光熱費7万円増も人件費は4000万円の減少、冷房利用時の室内温度を25度に設定する価値があることを姫路市が実証する

 兵庫県西部にある姫路市が今年の7月と8月に冷房使用時の室内温度を25度に設定したところ、残業時間が約 15% 減少し、人件費が大幅に削減されたと神戸新聞が伝えています。

 費用対効果を考えると、「冷房使用時の室内温度」に着目する価値はあるでしょう。「室温28度」は見直されるべき言えるはずです。

 

 兵庫県姫路市は7日、市役所本庁舎で冷房時の室内温度を25度に設定した7~8月、総残業時間が14・3%減少したと発表した。清元秀泰市長が定例会見で明らかにした。職員アンケートでも85%が「業務効率が向上した」と回答。働き方改革への効果があったとして来夏も実証実験を続けるという。

 (中略)

 光熱費は前年から約7万円増えたが、残業時間減少で人件費は約4千万円削減された。清元市長は「経済効率が高いことも裏付けられた」とする。温室効果ガスの排出量も微増にとどまったという。

 

「冷房:28度」は根拠もなく決定された数値

 省エネを念頭にした「クールビズ」が夏場に行われていますが、冷房使用時の室温は「28度」が目安とされており、これが定着しています。

 冷房使用時の室温を渋滞よりも高い28度に設定することで電気の使用量を抑えられます。電力消費量が減れば、火力発電による温室効果ガス排出量も減少するため、温暖化防止に繋がります。

 だから、環境省が「室温28度」を推奨したのでしょう。

 しかし、この数値は労働安全衛生法で定められた上限値です。それによって肝心の業務効率が落ちてしまっては本末転倒と言わざるを得ないでしょう。

 

7万円分の電気代と引き換えに「4000万円の追加残業代」を許容できるのか

 温暖化問題は「地味な経済問題」と言える理由の1つが姫路市の事例と言えるでしょう。

 「7万円分の電気代(で排出される温室効果ガス)」を削減できることと引き換えに「4000万円の追加残業代」が必要となるのです。姫路市などの行政機関は税金で運用されており、費用対効果を考える必要があることは明らかです。

 行政の作業効率が悪化することで納税者である住民が恩恵を受けることはありません。不利益を被るだけであり、それを許容してまで『クールビズ』を継続する意味や価値があるかを冷静に考える必要があると言えるでしょう。

 勤務する職員が「作業効率が改善した」と “実感” しているのですから、この事実は重く受け止める必要があると言えるはずです。

 

「一般家庭10世帯弱の電気代」と「4000万円の追加人件費」が釣り合うかを考える必要がある

 姫路市が冷房使用時の室温を25度に設定したことで必要となった追加コストは約7万円です。これは「一般家庭10世帯弱の電気代(月額)」に相当します。

 それと引き換えになるのが「4000万円の人件費」ですから、クールビズの推進力は大いに失われたと言えるでしょう。

 室温を28度に設定すると、そこで働く人は “やせ我慢” を強いられます。しかも、作業効率がダウンするのですから、クールビズを積極推進する根拠を見つけることは困難です。

 経済性を無視して温室効果ガス削減に取り組むことができるのは「生活に余裕があるセレブ」ぐらいです。また、それに同調することで知名度を得たい活動家が世間を煽ることに奔走するはずです。

 しかし、その代償は一般世帯に「余計な支出」という形で跳ね返って来ることが現状なのですから、温暖化問題が経済問題であることを忘れるべきではありません。費用対効果の視点は極めて重要と言えるのではないでしょうか。