イギリス・ガーディアン紙、タブロイド判に紙面変更するほど経営不振が深刻化

 高級紙の代名詞との印象が持たれているリベラル派のガーディアン紙がタブロイド判に紙面を変更したと AFP 通信が報じています。

 経費節減策として、紙代やインク代を削るという “涙ぐましい努力” をしなければならないほどに経営状況が悪化しているという証拠でもあります。大した記事を書くことができない海外特派員を切るなどの対策を本格化する必要があると言えるでしょう。

 

 左派系の日刊紙であるガーディアンは、2005年にも大判(ブロードシート)とタブロイド判の中間の大きさのベルリナー判に変更していた。今回は紙面をさらに小さくしたほか、青と白のデザインだった題字の書体も黒のシンプルなものに一新した。

 (中略)

 ガーディアンはコスト削減のため、8000万ポンド(約122億円)相当の印刷機3台も売却もしくは廃棄するほか、タブロイド判の印刷も英メディアグループのトリニティ・ミラー(Trinity Mirror)に外注する。

 ガーディアンは2017年4月期に4470万ポンド(約68億円)の赤字を計上。赤字幅は前期の6870万ポンド(約105億円)からは縮小したが、さらに合理化が必要な状態にある。

 

 

1:ガーディアンの販売部数は15万部台という現実

 経営不振に苦しむガーディアン紙の直近5年の販売部数は下表のとおりです。

表1:ガーディアン紙の販売部数
  販売部数 年間変化率
2013年1月 204,440 -11.02%
2014年1月 207,958 +1.72%
2015年1月 185,429 -10.83%
2016年1月 164,163 -11.47%
2017年1月 156,756 -4.51%

 2014年1月までは20万部台をキープしていましたが、2年連続で年率 10% 超の下げ幅を記録。2017年1月の時点でガーディアン紙の販売部数は15万6756部となりました。

 紙面版の大きな収入源は「読者向けの広告」です。読者数が減少すれば、広告単価が引き下げることになります。そのため、“読者離れ” に対応できるかが鍵となるのです。

 

2:「英語圏の先進国にあるメディア」という厳しい経営環境

 先進国では既存メディア全体が斜陽産業と見られています。その中でも英語圏のメディアは苦しい立場だと言えるでしょう。なぜなら、次のような理由があるからです。

  • インターネットの発達(全世界共通)
  • デジタルネイティブの割合が増加
  • 非英語圏のメディアが英語版サイトを運用
    → 英語圏メディアの現地特派員によるニュース価値が下落
  • 右傾化を求める世論
    → 行き過ぎたグローバルリベラルへの反動
  • ウェブ広告は Google や Facebook が把握済
    → ウェブ版の収益が上がる保証がない

 インターネットの登場で情報伝達経路が多様化しました。その影響を “英語圏の先進国にある既存メディア” が直撃を受けたのです。

 日本を例に出すことにしましょう。ガーディアン紙は日本に現地特派員を置いていますが、この現地特派員のネタ元(の多く)は朝日新聞など政治的主張が一致する左派系メディアの英語版です。

 英語版で全世界向けに現地メディアが公開された記事から、少し手を加えただけの現地特派員の記事など「不人気コンテンツ」となるのは当然のことでしょう。英語を第2言語という扱いにしている国は多く、英語以外を母国語とする人々が互いにコミュニケーションするツールとして用いられている状況なのです。

 高級紙の読者が求める基準の情報を取り続けることができない現地特派員を雇用していれば、経営状況が悪化するのは当然の結果と言えるでしょう。

 

 富豪が買収という形で危機を救ってくれる可能性は存在するでしょう。しかし、リベラル派の旗頭として、富裕層への増税を主張してきた新聞社に救いの手を個人で差し出すような気前の良い人物はいないと見ておくべきです。

 経済を軽視してきた現実をリベラル紙が経営不振という形で突きつけられているのです。ガーディアン紙は派手に倒産してくれた方が他のリベラル紙に反面教師として良い教訓を後世に残すことができると言えるのではないでしょうか。