妊娠を理由にした「スポンサー契約の打ち切り」は問題だが、「凍結」としたナイキの判断は妥当と言えるのでは?

 ナイキが妊娠した女子選手へのサポートを凍結したことに対し、批判が起きているとロイター通信が映像で報じています。

画像:妊娠でサポートが凍結されたと訴える女子選手(ロイター通信より)

 「打ち切り」であるなら、批判の対象と言えるでしょう。しかし、「凍結」という形で「残りの契約期間」が維持されているなら、ナイキの対応は適切なものと言わざるを得ません。

 一部の女性アスリートのみを過剰に保護する制度を作るほど、女性アスリートの競技環境は悪化することを認識する必要があるからです。

 

 女性アスリートの処遇をめぐって、ナイキへの批判が相次いでいる。英米の女子選手が、妊娠中に同社からのサポートが凍結されたことを公表した。

 アスリートに期待されているのは「競技大会に出場して結果を残すこと」です。それによってアスリート自身がメディア媒体に露出することになり、スポンサーも宣伝効果という形で投資分を回収することが可能になるからです。

 今回は「妊娠を機にサポートが凍結された」と一部の女子選手が批判をしたことで、“パンドラの箱” を開ける結果になったと言わざるを得ないでしょう。

 

「サポート契約の凍結」なら、アスリート自身も受け入れられる内容なのでは?

 スポンサーからのサポートを受けているであろうアスリートの契約期間は複数年になっていると考えられるため、以下のケースが存在すると思われます。

画像:スポンサー契約と妊娠による空白期間

 怪我などで離脱することなく、契約期間を満了する「Ⅰ」が最も理想と言えるでしょう。ただ、フル稼働ができないケースがほとんどであり、「競技ができない期間に対するサポート」も重要な項目になります。

 ナイキは「サポートの凍結」をしたことで批判を受けていますが、「Ⅲ」の契約内容ならアスリート側がゴネているに過ぎません。なぜなら、「アスリートとして活動する〇年間はサポートする」という原則は理にかなっているからです。

 妊娠時に激しい運動を控えるべきとの指標があるのですから、妊娠中の女性アスリートに対してスポーツブランドが『競技のサポート』を続けることは “間違ったメッセージ” を送ることにもなります。そのため、契約を一時的に凍結する判断は妥当と言えるでしょう。

 

妊娠中の女性アスリートが「サポート契約の凍結」に文句を言う理由として考えられること

 ロイター通信が取り上げた話題で注目すべきは「妊娠が発覚した女性アスリートがサポート契約の凍結に文句を言っている」ということでしょう。

 例えば、3年契約の途中に妊娠で競技を約1年離れた場合、スポンサーが2年分しかサポートしていないケースは「凍結」とは言えないでしょう。この場合は「妊娠および出産を理由に3年契約を実質的に2年契約にされた」と訴え出れば、間違いなく世間から大バッシングを受けると考えられるからです。

 つまり、「競技から離れたことを理由に競技スポンサー契約が一時的に凍結された結果、日々の生活費の工面に苦労していること」に対する文句を言っている可能性が高いと思われます。

 ただ、スポーツ用品メーカーがアスリートを起用するのは「競技大会で好成績を残してイメージをアップさせるため」です。「妊娠・出産・子育てに理解がある」と宣伝するための適任者が女性アスリートでなければならない理由はありません

 “自社の女性社員” よりもこれらの部分で秀でている要素を持ったプロの女性アスリートは少ないという現実に目を向ける必要があると言えるでしょう。

 

“妊娠中の女性アスリートに対する契約上の配慮” を要求するほど、不良債権化を嫌うスポンサーに足元を見られる

 もし、一部の女性アスリートが要求する「妊娠中の配慮」が受け入れられた場合、他のアスリートにしわ寄せが行くことになるでしょう。なぜなら、妊娠で競技から離れて成績を残すことができない女性アスリート分の負担をスポンサーが持つことになるからです。

 メジャーリーグでは高額な FA 契約で獲得した選手が期待した活躍を見せることができず、不良債権と化すことが問題となっています。女性アスリートが妊娠で競技から離れている状態もこれと変わりありません。ただ、「完全な不良債権」ではなく、「一時的」です。

 しかし、フェミニストが「妊娠中の女性アスリートを手厚くサポートしろ」と騒げば騒ぐほど、女性アスリートが不良債権と化すリスクが高くなります。その結果、女性アスリートを積極的に手厚くサポートしようとするスポンサーは少なくなるでしょう。

 なぜなら、契約中の女性アスリートが不良債権化することを念頭に入れた契約内容になると想定されるからです。

 これは「全アスリートの契約水準を引き下げ」か「対象アスリートの限定」または「1年契約で随時更新」という形でマイナス分をカバーすることが常道であり、交渉ではスポンサー側が有利になるカードが増えると言えるからです。

 

 男女平等を求めるなら、「アスリートとしての活動期間中に平等なサポートを得られること」に重点を置くべきです。妊娠を理由に「その間の特別対応」を要求すれば、育成年代のアスリートへのサポートや協賛も減少することになるのです。

 そのことへの認識が欠けたフェミニストの主張は突っぱねる必要があると言えるのではないでしょうか。