在留資格を持たないタイ人男子高校生に在留特別許可が出るも、期間は1年に留まる
東京入国管理局から強制退去処分を受けた不法滞在中のタイ人男子高校生に在留特別許可が出たと東京新聞が伝えています。
ただ、期間が1年と限定的であり、どういった意図があるのかが注目点と言えるでしょう。なぜなら、裁判では「強制退去処分の執行」という結論が出ていたからです。
不法滞在のタイ人女性の子として日本で生まれ育ち、東京入国管理局から強制退去処分を受けた甲府市の男子高校生ウォン・ウティナンさん(17)が、十四日付で一年間の在留特別許可を得たことが、関係者への取材で分かった。
(中略)
滞在許可を求めて母親と共に東京入管に出頭したが一四年八月、強制退去処分となった。母親が帰国する一方で、処分取り消しを求め提訴したが、一、二審は敗訴。上告を取り下げ、東京入管に再審査を求めていた。
過去に言及したことのあるテーマですが、2016年6月に地裁で敗れ、同年12月に高裁でも敗訴しています。
当時は「最高裁に持ち込む」と意気込んでいましたが、上告を取り下げたということは状況に変化が生じたということでしょう。ただ、東京入管が1年の在留特別許可を出したことは意外と言えることです。
1:当面の生活を保証する支援者が現れた可能性が大
東京地裁が判決で原告敗訴とした理由は「養育できる人がいない」というものでした。
この判決は高裁で覆っておらず、原告側も裁判を続けることは止めました。その一方で、入管から1年の在留特別許可を手にしているのです。
これは「このタイ人男子高校生の養育者になる」と宣言・証明した人物(または団体)が現れたことが濃厚です。
タイ人男子高校生の支持者は「署名活動が身を結んだのではないか」とコメントしていますが、それは誤りでしょう。なぜなら、裁判で原告側が敗訴しており、入管が強制退去処分を執行する法的根拠を手にしているからです。
入管側が裁判で手にした法的根拠を基に執行手続きを採らなかった理由の方が注目すべきと言えるでしょう。
2:不法滞在者に政府が甘い顔をするのは百害あって一利なし
不法滞在の外国人を雇用することは違法です。コンプライアンスを守る “真っ当な企業” は雇うことも、そうした人物を雇用する企業との取引もしないでしょう。
大きなリスクがあることを承知で雇うのです。グレーゾーンや犯罪組織のフロント企業が雇用の中心になっている可能性が極めて高いはずです。
そうした企業は税金や年金など社会保障に関する費用は負担していないと考えられます。そのため、不法滞在者に在留特別許可を認めると、彼らの老後は生活保護で社会全体が面倒を見る羽目になる恐れが強いのです。
政府が違法行為をする不法滞在者に甘い顔をするほど模倣犯を引き起こす要因となるでしょう。
「身元引き受け人がはっきりしている未成年の不法滞在者」が譲歩できる最大限のラインです。そのため、この条件に合致しない不法滞在者は速やかに強制退去処分を執行すべきなのです。
3:“支援者が生活の保証をしない不法滞在者” に在留特別許可を出すのは不当
在留特別許可を認めるのであれば、支援者が生活の保証をする人物に限定すべきでしょう。支援者が金銭面を用立てない不法滞在者に在留特別許可を出すことなど論外です。
社会保障という形で国の予算にタダ乗りする気なのですから、速やかに強制送還する必要があると言えるでしょう。
「子供の権利条約がある」と主張する人もいますが、在留資格を持たない子供に最高の環境を用意することは義務付けられていません。それが通用するのであれば、入国審査は無用となるでしょう。なぜなら、子供とともに入国すれば、その国での最恵国待遇を享受することが可能になってしまうからです。
負担を社会全体に押し付け、人権活動に邁進していることをアピールするフリーライダー的な活動家に寄り添う必要はありません。変に温情をかける方がマイナス面が大きくなることでしょう。その点ではタイ人の男子高校生は強制退去処分を執行すべきだったと言えるのではないでしょうか。