酒の安売り規制法案による効果はほとんど得られないのでは?
晩酌を楽しみにしている人々からすれば、ありがたくない法改正が行われたと言えるでしょう。
“行き過ぎた酒の安売りを規定する” 目的で改正酒税法などが27日の参議院本会議で可決・成立したとNHKが伝えています。
量販店などによる行き過ぎた酒の安売りに歯止めをかける改正酒税法などが、27日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。
改正酒税法などは、量販店やディスカウント店などによる行き過ぎた酒の安売りに歯止めをかけ、中小の酒店の経営安定をねらったもので、27日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。
今回の法改正による恩恵を受けるのは規模の小さい酒店だけでしょう。小売価格に規制が設けられる法改正なのですから、肝心の消費者にとってのメリットを見つけることが困難と言えそうです。
ビールの販売に関して言えば、量販店であれ、ディスカウントストアであれ、街の酒屋であれ、大手4社(アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ)の同じ商品を取り扱っています。
例えば、「アサヒスーパードライを飲みたい」という消費者が購買する店を決定づける要素は何になるでしょうか。
- どのぐらいの量が必要か?
- 販売価格の安い店舗はどこか?
- 購入する際の手間はどのぐらいか?
おそらく、上記の3つの要素が関係しますが、中でも値段を気にする人が多いはずです。また、1箱(24本入り)を購入した場合、自宅までの持ち帰り方法も念頭に置くことでしょう。その際、「中小の酒店の経営安定のため、この店舗で購入しよう」などと考える人はまずいないと思われます。
もし、一部の量販店が不当廉売(ダンピング)を行っているのであれば、独占禁止法に抵触する行為であり、行政処分の対象となります。
しかし、仕入れ値から利益の上乗せ分を少なくする “薄利多売” のビジネスモデルを「中小の酒店の経営安定を狙う」という理由で制限するのは消費者にとって悪影響にしかならないでしょう。
資本や規模で優る量販店と販売量で競い合うことは消耗戦となり、中小の酒店に勝ち目はほとんどありません。したがって、価格面以外での付加価値を顧客に提供できるかが鍵になります。
顧客の好みに合わせたアルコール飲料を勧めたり、晩酌の友になる旬の一品料理をアドバイスすることも良いでしょう。こうしたソムリエやコンシェルジュといったサービス業など、マニュアルによる効率化が強みである大手が参入しづらい分野で生き残りを賭ける必要があります。
少なくとも、安売りを規制するだけで中小の酒店の経営が安定することはないでしょう。ポイントを付与することで規制を逃れるケースなどが容易に想像できるだけに、規制の有効性そのものを疑問視する必要があると言えるのではないでしょうか。