イギリスで大問題となった女性議員の「母親の自分の方が適任」発言を平然と行う野田聖子総務大臣

 今年秋に行われる自民党総裁選に向け、野田聖子総務大臣が自身の政治資金パーティーで意欲を示したと NHK が伝えています。

画像:野田聖子議員の問題発言

 しかし、その席で問題発言があったことを見逃すことはできません。なぜなら、野田聖子議員の問題発言はイギリスで大問題となった時のものと同じだからです。

 

 野田総務大臣は自民党の総裁選挙について「安倍総理大臣の政策とどこが違うのかと言われるが、自民党だからおおむね一緒だ。ただ、私は女性だし、子どもを産み育て、息子には障害がある。その世界で見えるものと、安倍総理大臣が見てきた世界は、同じ日本でも似て非なるものがあると思う」と述べました。

 リベラルを自称する人々は野田聖子議員の発言を問題視することでしょう。イギリスでは同様の発言をした女性議員が大きな批判を浴びたからです。

 もし、「安倍首相との比較であるから問題ない」などとの理由で批判を留めるのであれば、「リベラルを名乗る資格はない」と自覚しなければなりません。

 

アンドレア・レッドサム議員(保守党)が行った失言

 問題の発言は2016年9月に行われたイギリス保守党の党首選挙が行われる前に発生しました。

 有力候補と見られていたアンドレア・レッドサム(Andrea Leadsom)議員がテリーザ・メイ議員に対し、「母親の自分の方が適任」とタイムズ紙のインタビューで発言し、大きな批判を招いたのです。

 レッドサム議員は「発言の趣旨が変えられた。おぞましい」と批判しましたが、タイムズ紙はインタビューの録音内容を公開。執筆記者も BBC に以下のように述べ、レッドサム議員は謝罪に追い込まれたのです。

 シルベスター記者はBBCに対して、「自分とテリーザ・メイの違いは何かと聞くと、テリーザ・メイには子供がいないと答えた。違いは『経済手腕と家族』だと。明らかに自分の長所だと思っている様子だった」とやりとりの経緯を説明。「報道内容は正確」で、「そういう比較をしておきながら問題視されないと思ったのは、判断が甘い」と述べた。

 この問題発言は「野田聖子議員の発言と内容がほぼ同一」と言えるでしょう。つまり、トップに立つことを目指す人物の発言として大きな問題があるのです。

 

「子供の有無」と「政治家の能力」は無関係

 政治家に要求されているのは『政治家としての実務能力』です。「子供がいるから、良い政治家」という訳ではありません。

 子供がいれば、『子育て』を実体験している可能性が高いことでしょう。そのため、子育て世帯が親近感や共感を抱くという利点が存在することは確かです。ただ、これだけでは話になりません。

 なぜなら、政治家は有権者が持つ様々な利害関係を調整しなければならない立場です。

 特定の勢力に過剰な配慮を示すことは論外ですし、「子供を持つ自分の方が、子供を持たない人よりも優れている」との発言は差別以外の何物でもありません。だから、イギリスの首相に就く政治家を選ぶ保守党の党首選挙を前にしたレッドサム議員の失言は大きな批判を浴びたのです。

 

野田聖子議員の問題発言に苦言を呈することができない時点で “反差別運動” とやらは終わっている

 政治家としての『実績』や『専門性』を根拠に「私は安倍首相よりも優れている」と発言することは全く問題ありません。むしろ、与野党に関係なく、積極的に政治家としてのアピールポイントを発信すべきでしょう。

 しかし、出自や家庭環境などを理由にした優勢発言は論外です。男性議員が「母親の方が適任」と発言すればバッシングを受ける一方、女性議員が「母親の方が適任」と男性議員を攻撃する発言をしても問題とならないのは明らかにダブルスタンダードだからです。

 少なくとも、反差別運動に取り組む活動家や後援している自称リベラル派のマスコミは今回の野田聖子議員による発言に対し、苦言を呈する必要があります。それすらできないのであれば、『反差別運動』は安倍政権を批判するツールの1つに過ぎないと見なされることになるからです。

 問題発言を行った国会議員に対しては与野党・役職に関係なく、同じ基準で批判するという当たり前のことをやる必要があると言えるのではないでしょうか。