中国からの資金提供を指摘されている毎日新聞、日本での梅毒患者数増加の原因を「訪日中国人」から「出会い系アプリ」に転嫁する記事を掲載

 毎日新聞が日本で患者数が増加している梅毒について、「出会い系アプリが原因」と主張する記事を掲載しています。これは悪質なミスリードと言えるでしょう。なぜなら、『訪日中国人』という梅毒患者数を激増させる原因から目を背けようとしているからです。

画像:毎日新聞が報じた記事へのファクトチェック

 

■ 毎日新聞の記事

 毎日新聞は11日に以下の記事を報じました。

 国立感染症研究所は11日、性行為を通じて感染する梅毒の2018年患者数が速報値で6923人だったと発表した。前年より約1100人増え、48年ぶりに6000人を超えた。感染が広がっている原因として、スマートフォンの出会い系アプリの利用があるとの見方も出ている。

 これは「責任転嫁」と言うべき記事でしょう。なぜなら、「スマートフォンの出会い系アプリが原因」との “見方” は紹介されていますが、過去に存在した『出会い系サイト』『出会い系喫茶』『テレクラ』などと比較して、梅毒患者数が増えた根拠を示すことができていないのです。

 これでは『訪日中国人』という “極めて疑わしい要因” から目を背けさせようとしている記事だと言わざるを得ないでしょう。

 

■ 事実

1:中国国内の梅毒患者数は “極めて高い水準” にある

 中国国内の感染症情報は『国家衛生健康委員会』に掲載されています。中国と日本の梅毒患者数は以下のように推移しています。

  • 2004年
    • 中国:92,573人(7.1人 / 10万人)
    • 日本:533人(0.4人 / 10万人)
  • 2011年
    • 中国:395,182人(29.3人 / 10万人)
    • 日本:875人(0.7人 / 10万人)
  • 2017年
    • 中国:475,860人(34.5人 / 10万人)
    • 日本:5,820人(4.6人 / 10万人)

 中国での梅毒患者数は2004年の時点で「10万人あたり7.1人」で患者の割合は高く、患者数は増加傾向にありました。2011年に患者数40万弱を記録すると、以降は「10万人あたり30人超」の “非常に高い水準” が続く状況となっています。

 この現状を認識することが第1歩だと言えるでしょう。

 

2:『訪日中国人観光客数』と『日本の梅毒患者数』には強い相関関係にある

 では、2004年を基準(= 基準値:100)とした場合の『訪日中国人観光客数』と『日本の梅毒患者数』の推移をグラフで示すと、以下のようになります。

画像:訪日中国人観光客数と日本の梅毒患者数の推移

 訪日外国人数は2004年と比較して増加傾向にありますが、500% ほどの数値です。そのため、「外国人によって、日本の梅毒患者数が増加した」との主張には根拠がありません。

 ただ、訪日中国人の場合は別です。なぜなら、マルチビザの要件が緩和された2014年以降に訪日中国人数は爆発的に増加それに追従する形で日本の梅毒患者数も同様の伸びを見せているからです。

 しかも、その間の中国国内における梅毒患者数は「高止まり」です。中国国内の梅毒患者数が減少しているのであれば、「日本の梅毒患者数増加の原因は訪日中国人」との主張は “難癖” と言えるでしょう。

 しかし、実際には中国の梅毒患者数は2012年以降、年間40万人を下回ったことはないのです。そのような衛生状態にある国から大量の観光客が流入している現実があるのですから、データを直視する必要があると言えるはずです。

 

3:ガーディアン紙(イギリス)に「中国のプロパガンダを担うメディア」と名指しされた毎日新聞

 毎日新聞ですが、2018年12月にイギリス・ガーディアン紙に「中国のプロパガンダを担っているメディア」と名指しされています。

画像:中国に忖度するメディア(ガーディアン紙より)

 約300万部弱の販売部数である毎日新聞が「660万部」と紹介されている点が “ツッコミどころ” となっていますが、重要なのは「毎日新聞には中国に配慮する紙面を作る可能性が高い」と言える部分があることでしょう。

 中国の梅毒患者数は日本国内から確認することは可能です。こうした情報に言及せず、「出会い系アプリによって日本の梅毒患者数が増えている」との見方もあるとの指摘で世論を誘導しようとする姿勢は報道機関として問題があると言わざるを得ないのではないでしょうか。

 

■ 参考資料

 本記事の作成に利用した資料は以下の項目から確認が可能です。

 訪日外国人数は JNTO、日本政府観光局の『月別・年別統計データ』に記録されています。全体数と国別で公開されているため、「任意の国」や「特定の国を除いた全体数」を計算することもできます。

 梅毒患者数についてですが、日本は厚労省が『性感染症報告数』の名目で発表しています。2018年など、最新の数値はメディア報道の数値を利用すれば求めることが可能です。

 中国は国家衛生健康委員会が発表する『全国法定伝染病統計』の通年データから確認することができます。(毎年2月頃に発表される)

画像:絶対値によるデータ

 このような数値を根拠に、日本での梅毒患者数が増加している原因を探ることがメディアの責務と言えるのではないでしょうか。