コマツが「収益コストが見合わない」との理由で陸自車両の開発から撤退

 読売新聞によりますと、コマツが自衛隊車両の新規開発からの撤退を表明したとのことです。

 撤退の理由が「開発コストに見合った利益が見込めない」であり、左派系が日頃から主張する「軍需産業でボロ儲け」は事実とは大きく異なることが明らかになった事案と言えるでしょう。

 

 自衛隊の車両の開発・製造を手がけてきた建機大手の小松製作所(東京都)が、自衛隊車両の新規開発事業を今後は行わない意向を防衛省に伝えていたことがわかった。開発コストに見合う利益が見込めず、開発・製造態勢の維持が難しくなったのが理由という。

 (中略)

 多額の費用をかけて開発しても、装備品の納入先は同省に限られるため受注の拡大は難しい。

 販売先が「防衛省」に限定される状況ではジリ貧になるのは目に見えています。なぜなら、国内市場の規模は極めて小さい上、防衛費が “頭打ち” になっているからです。

 開発費を回収できない可能性が高い分野に民間企業が資金を投入し続けることはできません。コマツの決断は当然のものと言えるでしょう。

 

「多額の開発コストが必要で、販売先は細々とした国内市場のみ」が日本の防衛産業の実情

 まず、防衛産業にはどの国においても「多額の開発コスト」が必要になります。これは機材に対する要求項目が一般向け機材よりも多く、それに比例して開発コストが高くなるのです。

 開発コストは販売時に回収されます。販売価格に上乗せされる形になるのですが、一般車両の場合は販売台数が多いため、1台あたりに上乗せされる『開発コスト』は少額で済みます。

 しかし、自衛隊車両の場合は販売数が少ないため、『開発コスト』の上乗せ分を大きくせざるを得ません。ただ、そうすると販売価格が高騰してしまい、追加購入を見送られてしまうという悪循環を招いてしまうのです。

 売れる見込みの少ない分野に多額の開発資金を投入する企業はないでしょう。しかも、売り手側の企業が市場規模を拡大することは不可能なのです。「魅力はない」と見切りを付けることは当然のことなのです。

 

左派は「軍需産業はボロ儲け」と主張するが、現実は「防衛費は頭打ち、製品輸出は不可でジリ貧」

 平和活動に熱心な左派は「軍需産業はボロ儲け」と主張していますが、これがデマであることは明らかでしょう。なぜなら、現にコマツが「開発コストに見合わない」との理由で陸自車両の新規開発から手を引いたからです。

 自衛隊は防衛費から陸自の車両を購入していますが、防衛費は「頭打ち」です。そのため、メーカー側に支払う予算にも上限が存在し、提示額ではメーカー側が採算を取れない状況になっているのです。

 コマツなどのメーカー側が「自衛隊以外にも販売先を確保する」となれば、採算が取れる確率は上昇するでしょう。しかし、国外市場への販売は「兵器の輸出」として左派が常日頃から批判していることであり、実現性は低いと言わざるを得ません。

 開発コストが確実に回収できるなら、「防衛の一端を担っている」との自負で事業を続けてくれる企業も出てくると考えられます。ただ、これも良い状況とは言えません。『他に本業を持つ兼業企業』は残っても、『防衛産業のみの専業企業』の経営が立ち行かなくなる恐れが強いからです。

 「防衛産業に属する企業がしわ寄せを受けることで現状が維持されている」という現実に目を向ける必要があると言えるでしょう。

 

「防衛産業における国内生産力の喪失」と引き換えに「防衛費の増加抑制」と「表面上の平和」を得ているに過ぎない

 コマツの自衛隊車両の開発撤退で議論する必要があるのは「防衛産業の国内生産基盤が弱体化することによって生じる問題」です。要するに、防衛装備品の国内生産能力が失われつつある現状をどうするのかが問われているのです。

 マスコミは「高性能な装備品をより安価に調達することが重要」と主張していますが、これは “買い手” (= 日本政府)に対する要求事項です。

 今、問われているのは “売り手” (= コマツなどのメーカー)です。メーカー側が「買い手の要求内容を満たそうとすると赤字になるから撤退する」と言っているのです。メディアの主張にはズレがあると言わざるを得ないでしょう。

  • 外国製の防衛装備品でカバーすると仮定:
    • +:既製品のため、防衛費の増加を抑制できる
    • ー:販売企業(と当該政府)は防衛装備品の能力を正確に把握
    • ー:輸入先の政府が「販売不可」と言えば、日本の国防が脅かされる

 要するに、現在の日本とアメリカの関係です。日本はアメリカに国防面で大きく依存しているため、アメリカ政府の顔色を常に伺い続ける必要があります。この度合いがさらに進行する要因になり得るのが「コマツの開発撤退」なのです。

 

 「『非武装・中立国』を主張すれば、平和が維持される」と考えているのは左翼の “お花畑” だけでしょう。それが正しいというのであれば、世界中に存在する紛争地で証明できていなければなりません。

 安全地帯から「平和が重要」と主張することは誰にでもできます。現実に目を向けず、自分たちが抱いた先入観に基づくデマを流し続ける活動家は『平和』にとって害悪な存在だと言わざるを得ないのではないでしょうか。