国は悪質クレームを取り締まれない 有効な対応策は「企業が悪質クレームに毅然とした対処を徹底すること」である
流通小売業で働く人々なで構成された労働組合『UA ゼンセン』が厚労省に「悪質クレームに対策を講じて欲しい」と要請したと NHK が伝えています。
ただ、国が悪質なクレーマーを取り締まることは非現実的です。そのため、企業が悪質なクレーマーに対し、毅然とした対応をスムーズにできるような体制を構築することが求められていると言えるでしょう。
スーパーマーケットや百貨店、コンビニエンスストアといった流通業界で働く人などの労働組合で作るUAゼンセンが、組合に加盟する従業員を対象にことし、初めて調査したところ、回答した5万人余りのうち悪質なクレームなどの迷惑行為を受けたことがあると回答した人は3万6000人と全体の70%に上りました。
結果を受けて、UAゼンセンの藤吉大輔副会長が16日、国として対策を取るよう厚生労働省の宮川晃雇用環境・均等局長に要請書を手渡しました。
要請書では悪質なクレームなどの迷惑行為が「働く魅力を阻害し働き手不足をもたらす」として労働者を守るため事業者が取るべき措置を法律で定めたり、国も実態調査や研究を行ったりすることなどを求めています。
「国からも企業に働きかけて欲しい」と陳情する姿勢は理解できます。しかし、国に「悪質クレームの定義を作って欲しい」と要望するのは無責任と言えるでしょう。
これでは対応を丸投げしていることと同じであり、労組の存在価値が損なわれることになるからです。クレーマー対応の分野で労組が評価する企業の基準を一般化し、この水準が他に企業にも導入されるよう通達を出して欲しいと要望すべきなのです。
1:悪質クレームの基準は現場が決めるべき
“労働者のため” の組織であるなら、「悪質クレームの基準」は現場の声をできる限り反映すべきです。
同業種であっても、寄せられるクレームは異なるケースが想定できます。そのため、一律の基準を設けるのではなく、現場の状況に合わせた基準にアレンジした上で運用することが理想的と言えるでしょう。
企業側に非がある場合であっても、必要以上の損害賠償を支払う必要はありません。ゴネ得を許すほど企業やそこで働く従業員にしわ寄せが行くことになる訳ですから、明確な線引きをした上で毅然とした対応が不可欠なのです。
2:「企業が人件費の損失を被ったか」を “悪質クレーム” の判断基準とすべき
悪質クレームが蔓延する理由は「ノーリスク・ハイリターン」になる成功体験をクレーマーが学習しているからでしょう。反撃してこないと見なした相手に強く出る性格の人物は一定数で存在するからです。
したがって、『ノーリスク』の部分を是正することが一定の効果をもたらすことが期待できます。
具体的には企業がクレーマーに対し、少額訴訟を起こすことです。訴訟の理由は「従業員が悪質なクレームを受けたことで本来の業務ができず、人件費がかさむ結果となり、損失を被った」とすれば良いでしょう。
その損失分(社会保障費を含めた額)をクレーマーに『少額訴訟』という形で請求するべきなのです。“過払い金返還訴訟” が落ち着き、暇を持て余し始めている弁護士が喜んで協力してくれることでしょう。
もし、マスコミがクレーマー側の肩を持つような報じ方をすれば、「訴訟中に一方の見解のみを取り上げる報道には違和感を覚える」と批判すれば良いのです。
昨今のご時世は『被害者カード』が力を発揮する時代です。そのため、企業側は「悪質クレーマーから従業員の尊厳・健康・精神状態を守るため、止むを得ず提訴に踏み切った」と公言することが重要なのです。
クレーマー側が “弱者” だと主張しようものなら、「弱者を名乗れば、悪質なクレームを付けても免罪されるとの考えは間違いだ」と一刀両断することも求められます。
弱者を甘やかし続けてきたツケによる “しわ寄せ” が『企業で働く労働者』という決して “強者” とは言えない立場に行っていることが問題なのです。したがって、有効な対応策は「クレーマーであっても、毅然とした対処をする」という当然の対応を徹底することだと言えるのではないでしょうか。