NHK が「新型コロナへの独自対策を採ったスウェーデンの責任者が対策不十分と認めた」と歪曲して『封鎖推進論』を正当化
NHK が新型コロナウイルス対応でロックダウン(都市封鎖)などをせずに『比較的緩やかな対策』を採ったスウェーデンの責任者が「対策不十分と認めた」との記事を掲載しています。
これは明らかなミスリードと言わざるを得ないでしょう。なぜなら、責任者のテグネル氏は「スウェーデンの方針は良いと考えている」と述べているからです。
『外出自粛要請』を正当化するために「『ロックダウン』を採った各国の方針が正しい」との誤解を印象付ける歪曲記事は問題と言わざるを得ないでしょう。
スウェーデンでは、50人以上の集会を禁止しているものの、飲食店は一部のサービスを除いて営業を続けるなど、厳しい外出制限の措置をとるイギリスなどとは異なり、比較的緩やかな独自の対策を続けてきました。
政府は、人との間に十分な距離をとることなど、個人が責任をもって行動するよう呼びかけてきましたが、感染者は4万人を超え、死者も4500人以上となっています。
感染対策を主導する保健当局のテグネル氏は、3日、地元ラジオのインタビューで「今よりも、もっとうまくできたはずだ」と述べ、対策が十分ではなかったと認めました。
アンドレス・テグネル(Anders Tegnell)氏の発言
スウェーデンで新型コロナウイルス対応の責任者を務めるアンドレス・テグネル(Anders Tegnell)氏が現地3日にラジオで行った発言は NHK のみならず、世界各国のメディアが「スウェーデンは方針を間違ったと認めた」と誤解してニュースを配信しました。
そのため、地元メディアが「意図しない内容が流布している」と但書きを掲載する状況となっています。ちなみにテグネル氏による発言の該当部分は以下のものです。
"We still think that the strategy is good, but you can always make improvements, especially when looking back. I personally think it would be rather strange if anyone answered anything else to such a question. You can always do things better," he said, adding that he did not necessarily think he had been misquoted, but that his comments had been overinterpreted.
「私達はまだ戦略が正しいと思っていますが、常に改善は可能です。特に見返した時はね」という部分を都合良く切り取っているのですから、『失敗論』を流すメディアは問題と言わざるを得ないでしょう。
この手の発言はトヨタでもあることだからです。
豊田章男社長の「改善点は常に存在します」とのコメントを理由に「失敗を認めた」との記事を書くのかという話
立案した戦略が正しいかどうかが判明するのは結果が出てからです。「完璧な結果」が得られることは極めて例外的ですから、ほとんどのケースで「改善点」が見つかることでしょう。
『カイゼン』と言えば、自動車メーカーのトヨタが有名です。トヨタの豊田章男社長が「私達はまだ戦略が正しいと思っていますが、常に改善は可能です」と(今後)述べた際に、「コロナ禍の対応に失敗したと認めた」との記事をマスコミは書くでしょうか。
おそらく、書くこともないでしょう。しかし、テグネル氏が発した「もっと上手くできたはず」とのコメント部分から「失敗を認めた」との印象を大々的に報じているのです。
報じた記事は要約として適切ではありませんし、スウェーデンを除く多くの国が『ロックダウン』を実施して経済をも痛み付けているため、ミスリードを招く問題のある記事だと言わざるを得ないでしょう。
スウェーデンの2020年第1四半期 GDP が +0.4% という現実
ロックダウンをしなかったスウェーデンが他国から嫌悪されている理由は「第1四半期(1月〜3月)の GDP がプラスを記録したこと」でしょう。
都市封鎖や外出自粛を要請した国は日本を含め、GDP がマイナスへと転落しています。しかし、“実質的にノーガード” だったスウェーデンは「GDP がプラス」だったのです。
この事実が正確に伝わると、どの国でも「経済を痛み付ける価値はあったのか」との突き上げを受けるでしょう。政府だけでなく、「厳しいロックダウンが必要」と叫んだマスコミや有識者も “共犯” になります。
それを回避するには「スウェーデンは対応に失敗した」と言える『根拠』が必要なのは言うまでもありません。だから、「戦略は正しい」という発言部分を消し、「改善点はあった」という部分を強調して、報道内容を正当化する工作に走っているのです。
スウェーデンでの死者の多くは「高齢者施設」ですから、該当施設に対して「自衛策の徹底」を求めていれば、現状よりはマシな結果が得られたでしょう。しかし、厳しい外出制限を課したイギリスなどよりもスウェーデンは人口当たりの死者数が少ないのです。
ミスリードで世間に誤解を招く記事を配信することは報道機関として大きな問題があると言わざるを得ないのではないでしょうか。