北朝鮮の漁船が水産庁の取締船と衝突して沈没。日本の排他的経済水域での密漁が野放し状態では様々な問題が起き続けるだろう

 NHK によりますと、日本の排他的経済水域(= EEZ)にある大和堆で水産庁の取締船と北朝鮮の漁船が衝突する事故が発生したとのことです。

画像:事件を報じるNHKのニュース

 日本海の大和堆(やまとたい)は好漁場であり、北朝鮮だけでなく韓国の漁船も違法操業に手を染めている海域です。海洋資源の略奪に対して “事を荒立てない対応” を続ける限り、日本の漁業関係者が泣き寝入りを強いられる状況は続くことになるでしょう。

 

 7日午前9時すぎ、日本海の大和堆の周辺水域で水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突しました。

 水産庁・漁業取締課の桑原智課長は記者団に対して「北朝鮮と思われる漁船に対して日本のEEZ=排他的経済水域から退去するよう警告していた際に発生した」と述べました。

 この海域では外国漁船による違法なイカ漁が行われていて水産庁の漁業取締船は外国漁船に対して、違法操業が疑われる場合には海域から退去するよう警告を行っています。

 (中略)

 海上保安庁によりますと、この海域ではことし5月下旬から7日午前8時までに延べ1016隻に対して排他的経済水域から出るよう警告を行い、このうち従わなかった189隻に放水を行ったということです。

 

日本の排他的経済水域で違法操業を行う外国籍漁船に甘い対応をするメリットは何もない

 まず、日本の排他的経済水域(= EEZ)内で操業を行う資格があるのは日本籍の漁船だけです。外国籍漁船が操業を行う場合は日本の許可が必要であり、北朝鮮籍の漁船は操業許可がなければ、不法操業(= 密漁)となります。

 EEZ 内の海洋資源は日本のものですし、外国に資源開発や漁の操業を無許可で行う権利はありません。

 これを野放しにすると “本来は排他的に操業を営む権利を持つ日本の漁業者” が泣き寝入りを強いられることになるのです。厳格な取り締まりが行われるべきであり、外国籍漁船の不法操業が野放しになる現状には批判の声があげる必要があると言えるでしょう。

 

北朝鮮籍漁船による大和堆での違法操業が続いている

 日本海の好漁場である大和堆での外国籍漁船による違法操業は常態化しています。今年6月にも NHK が報じるほどであり、現状の取り締まり方法が有効に機能しているとは言えないでしょう。

 なぜなら、違法操業をしていても退去を命じられるだけでロシアの沿岸警備隊のように拿捕され、船員が拘束されるようなリスクは皆無だからです。

 これでは韓国・北朝鮮籍の漁船による違法操業が常態化することは必然です。韓国は海洋警察庁の船舶が日本の漁船を追い出すように圧力をかけますし、北朝鮮籍船舶は乗組員が武装して恫喝も行う有様です。

 密漁する側が強行姿勢を見せる一方、取り締まり側の日本が “配慮” を示せば不利益を被るのは日本側です。密漁船が自粛する要素は現状では見当たらない訳ですから、取り締まりを行う当局者に「必要となる装備や予算」を与えて万全を期すよう政治に働きかけることが重要と言えるでしょう。

 

北朝鮮による大和堆での密漁は今後も常態化することが予想される

 北朝鮮籍の漁船による日本海での密漁はさらに深刻化することでしょう。なぜなら、北朝鮮に残された数少ない外貨獲得手段であるからです。

 北朝鮮は非核化を巡る米朝実務者会談で『瀬戸際外交』を展開していますが、なぜか「期限は年末だ」と一方的に決め付けています。

 これは2017年12月に採択された国連安保理決議第2397号「北朝鮮籍海外労働者の24か月以内の送還」が適用されたからでしょう。つまり、2019年12月までに国連加盟国は北朝鮮籍労働者を送還しなければならない義務を負っているのです。

 また、今年3月(= 採択から15ヶ月後)の時点で「当該12ヶ月の間に送還された北朝鮮国民に関する中間報告」を義務づけられており、サボタージュができない状況にあります。

 この結果、「北朝鮮籍労働者が海外で稼いだ賃金を北朝鮮政府が巻き上げる」という有力な外貨獲得手段が潰えることは時間の問題となっており、別の外貨獲得手段である「日本海での密漁海産物を北朝鮮国外に売りさばく」という方針にシフトすることが予想できます。

 北朝鮮などの狼藉に理解を示す理由は皆無であるため、抗議だけでなく、日本の資源を守るために必要な予算を計上する必要があると言えるでしょう。

 

 密漁という違法操業を行う船舶が属する諸外国の取り締まり当局に対し、メディアが正論による苦言を呈することができるかも注目点であると言えるのではないでしょうか。