シリアを “失敗国家” に転落させた張本人であるリベラルが「損切り」を決断したトランプ大統領を批判し、責任転嫁を図る

 トランプ大統領が「シリアからアメリカ軍の撤退」を発表したことに対し、朝日新聞が12月22日付の社説で「身勝手だ」などと批判しています。

 ただ、身勝手なのはリベラル派でしょう。シリアでの騒乱を引き起こしたのは「アラブの春」を煽ったリベラルだからです。

 また、『在日米軍の抑止力』に疑義を呈する朝日新聞などが「米軍徹底」に懸念を示すのは「あまりに身勝手な主張」と言わざるを得ないでしょう。

 

 7年を超す内戦をどうやって終わらせ、荒廃した国家と分断した社会を復興させるのか。その構想も戦略もないままの撤退である。中東で長年、圧倒的な影響力をふるい続け、いまの混迷にも責任を抱える大国として、身勝手すぎる。

 (中略)

 シリアのような「失敗国家」では、過激派組織を軍事力で制圧するだけでは不十分である。地域の治安能力を高めなければテロを防ぐことはできない。米軍は4万人規模を目指して地元の治安部隊を育成していたが、まだ達成は2割ほどだ。

 このまま米軍が撤退すればISが息を吹き返す恐れがある。米軍トップや政権幹部らは今月半ばまで「まだシリアにとどまる」と口をそろえていた。トランプ氏はそれを独断でひっくり返したのである。

 

『明確な構想』も『実現するための戦略』もないまま、シリアに中途半端な介入をしたオバマ大統領の責任は重い

 朝日新聞などのリベラル派がシリア内戦で極力触れようとしないのは「なぜ、シリアで騒乱が発生したのか」という点でしょう。なぜなら、シリアは “失敗国家” などではなく、中東でも「安定した国」だったからです。

 しかし、それが『アラブの春』で一変しました。

 アラブ諸国は君主制が多く、シリアもアサド大統領が君主的な立場にある国でした。そのため、民主化運動が起きる土壌があり、「絶対王政である他のアラビア諸国と比較して弱い国力」という状況が反政府運動の “呼び水” となったのです。

 アメリカのオバマ大統領(当時)は「アサドは表舞台から去らなければならない」と啖呵を切り、欧米のリベラルは「シリアに民主化国家を樹立する」との『理想』に酔いしれ、シリアの反政府運動を支持しました。

 ところが、肝心の『民主化政府樹立に向けた構想』はなく、『戦略』は行き当たりばったり。中東政策でミスを連発するという失態を演じたのです。この問題を指摘せず、トランプ大統領に責任転嫁をしようとする姿勢は大きな問題と言えるでしょう。

 

アサド政権を弱体化させて権力の空白が生まれたことで、IS等が勢力を拡大できただけ

 そもそも、シリアはアメリカの “シマ” ではありません。イスラム教シーア派寄りの国で、“イランの弟分” という表現の方が合う国です。

 そこにオバマ大統領が「民主化」を理由に介入したのです。

 資源国ではないシリアは「外国からの支援を受ける反政府勢力」を単独で駆逐するだけの国力を持ち合わせていません。その結果、権力の空白地帯が生じることとなり、陸続きの隣国から “スンニ派過激組織” であるISが「漁夫の利」を得ることになったに過ぎません。

 「治安能力を高めること」が目的なら、治安を担う当事者が誰であるかは問題のないはずです。アサド大統領(シリア)であれ、カダフィ大佐(リビア)であれ、統治体制が機能していた時は治安は安定していました。

 つまり、アサド大統領が『シリアの治安』を回復させたとしても、シリアに「平和」は訪れるのです。「オバマ大統領が介入する前の状態に戻る」ことを意味していますが、それでも平和になるという現実が存在していることを見落とすべきではないでしょう。

 

『空想的な理想論』ばかりを掲げるリベラルが「抑止力の消滅」を危惧するという呆れた展開

 朝日新聞の社説で呆れてしまうのは「アメリカ軍が撤退すれば、ISが息を吹き返す恐れがある」と主張している部分でしょう。

 なぜなら、朝日新聞などの左派系メディアは「在日米軍の抑止力に懐疑的な論調」を張っています。最近では『辺野古への移設反対』で顕著となっており、「相手を刺激する」との主張が代表的です。

 これをシリア情勢に当てはめるなら、「アメリカ軍の駐留はISを刺激する行為」と言えるでしょう。しかし、朝日新聞はそのような主張は行わず、「地域が不安定になる恐れがある」との懸念を示しているのです。

 この主張は「アメリカ軍は抑止力を有している」と認めていることと同じです。地域によって『アメリカ軍が持つ抑止力』に対する扱いを180度異なるものにするのは明らかなダブルスタンダードと言わざるを得ません。

 

 平和だったシリアを “失敗国家” に転落させたのは『アラブの春』を安全な地域から煽った欧米のリベラル派です。したがって、尻拭いをしなければならないのは欧米のリベラル派であり、トランプ現大統領ではありません。

 また、リベラル派のメディアは「片棒を担いだ共犯者」なのですから、中東の秩序回復に自ら汗をかかなければならない存在なのです。問題を作った張本人と煽ったリベラル陣営は自分たちの犯した “罪” を直視し、贖罪行為に乗り出すべきなのではないでしょうか。