「病床の余裕が少ないから緊急事態宣言を延長し、長期戦に向けて方針を修正する」が5月4日の記者会見での内容だろう

 安倍首相が5月4日に行った新型コロナウイルスの感染拡大についての記者会見で言及した内容が首相官邸の公式ホームページ上で公開されています。

 「感染症対策」と「経済成長」の両立が要求されている状況にあります。『緊急事態宣言』が法的には強力な宣言があるだけに会見で言及した内容を整理しておく意味はあるでしょう。

 

感染症対策に関する安倍首相の発言

 安倍首相が5月4日の記者会見で行った新型コロナウイルスの感染拡大についての言及部分をまとめると以下のようになります。

  1. 安倍首相の現状認識
    • 終息に向けた道を着実に前進
    • 実効再生産数の値は直近も1を下回る
    • 現時点では感染者の減少が十分とは言えず
  2. 重症者について
    • 人工呼吸器による治療の患者はこの1ヶ月で3倍
    • 重症患者は回復までに長い期間を要する
    • 医療資源を更に重症者治療に集中していく必要がある
  3. 医療現場の逼迫状況を改善するために
    • 1日あたりの新規感染者を(100人未満に)減らす必要あり
    • 感染した患者の退院などを進める
    • このために1ヶ月程度の時間を要すると見ている
  4. 今後の見通し
    • 5月14日を目処に専門家に状況評価を求めている
      • 地域ごとの感染者数の動向
      • 医療提供体制の逼迫状況
    • 可能ならば期間満了前に緊急事態宣言の解除も考慮中
    • 5月は収束のための1ヶ月

 演説で “引っかかった” 部分は「現時点で感染者の減少は十分とは言えず」という部分です。

 実効再生産数 R が 1 を下回る状態が続いているのですから、「新規感染者」は十分に減少しているはずです。ただ、「感染者で入院している人」の減少は十分とは言えないことも事実です。そのため、方向性は妥当なものだと言えるでしょう。

 

地域別に「病床数の余裕」と「感染者の発生動向」の間でバランスを取る長期戦に比重を移しつつあるニュアンス

 政府の方針ですが、専門家が当初に掲げた「新型コロナウイルスによる死者数を最小にする」という目標は維持されるでしょう。この目的を最優先にするなら、緊急事態宣言は「維持」となります。

 ただ、経済を止めたことによる代償があまりに大きいため、「5月末までの予定を前倒しで解除もあり得る」と言及しています。少なくとも、『短期決戦』からは方針転換が図られた可能性が高いと言えるでしょう。

 実質的に『長期戦』である認識を示したのですから、“長丁場の中で特定の疾患による死者” を最小にするには「病床に余裕があること」が前提になります。

 だから、「医療現場の逼迫」を懸念する演説内容だったのでしょう。したがって、今月は「重症患者の病床使用率」と「感染者数の動向(≒ 実効再生産数R)」を見ながら、経済活動の再開を目指すための移行期間にするものと考えられます。

 

新型コロナの致死率や重症化率が不明の状況で専門家会議が “生活指導” を始めると、蛇蝎のように嫌われる

 専門家会議は『新しい生活様式』をマスコミの前で発表していますが、これは完全に時期尚早と言わざるを得ません。なぜなら、新型コロナウイルスの致死率や重症化率は(専門家会議でも)示すことができない現状だからです。

 要するに、致死率ですら誤差と言える範囲で断定することができないのです。

 抗体検査で陽性反応が出た結果どおりなら、致死率は季節性インフルエンザ(0.1%未満)を大きく下回ります。有症状者を中心にした『PCR 検査』での致死率は「数%」であり、エボラ出血熱などよりも1桁低い状況です。

 こうした状況であるにも関わらず、感染症の専門家が「新型コロナウイルスはエボラ出血熱などと同様の脅威があると見なし、生活様式そのものを変えろ」などと言える “生活指導” を始めたのですから、反感を買うのは避けられないでしょう。

画像:クラスターの発生要因

 感染症学会での押谷仁教授が報告しているように「新型コロナウイルスを多く輩出のは高齢者」であり、若者ではありません。若者は「生物学的理由で感染を発見しにくい」だけで、実際に感染を拡大させるのは高齢者なのです。

 こうした情報を逐次報告することが専門家の責務ですし、マスコミも新たに判明した事実を報じる責任があるはずです。

 

 新型コロナウイルスの入院・治療費が全額政府持ちなのですから、「陽性反応者は全員入院させて “上げ膳据え膳” で面倒を見るべき」とのマスコミによる無責任な論調が今後も続くことになるでしょう。

 インフルエンザ程度(かそれ以下の)致死率であることが判明しつつある新型コロナウイルスに関する医療費の患者負担がゼロであるという問題は速やかに是正すべき点と言えるのではないでしょうか。