ユーザーへの還元合戦が加速するスマホ決済サービス大手4社の赤字額が拡大し、体力勝負の様相が強くなる
日経新聞によりますと、スマートフォン決済サービスが一段と体力勝負になっているとのことです。
スマホ決済は普及中の段階ですから、キャンペーンを展開することは必要不可欠です。ただ、決済方法は多様であり、「スマホ決済をするメリット」を利用者が認めなければ普及は困難という事情があります。
そのため、サバイバル戦争が行われている状況になっているのでしょう。
スマートフォン決済が一段と体力勝負になっている。ネット企業4社の2019年のスマホ決済関連の赤字額は1100億円を超え、前年に比べて倍増した。ユーザーへの「還元合戦」に加えて、加盟店開拓を優先して手数料率を低く抑えているためだ。消耗戦が続く中、資本力のあるNTTドコモなど携帯大手のサービスを中心に連携の動きが加速している。
スマホ決済を手がける主要4社はいずれも2019年は赤字を計上している
日経新聞が記事で紹介したスマホ決済の主要4社はいずれも赤字を計上し、その合計額は1000億円を超えています。
- LINE Pay
- 665億円の赤字(2019年・戦略事業)
- ZHD との統合を発表
- ZHD (= 旧・ヤフー、PayPay)
- 238億円の赤字(2019年・PayPay の持分)
- LINE との統合を発表
- メルカリ
- 223億円の赤字(2019年・連結営業損益)
- Origami(オリガミ)の買収を発表
- 楽天
- 53億円の赤字(2019年・楽天ペイメントの営業損益)
全体としては「黒字」を計上している企業はありますが、『スマホ決済』を単体事業として見た場合に「黒字」を出すことに成功した企業がないことが特筆事項です。
これは『スマホ決済』が黎明期であるため、「収益が出る前の段階」という事情が大きく影響しているからでしょう。なぜなら、様々な決済方法の中からどの方法で決済するかは消費者の自由だからです。
したがって、消費者に『スマホ決済』を選択させるためのキャンペーンは重要であり、スマホ決済事業者の収益性が低下するのは止むを得ないことと言えるでしょう。
「キャンペーンで利益を吐き出す」か「強制的に使用させるか」かのどちらかが必要
スマートフォン決済を世間に普及させるには「キャンペーンなどで利用者のメリットを実感させる」や「『スマホ決済』でないと決済できないイベントを定期的に開催する」かが有効です。
多くの決済事業者は『還元キャンペーン』を展開し、「ポイント還元」による “事実上の値引き” をすることで利用を促しています。ただ、利用総額が大きくなると企業側もダメージが大きくなるため、「引き際が難しい方法」と言えるでしょう。
もう1つは「決済事業者が『スマホ決済』のみが有効なイベントを定期的に開催すること」です。
こちらのアプローチを採っているのは楽天でしょう。楽天イーグルスの試合では『完全キャッシュレス』が採用されているため、『スマホ決済』などを使わざるを得ない状況にあります。
試合会場にファンが足を運んでくれなければ本末転倒となりますが、1試合平均で約2万5000人もの観客動員を楽天イーグルスは記録しているのです。このような “利用ニーズ” を自ら作り出せる決済事業者は生き残る可能性が高いと言えるでしょう。
電子決済というカテゴリーには『(suica などの)IC カード決済』も含まれるため、ライバル勢は多い
1人1台がスマートフォンを保有している状況ですが、「電子決済」は『スマホ決済』だけではありません。『クレジットカード決済』や『IC カード決済』も「電子決済」であり、それらの中から選ばれなければ普及することはない状況です。
したがって、“日常的な利用者” を囲い込むことが重要になります。ポイントの付与がないなら、システム障害の頻度が多くて支障が出ている『スマホ決済』を積極的に使う動機にはなりません。
『IC カード決済』なら、アプリを起動させる必要はありませんし、カードを端末に触れさせることで決済は完了させられる手軽さがあります。
こうしたライバルよりも “何らかの優位性” が必要なのですから、『スマホ決済』事業を黒字化するのは簡単なことではないでしょう。
単体の事業として生き残りに成功するビジネスモデルを作り出せる有能な企業が現れるかが最大の注目点と言えるのではないでしょうか。