仙台市の電灯契約解除し忘れ問題、「使用していないから返金せよ」との主張が認められるなら悪用する模倣犯が出るだろう

 宮城県仙台市が道路の照明灯を撤去した際に解約手続きを怠っていたため、約1億円の無駄な電気代を支払っていた問題が解決する見通しが出ていないと朝日新聞が報じています。

 行政の落ち度ですが、電気代の返還が認められる可能性は低いと言えるでしょう。なぜなら、仙台市の主張が有効となるなら、同様の手口で電気代の返金を要求することが可能になってしまうからです。

 

 仙台市が道路の照明灯を撤去したのに解約手続きを怠り、無駄な電気代を払い続けていた問題が、過払い額の全体像すら見えない状況に陥っている。市側は電気代の返還が可能かどうか東北電力と交渉する方針だが、約款上難しい可能性が高いといい、最終的には市民が尻ぬぐいすることになる可能性がある。

 (中略)

 無駄な電気代の総額は、闇の中だ。市は当初、推計で約1億5千万円と発表。その後、記録が残っている1148件分については約9200万円だったと推計し直した。ただ、残る652件については記録すらなく、調査を担当している道路保全課は「特定は困難」とする。

 

“無駄遣い” の発生原因は「仙台市による道路照明灯の刷新」

 仙台市で電気代の無駄遣い問題が起きた原因は「道路整備に伴って照明灯を置き換えたこと」でしょう。この作業自体は『都市計画』に含まれる “ありふれた内容” であり、それほど問題になることはありません。

 ただ、違ったのは「新しい照明灯に置き換えると電力契約を終わらせる必要があった」ことです。

  • 既存の契約
    • 契約相手:東北電力
    • 契約内容:月額固定(照明灯1本あたり 300〜400 円)

 定額制による電力契約を締結していたのですから、使用量は関係ありません。24時間365日電灯を点けたままにしても金額は変わらないのです。「使ってないから」との理由で “いいとこ取り” を狙う姿勢は問題と言わざるを得ないでしょう。

 

東北電力からすれば、仙台市の要望は「知らんがな」と門前払いにする内容

 仙台市の主張は「定額制で契約したが、使っていないから使用量ベース料金体系を適用して差額分を返して欲しい」と言っていることと同じです。

 この要求を寄り添うのであれば、「使い放題のサービスを提供する携帯電話」や「NHK の受信料」に対しても同じ姿勢を採るべきでしょう。なぜなら、これらと同じ状況が起きているからです。

 個々の消費者がどのような目的でプランを選択したのかは供給者側(= 東北電力)が知る由もありません。

 「水道やガスは連絡が来る」との主張がありますが、これらは「水漏れ」や「ガス漏れ」という一般家庭の利用では想定されない “イレギュラー” なケースが疑われる場合です。

 長期旅行や長期出張で「全く使っていない」時に連絡は来ないのですから、この点を念頭に置く必要があるでしょう。

 

「定額契約を結んだが、使っていないから返金すべき」との主張はクレーマーそのもの

 定額契約を締結したにも関わらず、「使用していない」との理由で契約を(合法的に)反故することが可能であるなら、悪用する輩が続出することでしょう。なぜなら、「使用していない」と主張すれば、料金の返還を要求することが可能になってしまうからです。

 電力会社は「消費者の電力使用量」を個別に把握する意味はありません。

 『今現在の電力使用量』を把握して『供給量』とのバランスを保つことが最重要であり、“定額契約を結んだ消費者” がどれだけ電力を使ったを認識する意味は極めて低いのです。

 強制的に電力契約を締結させられたのではないのですから、東北電力に批判的な論調な出ること自体が論外と言わざるを得ないでしょう。「朝日新聞を年間購読しているが、読んでいないから返金に応じて欲しい」と “要望” されて素直に応じるかを考える必要があります。

 思わぬところにも “ブーメラン” が存在していると念頭に置いた上でマスコミは論評を行う必要があると言えるのではないでしょうか。