日本政府が「韓国の『ホワイト国』からの除外」を閣議決定、マスコミが騒いだアメリカ仲介説は「韓国が『GSOMIA 破棄』を外交カードに使ったこと」が理由

 日本政府が8月2日午前に行われた閣議で「韓国を輸出管理の優遇対象国(= ホワイト国)から除外する」ことを正式に決定したと NHK が報じています。

 前日の1日までは「アメリカが仲介に乗り出す」など “謎の政府高官” による発言がありましたが、これは韓国が持ち出した『GSOMIA 破棄』についての対処を『輸出管理問題』にマスコミが転用していたからでしょう。

 なぜなら、実名で語るアメリカの高官は「仲介に乗り出す気はない」と発言していたからです。“匿名を条件に語る政府高官” はマスコミによる願望記事に過ぎないと見る必要があるでしょう。

 

 政府は2日の閣議で、輸出管理の優遇対象国、いわゆるホワイト国から韓国を除外することを正式に決定しました。半導体の原材料など3つの品目に続く輸出管理の強化で、韓国は今月28日に優遇対象国から外れ、輸出管理を厳しくする対象が拡大されます。

 

韓国が外交カードとして使っていた『GSOMIA』とは

 GSOMIA (= ジソーミア)は「日韓秘密軍事情報保護協定」のことで、日本と韓国が秘密軍事情報を提供し合う際に第三国への漏えいを防ぐための協定です。

 2016年11月23日に発効した GSOMIA は「1年ごとに更新が必要な協定」であり、更新の期限は90日前(= 8月24日)となっています。

 更新方法は「自動更新」です。つまり、日本と韓国のどちらかの国が8月24日までに「更新しない」と宣言しない限り、GSOMIA は自動的に1年延長する形態なのです。

 日本政府は「GSOMIA は重要」と更新に向けた姿勢を示しています。その一方で韓国政府は「破棄もあり得る」と『外交カード』として使っていました。その理由は「アメリカ側の反応」と「韓国の思い込み」にあると言えるでしょう。

 

『GSOMIA 破棄』は「アメリカを動かせる外交カード」だと判断して動いていた韓国側

 韓国は『GSOMIA 破棄』を持ち出したところ、アメリカ政府から苦言を呈されるという事態を招いています。

 米国政府が、経済葛藤によって韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が揺らいではいけないと、事実上、韓日両国に警告した。

 (中略)

 青瓦台(チョンワデ、大統領府)の雰囲気はGSOMIAを今すぐではないにしろ「検討可能な」対日カードとして見ている。一応のところ、GSOMIAが韓国の安保必要性というよりは日米の必要のために締結されたという認識が根底にある。

 アメリカは日韓双方と同盟を締結していますが、日韓間の同盟は存在しません。そのため、GSOMIA による日韓間の情報共有制度が存在しなければ、情報伝達に支障が生じてアメリカが不利益を被るという問題を抱えているのです。

 だから、アメリカは「GSOMIA が揺らぐことがあってはならない」と日韓両国に警告したのでしょう。しかし、韓国は「GSOMIA がアメリカの “泣き所” だから、破棄を持ち出せばアメリカが自分たちの肩を持つ」と考え、行動を起こしたと考えられます。

 

「『GSOMIA 破棄』は外交カードになる」と考えた韓国の論理思考

 韓国が「『GSOMIA 破棄』は外交カードになる」と考えたロジックは以下のものでしょう。

  1. 韓国が『GSOMIA 破棄』に言及すると、これまで無反応だったアメリカが動き出した
  2. 日本は『GSOMIA 維持』の立場を示している
  3. 日米両国が『GSOMIA』を求めているから、『破棄』の姿勢を示すことで譲歩を得られるはず

 問題は「アメリカは本気で『GSOMIA 維持』を求めている」が、日本は「アメリカの顔を立てているだけ」という点を韓国が間違って分析していることです。

 在韓米軍を持つアメリカは日韓での情報伝達に支障が出ると、米軍に直接的な損害が出ます。しかし、日本は朝鮮半島で軍事衝突が起きても、自衛隊に直接的な損害は出ません。また、火器管制レーダーを照射された当事者ですから、情報の内容や精度を疑っていることでしょう。

 したがって、韓国が有効な外交カードと考えていた『GSOMIA 破棄』は日本から見ると「暖簾に腕押し」に過ぎなかったと言えるのです。

 

ボルトン補佐官やロス商務長官は「関与はしない」と明言している

 朝日新聞などが「アメリカが『据え置き協定』の締結を仲介しようとしている」と主張していますが、根拠となっているのは “匿名の政府高官” です。

 実際に名前が出ているアメリカ政府の高官では7月22日にボルトン補佐官が「積極的に仲介する意思はない」と言及

 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が河野太郎外相と22日に会談した際、元徴用工問題や半導体材料の輸出規制強化を巡り対立が深まる日韓関係について、米国として積極的に仲介する意思はないと伝えていたことが分かった。

 ロス商務長官も7月30日に訪問中のブラジルで行われた記者会見で「2国間で取り扱うもの」とアメリカが仲介する可能性を否定しています。

 ロス長官は「日本とアメリカ、それに韓国との間の自由な流通を促進することについては興味がある」と述べる一方で、日本が韓国に対する輸出管理を厳しくした措置については「日本と韓国の2国間で取り扱うものであり、アメリカの問題ではない」と述べました。

 高官が公に「関与はしない」と述べているにも関わらず、“匿名を条件に語る謎の政府高官” の声を大きく取り上げるマスコミの報道姿勢は問題と言わざるを得ないでしょう。

 後日談で名前すら明かされない謎の政府高官の意向で世論を誘導できなら、それを悪用するマスコミが後を絶たなくなるからです。

 

 誤報を流す結果となったマスコミが取材方法や裏付け作業についての反省を紙面や番組上で行うなら、まだ報道機関としての価値は残っていることでしょう。しかし、それをやらないメディアがほとんどですから、信頼が低下する一方なのは当然の成り行きと言えるのではないでしょうか。