読売新聞が「1人1台のパソコンに見合う教育効果はあるのか」と社説で疑問視、『教育無償化』や『新聞への軽減税率』も同様に懸念を示すべきだ

 読売新聞が1月26日付の社説で「1人1台PC 投資に見合う教育効果あるか」とのタイトルで、全国の小中学校に1人1台のパソコンが整備される事業を “見切り発車” と批判しています。

 巨額投資であることを批判要素の1つとしていますが、それなら『教育無償化』や『新聞への軽減税率適用』も同様に「本当に必要なのか」との疑問の声を出すべきです。目的意義を問うなら、これらの “事業” にも懸念を示す必要があるでしょう。

 

 デジタル社会の到来で、情報端末を扱う基本技能の習得は大切だ。20年度以降、コンピューターのプログラミング教育が必修化される。家庭の経済状況にかかわらず、子供たちがPCに親しむ機会を確保する意味はあるだろう。

 問題は、配備されるPCを使ってどのような授業をするのかが、見えていないことである。1人に1台が本当に必要なのか。

 (中略)

 PCの使い方次第では、かえって子供たちにマイナスの影響を与えることにならないか。配備されたPCを使うこと自体が目的化すれば、本末転倒である。

 

パソコンを使いこなせないと就業時に出遅れる確率が高くなる

 社会人として就業する場合、デスクワークの多くが IT 化されており、パソコンを使った業務を日常茶飯事的にすることになるでしょう。そのため、パソコンを使いこなすことができていないと出遅れる可能性が否定できません。

 したがって、子供たちがパソコンに触れる機会が準備されていることは悪いことはないはずです。

 デジタル・ネイティブという言葉はありますが、これは「デジタル機器に子供の頃から触れているから、使えることが当たり前(= ネイティブ)」なのです。触れる機会がなければネイティブになりませんし、使い方を知らない場合も同様です。

 パソコンが持つ機能はスマホでも “代用” が可能ですが、パソコンの方が処理能力に秀でていたり、適しているケースがあるのです。

 子供たち全員が高度なプログラミングができる必要はありませんが、基本ツールを上手く活用するための知識と知恵の足がかりを与える意味はあると言えるでしょう。

 

ドリルなどの反復学習はデジタル機器が適しているし、ドリルは読解力を身につけるためのツールではない

 読売新聞の社説で問題なのは「従来の学校教育が変わると学力が落ちる」と不安を煽っていることです。学校教育の形が変わることで学習が効率化し、学力が上がる可能性もあるのです。この部分を無視した主張こそ、批判の対象となるべきでしょう。

 例えば、英語学習で必須となる『辞書』は社説を執筆する編集委員が学生だった頃は「紙の辞書」しか存在しなかったはずです。

 もし、“従来の学校教育” が変わったことで学力の低下が起きるのであれば、今の30代より下の世代は学力低下が深刻になっていることでしょう。なぜなら、その世代が学生だった頃に『電子辞書』が教育現場で一般的に使われるようになったからです。

 ですが、読売新聞が示すような学力低下は起きていないはずです。ドリルなどの反復学習にデジタル機器が適しているのは「任天堂 switch」で脳トレが販売されていることからも明らかです。

 反復学習に主眼を置くドリルと読解力は別物です。また、文章力が不足しているとデタラメな文面となります。そうした文面を正確に読解することは不可能ですし、自らの『書く技術』の低下を棚に上げ、読者の『読む技術』に対して説教を垂れるマスコミの姿勢こそ問題視されるべきと言わざるを得ないでしょう。

 

「公による巨額投資の教育効果」を疑問視するなら、『教育無償化』などを槍玉にあげるべきだ

 しかし、「巨額の公的予算を投じるのだから、教育面での効果が求められるのは当然」との社説の主張は理解できるのです。

 ただ、その主張をするのであれば、『教育無償化』に対する懸念を示している必要があります。なぜなら、『教育無償化』の対象には大学などの高等教育も含まれており、学力的に問題を抱える生徒の学費まで無料にする投資効果が見込めないからです。

 学習を希望する生徒には機会が与えられるべきでしょう。しかし、「選別」を行う必要があるはずです。

 応募者多数なら、高等教育を与えられる最大可能数にまで “制限” を設けなければなりません。また、高等教育を受ける際に前提となる基礎知識や基礎学力を保持していない場合は例え受け入れ可能上限に達していなくても不合格としなければなりません。

 そうしないと「高等教育の履修が完了した」との証明の信用度が低下するからです。“金で買った経歴” の持ち主が就職活動で苦労するように、“政府の金で買い与えられた経歴” の持ち主も苦難の道を歩むことを強いられるでしょう。

 

 軽減税率を適用したことの教育効果が強く疑問視される新聞社が社説で「1人1台の PC を巨額投資で与えることの教育効果はあるのか」と論じること自体が茶番なのです。まずはマスコミ業界がもたらす教育効果をデータに基づく形で提示する必要があると言えるではないでしょうか。