「院内感染」と「訴訟による億単位の賠償」のリスクは割に合わないから、新型コロナが疑われる患者へは『受け入れ拒否』が正解となる

 NHK によりますと、新型コロナウイルスの感染拡大によって救急搬送先の確保ができなくなっていることを懸念する学会生命が発表されたとのことです。

 (新型コロナで)救急搬送先が消滅する問題は既に韓国で発生しています。そのため、驚くことではないと言えるでしょう。ただ、韓国と日本では「受け入れが拒否される理由」が異なります。

 救急搬送者の受け入れを可能にする対策を講じることは可能ですが、日本で責務を担っているのは「マスコミ」と「司法」です。したがって、それらの界隈が動かなければ、救急病院の機能が限定された状況が続くことになるでしょう。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大で救命救急センターで心筋梗塞などの重症患者の受け入れができないケースが出ているとして、日本救急医学会と日本臨床救急医学会が緊急の声明を発表しました。

 (中略)

 新型コロナウイルスの感染拡大で発熱やせきの症状がある患者を受け入れる病院が少なくなったことで、救命救急センターで対応せざるをえず、その結果、心筋梗塞や脳卒中など緊急を要する重症患者の受け入れができない事態になっているということです。

 また、救急で受け入れた患者があとになって新型コロナウイルスに感染していることが明らかになるケースも増えていて迅速な検査が必要だとしています。さらに、医療資機材が圧倒的に不足し、医療者の安全が確保できず対応が極めて困難な段階に至っていると訴えています。

 

韓国は法律で「院内感染発生の場合は2週間の業務停止」が決まっている

 まず、韓国の救急病院は(3月中旬の時点で)事実上の医療崩壊を起こしています。

 新型コロナウイルス感染拡大で、各病院は陰性判定が出るまで、呼吸器疾患や新型コロナウイルス感染症の可能性がある救急患者の診療・入院を拒否している。防疫当局の指針上、院内感染が発生した場合、少なくとも2週間以上病院が閉鎖されるからだ。病院閉鎖は中東呼吸器症候群(MERS)流行時の基準によるもので、新型コロナウイルス感染症にもそのまま適用されている。

 該当の記事は朝鮮日報が3月25日に報じたもの(アーカイブ)ですが、記事冒頭部で「17日にソウルで呼吸器疾患のある患者が肺炎治療歴を理由に受け入れを拒否された」と紹介されています。

 これは「受け入れた患者が新型コロナウイルスに罹患していた場合、かなりの高確率で院内感染が起きる」ということを懸念しての判断です。

 MERS の際に院内感染を引き起こした韓国は「院内感染が起きた場合は最低2週間の病院閉鎖」と決められています。病院閉鎖となれば、上層部は責任が問われることになりますし、医療従事者は収入自体が絶たれることになります。

 そのため、「最初から疑わしい患者は受け入れない」との選択肢が『(病院経営での)正解』となります。これと同じ状況が日本の救急現場でも起きていると言えるでしょう。

 

日本では「院内感染でマスコミに叩かれる」し、「その後の医療裁判で億単位の賠償」が要因だろう

 日本の場合、院内感染が発生するとマスコミから大バッシングを受けます。また、それによる風評も起きるため、病院経営が成り立たなくなるでしょう。

 その上、亡くなった患者がいれば、遺族が訴訟を起こすことは避けられません。患者の生産性がゼロどころかマイナスでも司法は「適切な医療が提供されていれば患者は亡くならずに済んだ」との “ポエム” で億単位の賠償を認めるのですから、積極的にリスクを負うメリットはありません。

 現状はマスクや防護服を始めとする医療資機材が圧倒的に不足している状況に加え、現場はフル稼働でミスが起きやすい条件が揃っているのです。

 このような状態であるにも関わらず、“受け入れに応じてくれている医療機関” が存在するだけ「マシ」でしょう。「サンデル教授の “トロッコ問題” は既に発生している」という現実を直視しなければなりません。

 

「新型コロナ感染の不安を訴える患者(1名)」と「他の疾患で入院中の重症者(複数名)」のどちらかをお選び下さい

 医療従事者や医療用の資機材が潤沢にあるなら、来院者全員に手厚い医療サービスを提供することが可能でしょう。しかし、現状はそうではありません。したがって、決断が求められているのです。

  1. 新型コロナ感染の不安を訴える患者
  2. 他の疾患で現在入院中の重症者

 両立は現実的に不可能ですから、どちらかを選択し、選ばなかった方は「切り捨てること」が絶対条件です。

 それをせずにキレイゴトを主張することは論外です。「新型コロナウイルスへの感染が疑われる患者への対応」を優先的に求めるなら、受け入れたことで生じた院内感染や医療訴訟を免罪とする法整備が不可避です。

 現状の罰則・社会的制裁を維持した上で「新型コロナも対応せよ」と要求すれば、現場が職務放棄をしても文句は言えません。(なぜなら医療従事者にも幼い子供や年老いた両親などの家族がいるから)

 「(37.5度以上の)発熱が4日以上続く」や「強い倦怠感や息苦しさがある」などの “所定条件” を満たさずに不安を訴えてアポなしで来院する患者の対応ほど医療資源の著しい浪費行為はありません。

 

 『罰則規定』が存在しないのですから、「医療機関の自己防衛」には理解を示さなければならないでしょう。それを「けしからん」と思うのであれば、“現行ルール” を社会が先に変える必要があると言えるのではないでしょうか。