嫌われ者のライプツィヒ、レバークーゼン戦で日本人を警備員が新型コロナを理由に追い出したことでメディアから批判を受ける

 3月1日にドイツ東部のライプツィヒで行われたサッカー・ブンデスリーガのライプツィヒ対レバークーゼン戦で観戦に訪れていた日本人グループが試合開始後すぐに警備員から「新型コロナ感染の疑い」を理由にスタジアムから追い出される事件がありました。

 体温検査などによって退席が促されたのではなく、「アジア人の見た目」しか判断材料がなかったため、人種差別との批判がドイツメディアで起きています。ただ、これは「差別を許さない」という価値観に基づく行動ではなく、「嫌いなライプツィヒを叩ける」という思惑が強いことに留意する必要があります。

 

ドイツでは「大企業系クラブ」や「成金系クラブ」は嫌われている

 まず、ドイツでは「サッカークラブは市民のもの」との価値観が根強く、その対極に位置すると見られている『大企業系クラブ』や『成金系クラブ』は忌み嫌われています。

クラブ名 実質的なオーナー
ホッフェンハイム SAP
レバークーゼン バイエル薬品
ヴォルフスブルグ フォルクスワーゲン
RBライプツィヒ レッドブル

 代表例の上記4クラブでしょう。中でも最も歴史の浅いライプツィヒへの反発は強く、相手チームのウルトラスによる襲撃事件が起きています。

 ライプツィヒやホッフェンハイムは「データ」を上手く活用することで上位に付けています。下部リーグへの降格争いに巻き込まれるチームなら反発は少ないでしょうが、資金力のあるクラブが結果も残すとなれば、嫉妬が増えるのは当然です。

 だから、(ライプツィヒなどは)イメージ戦略を積極的に行っていたのですが、皮肉なことにスタジアム警備員の対応で皮肉な結果になってしまいました。

 

差別反対を掲げる “嫌われ者クラブ” が「人種差別をした」となれば、格好の攻撃材料となる

 ライプツィヒは該当の試合でサポーターが「LOVE PEACE AND RASENBALL」と書かれた横断幕を掲示し、差別反対の姿勢を鮮明にしていました。

画像:ライプツィヒ対レバークーゼン戦で掲げられた差別反対を訴えるバナー

 “RASENBALL” は「芝生・球技」という造語で、略称がレッドブル(Red Bull)と同じ RB になるように作られたものです。レインボーカラーで RB を表示していることからも、「差別反対」の意思表示と取ることができるでしょう。

 しかし、その最中にスタジアム警備員が日本人観戦客を「新型コロナウイルスへの感染疑惑」で強制的に退席させました。

 感染しているかを警備員が医学的に判断することは不可能ですし、判断要素は「見た目」しかありません。そのため、人種差別との指摘がシュピーゲルなどのメディアから発せられたのです。

 『Love Peace and Racism (平和と人種差別を愛する)』と揶揄されるレベルですから、ドイツ・メディア的には「待ってました」と言わんばかりの状況と言えるでしょう。

 

同節ではバイエルンのサポーターがホッフェンハイムのオーナーを誹謗中傷するバナーを掲示

 2月29日と3月1日に行われたブンデスリーガの試合ではバイエルンの(一部)サポーターがホッフェンハイムのオーナーであるディートマー・ホップ氏を「売春婦の息子」と罵倒するバナーを掲示しました。

 バイエルンのサポーターは過去にメスト・エジル選手が所属するアーセナルと対戦した際にも同様の行為をしていますから、ドイツの試合会場で差別行為が発生するのは珍しいことではありません。

 ドイツの盟主として君臨するチームのサポーターが “また” 人種差別をスタジアム内で行ったのですから、厳しい批判を受けることは避けられません。批判の矛先を逸らすためにも「ライプツィヒの落ち度」を積極的に批判するメディアが出ることでしょう。

 差別行為をしたサポーターには入場禁止処分、ライプツィヒの警備員には懲戒処分を下すことが必要となりますが、「人権を守る意識が軽薄なヨーロッパ」の現状では不可能と言わざるを得ません。

 

 今回の件では外務省が「ヨーロッパ(≒ EU 諸国)は人権を守ることを学習すべき」との声明を発表すべきです。日本で死刑が執行されるたびに “注文” を付けてくるのですから、同様に “注文” を付ける必要があるからです。

 抗議を入れなければ、日本国民が謂れ無い差別の被害者になり続けるのです。この認識を外務省も持つ必要があると言えるのではないでしょうか。