日本の『緊急事態宣言』が対応しているのは「経済活動を急遽止めなければならない場合」ではなく「経済活動が停止状態の場合」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「特措法に基づく『緊急事態宣言』が出される動きが本格化している」と各メディアが一斉に伝えています。

 ただ、日本の『緊急事態宣言』では欧米などで実施されている「ロックダウン(= 都市封鎖)を行って経済活動をストップさせること」は不可能です。

 そのような法的根拠も罰則規定もありません。「現状の自粛要請を超えることはできない」という現実を直視する必要があるでしょう。

 

「“何らかの理由” で経済活動の維持に著しい支障が出ている場合」も『緊急事態』である

 『緊急事態』と言うと「経済活動をストップしなければならない状況」をイメージする人が多いでしょう。これは『緊急事態宣言』がメディアに取り上げられるケースは「無差別テロに対する警戒」など、通常の経済活動を縮小する場合に発表されていることが多いからです。

 しかし、「経済活動の維持に著しい支障が出ている場合」も『緊急事態』です。これは自然災害などによるケースが該当すると言えるでしょう。

画像:緊急事態宣言によってできることとできないこと

 日本で『緊急事態』として想定されているのは「感染症が蔓延して経済活動がストップしてしまいそうな場合」です。

 要するに「公共インフラや物流網までも麻痺してしまうと甚大な影響が出る(から、そうならないように生命を維持するために不可欠な業種は営業を続けさせよう)」という前提で法整備がなされています。

 ただ、「それ以外のケース」は想定されていません。住民の外出など個人の権利(= 私権)を制約することは不可能なことです。

 そのため、「諸外国で見られる『緊急事態宣言』と同じことが日本政府もできる」との考えは根本的な誤りであることを認識しなければなりません。

 

新聞社・憲法学者・市民団体・野党などが「行政が “市民への強制力” を持つこと」を拒絶して来た結果

 日本の行政に強制力が欠如している理由は「『先の大戦への反省』を活かして権力が集中する事態を憲法を含む様々な形で徹底的に制限してきたから」です。

 戦勝国は「有事」に活用した法体系が残っています。しかし、日本は『有事に使える法体系』は全否定された挙句、「有事を想定すること」ですら禁忌とされる状況が続きました。

 「 “有事の際に必要となる法律” を制定するための議論をしよう」と呼びかけようものなら、「戦争をするのか」と新聞社・憲法学者・市民団体が批判を展開。行政が「私権を制限することが可能になる強制力」を手にすることを徹底して阻止して来たのです。

 だから、日本政府が個人に対してできることは「自粛」の域を出ることはありません。

 強権が発動されない理由は「法的根拠がない」からで、法的根拠がない理由は「(左派系の)メディア・憲法学者・市民団体が法案成立の阻止に尽力し続けて来た」からです。これまでの活動の成果が出ている訳ですから、左派界隈にとっては「誇るべき点」だと言えるでしょう。

 

有限であるジェダイ(医療従事者や保健所職員)に、バトル・ドロイドを “無限” に送り込めばどうなるかを考えるべき

 新型コロナウイルス問題は現状を端的に表現すると、スターウォーズ・エピソード2(クローンの攻撃)に出てくる「高い戦闘力を持つジェダイが戦闘力の低いバトル・ドロイドの大群に取り囲まれて窮地に陥っている場面」が的確でしょう。

画像:スターウォーズ・エピソード2
  • ジェダイ
    • 医療従事者や保健所職員
    • 高い対処能力を持つが、消耗の激しく限界間近
  • バトル・ドロイド
    • 新型コロナウイルスの感染者
    • 8割以上は自然治癒して『住民』に戻るが、治癒までに一定時間を要する
    • 重症化する者もいる
    • 『住民』の行動内容によって発生数が変動する
    • 自律機能は備わっているが、「とにかくジェダイの所へ行け」と念じる勢力がいる

 ジェダイが全滅することによる弊害は大きすぎるため、これは絶対に回避しなければならない状況です。

 日本政府の現行方針は「バトル・ドロイド化している住民の中から重症者を素早く見つけ出して対処する」というものであり、これは間違いではないでしょう。

 なぜなら、大半は特別な対処をしなくても元に戻りますし、結果的に「死亡者(の絶対数)が最小になるから」です。

 しかし、無責任(で何もしていない)との印象が残ることは否定できません。そのため、「バトル・ドロイドの個体総数を数えろ(= 『PCR 検査』を積極的にやれ)」という主張を叫ぶ者が出てくるのです。

 この要求はナンセンスですし、個体総数を把握するための行動は「バトル・ドロイドをより発生させる行為」となることを見落としていることが致命的と言わざるを得ないでしょう。

 

 日本政府や総理大臣が強権を振るうことができないようにして来た歴史があるのです。「その方向性が正しかった」と証明するためにも「1人1人の行動が問われている」と(特に)左派・リベラル系は主張しなければなりません

 「早く緊急事態宣言をしろ」や「国が決めろ、決断力がない」などの批判を野党や護憲派の識者から出ることは論外です。本性が現れている瞬間でもありますので、誰が何を言っているかは正確に記録しておく必要があると言えるのではないでしょうか。