GM+クルーズ vs. グーグル+フィアット・クライスラー
アメリカではIT技術を用いた自動運転技術の開発競争が活発化しています。
今年3月にアメリカの自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)が自動運転システムを開発するクルーズ・オートメーションの買収を発表しました。それに対し、IT大手のグーグルはフィアット・クライスラーと自動運転の分野で提携すると5月に発表し、真っ向勝負になる様相を呈してきました。
自動車メーカーが主導する『GM+クルーズ陣営』と、IT企業が主導権を握っているであろう『グーグル+フィアット・クライスラー陣営』の2つが存在することが興味深い点だと言えるでしょう。
グーグルは自動運転の試験走行において、既存自動車メーカーからアドバンテージを持っており、自らが主導権を持てるパートナー企業と組むことが必須でした。自動車の生産工場を所持し、求められる品質の自動車を製造し続けるにはかなりの投資が求められます。
この点においてはGM、フォードに次ぐ、3番手に位置するフィアット・クライスラーが(グーグルが)主導権を取ることにアレルギー反応を示す可能性が最も低いと考えられるからです。
一方のGMはアプローチが逆になります。自前の生産工場は所有しており、生産能力はありますが、自動運転のプログラム開発では遅れを取っており、この分野を重点的に強化する必要がありました。
クルーズ・オートメーションの買収には10億ドルを要すると見積もられていますが、“周回遅れ” とも揶揄された事態からは脱却できると言えるでしょう。その上で、GMは配車サービスを提供するリフトと組み、自動運転タクシーの行動実験を行うことも発表しています。
自動運転技術は “ドライバー業” の形態を大きく変える要素であるだけに、Uber (ウーバー)など配車ビジネス大手も独自ルートで覇権を狙うことになるでしょう。
タクシー、バス、トラックといったドライバーの業務形態の根幹そのものを揺るがす技術ですので、確立することになれば、大きな変化が生じることを意味します。
職を失うことになる人々からは反感を買う可能性はありますが、過酷勤務などが原因の交通事故を減らすことができる点はポジティブに評価することができます。事故のようなマイナス面を減らすことができれば、普及に大きな時間を要することはないと言えるのではないでしょうか。