「政治とカネ」を問題視するマスコミこそ、 “民進党の金庫にある政党交付金の行方” を追うべきだ

 民進党は先の衆院総選挙を分裂した状態で戦いました。その結果、政党が『民進党』、『立憲民主党』、『希望の党』に別れて存在している状況となっています。

 統一会派を作るなどの動きも報じられていますが、最大の注目点は「民進党が持つ巨額の政党交付金がどうなるか」と言えるでしょう。これを上回る「政治とカネ」に関する話題はないため、マスコミは状況を追い続ける責務があるはずです。

 

1:2017年下半期の政党交付金

 政党交付金は年4回に分けて支給されます。下半期は10月(PDF)と12月(PDF)に交付されており、与党や政党の分裂があった民進党系の政党などに対する交付額は下表のとおりです。

表1:政党交付金の金額(2017年下半期)
  10月交付分 12月交付分
自民党 44億565万円 43億8599万円
公明党 7億8384万円 7億5301万円
民進党 21億7974万円 13億4583万円
立憲民主党 4億3709万円
希望の党 5億348万円
日本維新の会 2億5239万円 3億249万円

 分裂した民進党ですが、2017年下半期に政党交付金として約35億円を受け取っているです。

 仮に、“離党ドミノ” が民進党で起きたとしても、1回の交付額は10億円超は維持できるでしょう。それだけに、「民進党が金庫に溜め込んだ政党交付金の争奪戦」を民進党にルーツを持つ3政党が繰り広げる可能性は十分すぎるほどに存在すると言えるのです。

 

2:2017年下半期で消えた「民進党の30億円」はどこに?

 民進党内で “奇妙なカネの流れ” が存在することは事実と言えるでしょう。日経新聞が10月5日の時点で次のように報じているからです。

 民進党は2017年度予算で、年間87億円の政党交付金を受け取り、148億円の繰越金が出るとしている。希望の党は3日、民進党からの合流組も含めて公認を決定したが、民進党関係者によると、その前日の2日付で民進党の前職、元職、新人に政治活動費として1人当たり1500万円を支給した。民進党公表の今年度予算などをもとに分析すると、100億円以上の資金がなお残っているとみられる。

 「100億円以上の資金を持つ」と算出された政党が12月に「70億ほどだ」とコメントしているのです。総選挙に1人も候補者を擁立しなかった政党が持っていると見込まれた金額に30億円もの誤差が生じたことは奇妙すぎる事案だと言えるでしょう。

 マスコミが「政治とカネ」の話題を扱うのであれば、民進党の “消えた30億円” を追いかける必要があると言えるはずです。

 

3:「民進党は民主党とは違う」という詭弁を繰り返すことはリスクが大きすぎる

 民進党議員は民主党政権時代の批判を受けると、「民進党は民主党とは異なる政党だ」と開き直りを見せて来ました。

 名称上は別政党と言えるでしょう。しかし、民主党時代の選挙結果に基づく政党交付金を活用して政治活動を民進党は行ってきたのですから、言い訳にすぎないことは明らかです。

 ちなみに、政党交付金の算出方法は次のとおりです。

画像:政党交付金の算出方法
  • 議員数割(全体の50%)
  • 得票数割(全体の50%)
    • 衆議院(全体の25%:直近の1回)
      • 小選挙区(全体の12.5%)
      • 比例区(全体の12.5%)
    • 参議院(全体の25%:直近の2回)
      • 選挙区(全体の12.5%)
      • 比例区(全体の12.5%)

 「現職議員数に応じて 50%」、「現職議員が選出された選挙での政党の得票に応じて 50%」という分配方法が採用されているのです。

 つまり、「民進党は民主党とは別の政党」との主張に説得力を持たせたいのであれば、民主党時代に戦った選挙結果に基づく得票数割で得られる政党交付金を辞退していなければならないのです。

 しかし、民進党はそうした行動を起こしてはいません。“本来の目的” とは違った形で政党交付金が使われることは極めて不適切と言えるでしょう。

 

4:「立憲民主党が民進党と同じ轍を踏むのか」が注目点

 この民進党が持つ多額の政党交付金ですが、注目点は「立憲民主党が民進党と同じ轍を踏むのか」だと言えるでしょう。

 民進党は政治資金面(=政党交付金)で完全な民主党の後継政党でした。立憲民主党もそうなる可能性は存分に存在していることが実情です。

 したがって、きちんと筋を通すことができるのかが問われているのです。

 「民進党の全所属議員が『希望の党』への合流に賛成した」という事実はマスコミが “なかったこと” にしてくれています。また、枝野代表も「筋を通す」、「真っ当な政治をする」、「永田町の手法とは一線を画す」とアピールしていますので、民進党の政党交付金が立憲民主党に “還流” するような事態は絶対に避けなければならないはずです。

 民進党が持つ多額の政党交付金は魅力的ですが、民進党から離脱した政治家が多く在籍する政党は距離をとる必要があります。しかし、「政治とカネ」という点で誘惑に敗ける政治家は出てくることでしょう。マスコミは民進党に所属していた経歴を持つ政治家が関係する金の流れを追うべきと言えるのではないでしょうか。