立憲民主・枝野代表が「危険な中東地域に自衛隊を送るかの抜本的な議論が必要」と叫ぶ中、日本行きのタンカー船は今現在も該当海域を航行中

 立憲民主党の枝野代表が1月4日の年始会見で「中東の安定を損なうリスクが非常に高い状況で国会の審議もなく自衛隊を送り出すのか」とコメントしたと朝日新聞が報じています。

 そうした主張があることは理解できますが、枝野代表の発言が問題なのは「今現在も該当海域を日本行きのタンカー船が航行していることを無視している」という点です。冬場に暖房器具を利用するためのエネルギー資源は中東に依存しているのですから、知らぬ存ぜぬは通用しないと言わざるを得ないでしょう。

 

 アメリカによるイラン司令官の殺害は、中東地域における緊張を極度に高めていると非常に危惧している。そもそもこの行為が国際法上正当化出来るのかどうかについて疑問があるし、中東の安定を損なうリスクが非常に高いという意味で、我が国にとっても軽視出来ない状況だ。

 そんな状況の中東地域に、自衛隊を国会の審議もなく調査という目的で送り出す。自衛官の安全を含めて、大変由々しき事態だ。自衛隊のみなさんを行かせて良いのかどうか、国会における抜本的な議論が必要だと思っている。

 

自衛隊が向かう予定の地域では “民間の” タンカー船が脅威に晒されながら運航中

 中東地域が日本と直接的な関係がないなら、『自衛隊の派遣』について国会で議論しても良いでしょう。ただ、「派遣はけしからん」との意見を主張するだけでは時間の無駄ですから、「どう対処すれば日本の国益が最大化するのか」を議論することが前提となります。

 今回の自衛隊派遣はそうした事例とは異なります。

 なぜなら、日本は中東地域に原油や LNG などの石油資源を依存しており、その輸入に支障が生じると日本経済が大きく混乱することになるからです。

 しかも、そうした資源を日本に輸送するためのタンカー船や LNG 運搬船は現在も航行中です。そのような船舶によって運搬された資源によって「日本国内での豊かな生活」を送ることができているのですから、「船員の安全」には全く無頓着なのは無責任と言わざるを得ません。

 枝野代表の発言には根本的な部分で問題があると言えるでしょう。

 

「(主として外国籍が多い)船員の安全」は保証しないのか

 枝野代表や野党が主張する行為が問題なのは「安全面に対するコストをケチっていること」にあります。

 日本国内で生活する人々は老若男女・支持政党に関係なく、『中東地域から輸入されるエネルギー資源』による恩恵を受けています。物流であったり、冬場では暖房器具が代表例と言えるでしょう。

 ただ、要所であるホルムズ海峡などで『航行の自由』が脅かされており、輸入による費用が増加してしまっているのです。“リスクの高い輸送業” が “命がけの輸送業” になりつつあるのですから、消費者が「これまで通りで」との要望しても引き受けてもらえないでしょう。

 だから、消費者側が『安全面に対するコスト』を一部負担することが重要なのです。「自衛隊の中東派遣」はその一環ですし、これに反対するなら代替策の提示が必要不可欠です。

 「国会で抜本的な議論をすべき」と主張するなら、「自衛隊を派遣せずとも、〇〇をすることで『安全な航行』は可能」とタンカー船の運航事業者や船員を納得させなければなりません。実務を行う当事者(の意見や見解)を無視した国会での議論は無意味だからです。

 

「危険な地域を(営利目的で)航行するのは自己責任」と主張すれば、輸送価格は跳ね上がることを自覚すべき

 もちろん、「自衛官の安全が問題」と主張することは可能です。しかし、その主張をしてしまうと、ブーメランになることを念頭に置いておかなければなりません。

 例えば、タンカー船などを用いた中東からの石油資源の輸送価格は暴騰するでしょう。これは運航会社が「危険手当を払ってもらわないと割りに合わない」と主張できる根拠を手にすることになり、“ジャパン・プレミアム料金” が設定されることになるからです。

 「そんな料金を払えるか」と突っ撥ねる選択肢はありますが、そうすると石油関連資源の輸入が途絶えてしまいます。そのため、払わざるを得ない状況に追い込まれるのですから、経済へのマイナス面が大きい結果となるでしょう。

 また、『自衛官の安全』を前面に押し出してしまうと、「二次災害の恐れがある中で災害派遣を強いられるのはおかしい」との批判を浴びることになります。「自衛隊は自衛官を危険にさらす災害派遣要請は断るべき。拒否する姿勢を支持する」と明言できないなら、踏み絵を迫られて窮地に立たされることになるでしょう。

 

 ご都合主義を掲げて労働者に “タダ乗り” するから、負担を増やされた業界から反発を招いて支持が伸び悩むのです。『労働貴族』や『活動家』が支持母体になっているから、多数派である一般労働者の声が聞こえていないのでしょう。これが自民1強の大きな理由と言えるのではないでしょうか。