売上高減少に見舞われているルノー、日産との関係強化を急ぐ方針を強める

 NHK によりますと、フランスの自動車メーカーであるルノーが発表した2019年7月から9月までの3ヶ月決算が前年同期比 -1.6% を記録したとのことです。

 ルノーの主力市場であるヨーロッパや中国での景気失速に加え、株式を保有する日産の収益性が悪化していることが大きな要因となっています。ルノーには経営統合によるスケールメリットを活かしたい思惑があるだけに今後の展開が注目されるべき点と言えるでしょう。

 

 ルノーが25日に発表した先月までの3か月間の決算は、売り上げが112億9000万ユーロ、日本円で1兆3000億円余りとなり、去年の同じ時期を1.6%下回りました。

 これは景気が減速するヨーロッパや中国などの市場で販売が落ち込んだことに加え、ルノーが日産向けに供給する車の生産が減ったことなどによるものです。

 さらにことし1年間の売り上げについてルノーは、去年に比べて3%から4%減少するという見通しを示しました。

 

ルノーは “主力の市場があまり重複しない日産” が持つ旨味を最大限利用したい

 ルノーと日産による「アライアンス(= 企業連合)」は上手く機能している方だと言えるでしょう。なぜなら、両社の主力市場がそれほど重複していなかったからです。

 ルノーはヨーロッパ市場が中心であり、日産は日本市場です。そのため、潰し合いによる消耗を互いに回避することができ、堅調な伸びを確保し続けてきたという背景がありました。

 ところが、市場の情勢に変化が生じたことでアライアンスの不具合が浮き彫りとなってしまったのです。

 1つは「(株式を持たれている側の)日産が好調だったこと」です。これにより、企業活動に足かせをかけられた日産側の不満が蓄積し、アライアンス内に火種が生じる原因となりました。

 もう1つは「有望市場が重複したこと」です。自動車メーカーにとって重要な市場はアメリカと中国の2つです。両国ともに販売数が多い国であり、どの自動車メーカーもシェア確保に躍起になっています。ルノーと日産も例外ではなく、ここで “潰し合い” が発生する要因となってしまったのです。

 

「アライアンス」は両社にメリットがあるが、「経営統合」はルノーにしかメリットがない

 ルノーとしては「経営統合」を強く要求することでしょう。新会社の主導権を持つことができる上、規模のメリットを最大限活かすことが可能と考えられるからです。

 また、『日産が持つ電気自動車のノウハウ』をルノーが使えるという利点もあります。中国政府が電気自動車の普及に力を入れているため、中国市場の攻略に電気自動車は欠かせないという事情があり、日産に距離を取られると困るのです。

 だから、企業提携であるアライアンスにルノーは消極的なのです。

 一方の日産は「アライアンスで十分」という立場です。これは車両に利用する鋼材などはルノーとの共同購入で「買い手優位」を発揮したいからです。

 しかし、企業統合では「ルノーから購入」という形などで負担を押し付けられるリスクがあります。「日産の車両をルノーの工場で製造する」ことで日産が得られるメリットは極めて例外的なケースだけです。この事情があるから、両社の溝が埋まらないのです。

 

「ルノーの背後にいるフランス政府がどれだけ欲張るか」が今後の注目点

 ルノーと日産はどちらも民間企業ですが、ルノーの筆頭株主はフランス政府です。そのため、フランス政府がルノーの経営方針にどれだけ介入するかが注目点と言えるでしょう。

 費用対効果の低いフランス国内で自動車を製造するメリットは “民間企業” であるルノーにはありません。

 しかし、フランス政府は製造拠点を国外に持ち出されると、フランス国内の雇用情勢悪化による影響を受けてしまいます。支持率が落ち込む直接的な経営方針を容認する政権は少数派です。

 「ルノーの決算」と「フランス国内の雇用情勢」がフランス政府にとっては重要なことであり、「日産の決算」や「日産が雇用するフランス国外の従業員」は重要項目ではないのです。フランス政府がどれだけ欲張るかがルノーと日産のアライアンス関係の行く末を決めると言えるのではないでしょうか。