取材対象者の発言内容を真逆に編集する捏造をしたテレビ局を同じグループの新聞社が「ミス」と擁護するからマスコミ不信が加速する

 朝日新聞が「テレビ局の現場負担が増えたことに加えて視聴者の視線が厳しくなってコロナ報道で訂正が連発している」との記事を掲載しています。

 人間がニュース原稿や映像を作るのですから、ミスは一定の確率で発生します。しかし、コロナ報道で厳しい指摘が出たのは「編集権を持つマスコミによる捏造」なのです。

 この事実を認めて改善策を講じない限り、マスコミ不信は加速する一方だと言わざるを得ないでしょう。

 

 新型コロナウイルスに関する報道を巡り、テレビの情報番組で訂正や謝罪に追われる事態が相次いでいる。なぜミスは続いたのか。

 (中略)

 ドラマやバラエティー番組よりも制作費を安く抑えられ、視聴率も期待できる生放送の情報番組の放送時間が各局で長くなったことも現場の負担増の要因となり、「確認不足などミスが起きやすい状況が生まれている」とみる。

 (中略)

 ある民放キー局の社員は「とくに4月~5月半ばの間はニュース・情報番組の視聴率が上がり、視聴者から寄せられる意見の数が数倍に増えた」と話す。

 

テレビ局が「裏付け確認の必要経費」をケチったことで常態化していた誤報・捏造・歪曲が露見しただけ

 前提として認識しておく必要があるのは「コロナ報道でマスコミが捏造・歪曲などに手を染めたのはではない」ということです。なぜなら、この手の問題報道は以前から行われており、それがコロナ禍で世間に広く知れ渡って問題視されただけだからです。

 ワイドショーに代表される『情報番組』は制作費が格安です。なぜなら、報道部門に入ったニュースを「速報」として流し、番組出演者が「感想」を口にすれば成立するからです。

 また、誤報をしたところで自社のアナウンサーが「お詫び」を読み上げれば、免罪された状況になるという問題点もありました。これは報道被害を受けた側が損害賠償請求を起こしても割に合わないことが要因です。

 そのため、「何を発言・報道してもノーダメージ」という “思い込み” がメディア内で一般化し、「裏付け確認の軽視」や「事前に作成したシナリオに沿った編集」が当たり前になった状態で番組が作られていたのでしょう。

 それがコロナ禍で普段はテレビを見ない人までもが視聴することになり、批判の数が急増する結果になったに過ぎません。マスコミの体質が招いた問題なのですから、自浄作用があることを示す必要があると言えるでしょう。

 

取材対象者の発言を真逆の内容に編集することが「単なるミス」なのか

 ミスとして世間に容認されるのは「全く別の写真や映像を差し込んでしまった場合」などでしょう。

 「続いては巨人・阪神戦です」とアナウンサーが振ったにも関わらず、『DeNA対ヤクルト戦のハイライト映像』が流れた場合がミスです。これは「お詫び」で済むことです。しかし、朝日新聞の記事の中で例として取り上げられている澁谷泰介氏の発言についての問題は全くの別物です。

  • 澁谷泰介氏「今の段階でPCR検査をいたずらに増やそうとするのは得策ではない」
  • テレビ朝日「PCR検査を大至急増やすべきだ!と澁谷氏が述べている」

 テレビ朝日は澁谷泰介氏本人の SNS 投稿が拡散したことで、訂正へと追い込まれました。単なるミスでは「発言者の内容が真逆になること」は起こり得ません。

 これはテレビ朝日が「PCR 検査を即座に増やせ」という主張を事前に持っており、PCR 検査に言及してくれる澁谷医師にそう語らせたかったことが露呈したのです

 テレビ局の姿勢も問題ですが、朝日新聞が報じた「現場の疲弊によるミス」というロジックは BPO がテレビ局を擁護する根拠として流用するでしょう。マスコミに面倒を見てもらっている人々が BPO の委員なのですから、大甘の裁定になるのは当然です。

 この部分にメスが入らない限り、テレビ局は捏造・歪曲をこれまでと同じように続けることでしょう。

 

『テレビ局の主張』を代弁させるコメンテーター制度を止めるのが最初の一歩

 テレビ局(の情報番組)が扇動的な内容になるのは「ギャラを受け取るコメンテーター」がいるからでしょう。『コメンテーター制度』ほど奇妙な形態はありません。

 マスコミは「偏向の恐れがある」との理由で取材対象者には “謝礼” を払うことを拒みます。一方でテレビ局のスタジオにはギャラを受け取ったコメンテーターが「個人の見解」との断りで一方的な主張を展開するのです。

 番組が公平・中立でないことは番組作成を行うテレビ局が認めているも同然なのですから、まずは『テレビ局の主張』に忖度する立場であるコメンテーター制度を止めることから始めるべきでしょう。

 専門家にリモート出演を依頼し、番組ホストが聞き役に回れば済むことです。また、「視聴者からの疑問」は再出演をしてもらった時や “別の専門家” に質問すれば、『質の確保した番組』を作ることは可能です。

 内容を理解することができないなら、『議事録』を『発言録』と勝手に認定して「切り取り報道」による批判を専門家に浴びせて視聴率を稼ぎに走るのでしょう。

 

 捏造や歪曲が伴う放送を行っても、テレビ局は相応の痛手を負わないことが無責任な番組作りが続く温床なのです。「責任の所在」は秘匿されたままですし、「報道被害による賠償金で赤字決算になった」という事件すらありません。

 過剰なほどの保護政策によって無視できないほどの悪影響を及ぼしているのですから、現状を改善するためのメスは入れられるべきと言えるのではないでしょうか。