女子フィギュアスケート、2022年・北京オリンピックの金メダル本命にカミラ・ワリエワが躍り出る

 イタリア・トリノで行われている2019年のグランプリ・ファイナルに合わせてジュニア世代のグランプリ・ファイナルも開催され、ロシアのカミラ・ワリエワ(Kamila Valieva)選手が優勝したと日刊スポーツが報じています。

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 ワリエワ選手は2006年4月生まれの13歳ですから、2022年の北京オリンピックへの出場資格を有しています。「北京五輪での金メダル最右翼に躍り出た」と言うことは十分に可能でしょう。

 

 女子は13歳のカミラ・ワリエワ(ロシア)がフリー1位でショートプログラム(SP)4位から逆転し、合計207・47点で初優勝した。ロシア勢は10年連続制覇。

 

2019年に出場したジュニア・グランプリシリーズの全3試合で200点超の安定感

 ワリエワ選手の強みは安定感が備わっていることでしょう。なぜなら、2019-20 シーズンに出場したジュニア・グランプリの3大会で合計得点が200点を超えているからです。

表:カミラ・ワリエワ選手の成績(2019-20 シーズン)
大会名 SP FS 合計
Jr GP・フランス杯 62.31 138.40 200.71
Jr GP・ロシア杯 73.56 148.39 221.95
Jr GP・ファイナル 69.02 138.45 207.47

 今回のグランプリ・ファイナルは SP が 69.02 点の4位で終えましたが、トップのアリサ・リュウ選手(14歳・アメリカ)の得点は 71.19 点でした。ワリエワ選手は FS で2位に5点差を付けて逆転しており、精神的な強さも既に身に付けていると考えられます。

 ですから、2022年に中国・北京で行われる冬季オリンピックの女子フィギュアスケートの本命と言えるのです。

 

女子は「16歳に達する年齢でオリンピックに出場できるか」が大きい

 ワリエワ選手を金メダル本命に推す最大の理由は「16歳になる 2021-22 シーズンにオリンピックを迎えるから」です。

 前回のソチ五輪を制したザキトワ選手もそうだったように、フィギュアスケートの女子選手は肉体的に低年齢の方が得点を出しやすい傾向にあります。これは「ジャンプが高得点の要素になっているから」です。

 「高さ」を競うだけなら、「身長」と「筋肉力」に影響されます。しかし、「回転」が加わると大柄な選手は不利になってしまいます。この傾向は体操競技で顕著に現れていますし、フィギュアスケートでも同様です。

 女性は成長とともに体格や体型が「男性よりも大きく変化する」ため、本格的な変化が現れる前にオリンピックを迎えることができる方が有利になる競技が存在していることは否定しようのない事実なのです。

 アメリカのアリサ・リュウ選手も北京五輪での有力候補ですが、より低い年齢でオリンピック本番を迎えることができるワリエワ選手を本命視することは間違いではないと言えるでしょう。

 

18歳前後にピークを持ってくる日本勢が金メダルを獲得するのは相当の工夫が必要

 低年齢化が進む女子フィギュア界への対応が迫られているのは日本勢でしょう。女子選手の肉体的な理想は「16歳以下(= 少女体型)」という現実があるものの、「技術を習得させる時間が足りない」という問題との “板挟み” になっている状態だからです。

 (学業を無視することになっても)競技だけに注力する「英才教育」を施せば、世界大会で結果を残せる可能性は高くなるでしょう。

 しかし、英才教育を施した子供同士の競争で振るい落とされた側の子供を待ち受ける人生はかなり悲惨になる恐れがあります。スケートだけに特化したものの、未成年の内に「失格」の烙印が押される子供が多数生み出すことになってしまうからです。

 指導者は “キャリアを閉ざされた選手” の残り人生に責任を持つ必要はありません。「自己責任」と言えるのですから、低年齢化の動きに否定はしないはずです。一方で親は子供の人生に対する責任がある訳ですから、歓迎はしないでしょう。

 ロシア勢に歯が立たない現状を打破する必要があるだけに日本の女子フィギュア界がどのような強化策を講じるのかが注目点と言えるのではないでしょうか。