SBの財務状況は良好とは言えないのだろう

 ニケシュ・アローラ副社長の退任を発表したソフトバンクグループですが、経営の曲がり角に差し掛かっていると言えるでしょう。その根拠は手放したくない株式を売却することでキャッシュを確保する動きを見せているからです。

 

 会社では、およそ3000億円を投じて、スーパーセルの株式を72%余り取得しましたが、今回、そのすべてをおよそ73億ドル(日本円でおよそ7700億円)でテンセントに売却するとしています。

 ソフトバンクグループは、今月に入り、過去に投資した中国のネット通販最大手「アリババグループ」やゲーム会社の「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」の株式の売却も相次いで決めていて、これらを合わせると売却額の総額は1兆8000億円余りに上ります。

 

 『スーパーセル』や『ガンホー』はスマートフォン向けのゲーム市場がバブル状態と見ることができるため、売却のタイミングと言えるでしょう。

 しかし、『アリババ』を手放すことはネガティブなサインと言えます。SBが「投資のため」と説明したことをNHKは伝えていますが、実態は銀行や証券会社から資金を借りることが難しくなった(=投資をしてもらえなくなった)ことが大きな要因なのではないでしょうか。

 

 SBはアメリカの携帯通信会社『スプリント』を買収したのですが、経営が思惑通りに進まず、マイナス面が色濃く現れることとなりました。

 当初は業界4位だった『Tモバイル』を買収し、『AT&T』『ベライゾン』『スプリント+Tモバイル』の3強による寡占市場の構築を目論んでいました。しかし、『Tモバイル』が斬新なキャンペーンを矢継ぎ早に展開し、業績が改善。

 株価も上昇したことでM&Aを行うために必要と見積もっていた資金額を上回ることとなり、動きが取れなくなってしまったのです。

 通常であれば、買収用の資金を増額するという選択が有力視され、検討されることになるでしょう。

 ところが、ソフトバンクグループの負債はおよそ10兆円。これはJR東海が自己負担で建設するリニア新幹線の総事業費5兆円の2倍に当たるのです。

 「借金は額が大きくなると借り手が強くなる」と言われたところで、負債を増やすような投資を行ってくれる “物分りの良い金融機関” は存在しないと思われます。

 

 規制に守られた携帯通信会社『ソフトバンク』とFITによる高額な買取制度が保証された『ソフトバンクエナジー』が “ドル箱” なのですから、これらの分野に設けられている規制の撤廃には孫正義社長は猛反発することでしょう。

 “原子力ムラ” を潰し、“太陽光ムラ” を作り上げた実績は素晴らしい政治手腕です。頭の悪い政治家を踊らせ、自らに利益を誘導する姿勢はどの会社経営者も学ぶべきものです。

 「金持ち=悪」という図式で日頃から番組作りをしている大手メディアは利権誘導をしている孫正義氏を批判する番組を作っては如何でしょうか。弱者の味方を名乗るから、孫正義氏は批判の矛先を向けるには格好の人物です。

 SBの財務状況を問題視したり、孫正義氏の経営戦略に疑問を呈することができないのであれば、メディアの存在価値はないと自ら認めていることと同じことではないでしょうか。