徳井義実氏の長年に渡る税務申告漏れが発覚、吉本興業のコンプライアンスがまたも問われる事態に

 吉本興業に所属する徳井義実氏に税務申告漏れが発覚しました。当初は「税務署との認識の違いによる申告漏れ」との立場だったのですが、「各年の期日までに申告すらしていなかった」との事実が明らかになりました。

 悪質度が極めて高いため、脱税容疑で逮捕されていなかったとしても不思議ではないと言えるでしょう。また、吉本興業も所属芸人に対するコンプライアンスを見直す必要が生じたと言えるはずです。

 

吉本興業が発表した徳井義実氏の税務申告状況

 吉本興業は公式サイト上で徳井氏の税務申告状況を発表しています。それによる経緯は下表のとおりです。

2009年
  • 徳井義実氏が個人会社『チューリップ』を設立
  • タレント報酬を個人会社に入れ、徳井氏は役員報酬を受け取る形態
2010年3月期
〜 2012年3月期
  • 各年の申告期限は守られず
  • 税務署からの指摘で2012年6月25日に申告
  • 衣装代、旅行代の一部が否認される
  • 社会保険の加入手続きをせず
2013年3月期
〜 2015年3月期
  • 各年の申告期限は守られず
  • 税務署からの指摘で2015年7月23日に申告
  • 申告はしたが納付をせず、2016年5月頃に銀行口座が差し押さえられる
2016年3月期
〜 2018年3月期
  • 各年の申告期限は守られず
  • 2018年9月頃に国税庁からの税務調査で「無申告のため申告するように」との指摘を受ける

 この内容を擁護することは不可能です。

 テレビに出演する芸能人やモデルは「衣装」が商売道具の1つであるため、経費として認められるべきでしょう。また、旅行についても芸人は「ネタ」に利用できる場合もあるため、経費と認定される可能性はゼロではありません。

 したがって、これらの部分で税務署から「申告漏れ」を指摘されただけであれば、「芸能人として活動するに必要な経費」との理由で争うことはできたと思われます。しかし、個人会社を設立してから納税する意識が皆無と言わざるを得ない状況では厳しい批判は免れないでしょう。

 徳井氏の行為は怠惰では済まされないほどの悪質なものだからです。

 

所属芸能人が個人会社を設立するにしても、芸能事務所は「法令遵守」を何度も言い続ける必要がある

 芸能人がどのような形態で納税するかは本人の自由です。「個人事業主」でも「会社」でも適切な形で納税されていれば問題ではないからです。

 ただ、日本では芸能事務所が所属タレントを “管理” しているため、タレントや芸人に対して「法令遵守」の重要性を理解させる責務があります。

 「スケジュールの管理」や「オファー受付の窓口」の業務を請け負っているだけなら、所属芸能人に教育を施す必要はないでしょう。しかし、芸能人が『商品』という扱いである以上、コンプライアンス関連の責任は芸能事務所が負わなければならないものなのです。

 徳井氏の件でも「個人会社の設立」を認めたのであれば、「税務申告は期日までに行うように」と念押ししておく必要がありました。こうしたリスク管理を軽視していたことが今回の騒動につながったと言えるでしょう。

 

同様の状況にある所属芸人がいても不思議ではないし、そのような状況になる芸人が将来的に現れる可能性もある

 吉本興業にとって痛手なのは「反社会勢力との関わり」が発覚し、コンプライアンス遵守の姿勢を示していた中で『長期間に渡る脱税問題』が発覚したことでしょう。これにより、会社として納税という義務の部分すら軽視していた実態が表面化したからです。

 徳井氏ほどではないにせよ、税務申告を怠っている所属芸人がいる可能性はゼロではありません。人気芸人には「期日までに申告が完了した証明を出せ」とチェックを入れるべきですし、同様の事例が再発しないように啓蒙活動もしなければなりません。

 それが『日本型の芸能事務所』を経営する吉本興業の責務だからです。

 個人会社を持っている所属芸人については「担当する税理士に資料を丸投げして申告を依頼する」という方式も採れるため、「忙しくてできませんでした」という弁解は通用しないとの認識を持たせることが重要になります。

 ネット時代にはコンテンツを欲する既存マスコミと結託するだけでは不十分です。したがって、一般企業と同等の法令遵守意識を所属芸能人にも徹底づける必要があると言えるのではないでしょうか。