理不尽」です。なぜなら、現役閣僚が不正を命じたのではないからです。

 「問題が発覚した時に閣僚だった政治家の責任」とされるなら、不正や問題は隠蔽し続けた方が得になります。“実際に不正をした人物” や “隠蔽や見て見ぬふりをした人物” の責任は問われず、たまたま現役閣僚の立場にある人物がスケープゴート(= 生贄)にされるのです。

 統計調査問題で責任を追求されるべきは「不正をした人物」や「問題の隠蔽や見て見ぬ振りをした人物」です。

 根本厚労相を批判するなら、歴代の厚労相も同じ立場で批判されなければなりません。「現役閣僚だから」との理由で根本厚労相にすべての責任を押し付けようとする姿勢自体が論外と言わざるを得ないのです。

 

COBOL で書かれた役所のシステムは “爆薬庫”

 COBOL は昔から存在するプログラミング言語で、それほど難易度の高い言語ではありません。ただ、プログラムの量が膨大となる上、継ぎ接ぎをされると “超難解なパズル” と化し、手を付けることが困難になるという問題があります。

 この問題は実際に京都市で起きています。

 京都市は2017年10月11日、NEC製メインフレームで稼働している基幹業務システムの刷新プロジェクトについて、バッチ処理プログラムの移行業務を委託していたシステムズ(東京・品川)との業務委託契約を解除したと発表した。

 (中略)

 京都市は2014年から81億円を投じて、国民健康保険や介護保険といった福祉系のほか、徴税、住民基本台帳の管理など18業務を担っている基幹系システムの刷新プロジェクトを進めてきた。現行システムは30年前に稼働し、COBOLで構築している。

 京都市では福祉系の刷新プロジェクトが頓挫し、訴訟合戦に突入しています。

 システム導入によって、役所の仕事が効率化されたことは間違いありません。また、業務上のニーズを受けて、システムが改修され続け、仕様書とは異なる形でプログラムで運用されていたはずです。

 つまり、どこに何があるのか分からない “爆薬庫” だから、誰も手を付けられないし、付けたくもないのです。この現実が存在していることを忘れるべきではないと言えるでしょう。

 

「システム刷新のための大型予算を出さない限り、問題は先送りにされるだけ」との認識を国会議員は持つ必要がある

 時代が変化すれば、統計処理の内容も変化させる必要性が生じる場合もあります。そのため、「システムの改修」だけで乗り切るのは年々難しくなるのです。

 『システム全体の仕様書』が改修に応じて更新され続けていれば、システムの “寿命” はかなり長くなるでしょう。しかし、そのような発想が乏しい時期があれば、「改修」ではなく「全面刷新」を余儀なくされることになります。

 ただ、システム刷新には巨額の予算が必要となるのです。システムの構築に「億単位の予算」をかけようとすると、“弱者の味方” を自称する政治家やマスコミが批判の先頭に立ち、「社会保障に回すべき」と声高に叫ぶことが予想されます。

 その結果、予算額が少なくて済む「現行システムの改修」で乗り切ることを迫られ、誰も手を付けられないシステムが出来上がるのです。

 手遅れになる前に「システムの移行」を実施し、限られた官公庁の職員を効率的に使うことが重要です。この認識があれば、安倍政権批判のみを行うという愚行を野党がすることはないでしょう。

 

 氷山の一角であると思われる厚労省の統計調査問題に対し、「他の省庁にも同様の問題が起きる可能性がある」との認識を持ち、問題の芽を摘み取るための対策を模索する国会論戦が行われるのかに注目と言えるのではないでしょうか。