トランプ政権が議会に「壁建設のための予算」を要求、壁による効果は見込めるのか
メキシコとの国境に壁を建設することを選挙公約に掲げていたトランプ大統領が予算として250億ドル(約2兆7000億円)の基金を設けるよう議会に要求したと NHK が伝えています。
壁を建設することで、アメリカにどれだけの経済的なメリットが生まれるかが焦点でしょう。メリットがあるなら、公共事業として壁を建設する意味はあると言えるからです。
メキシコなどから子どもの時に親に連れられてアメリカに不法入国した若者ら、およそ180万人を強制送還せずに救済し、教育を受けたり、仕事に就いたりしていることを条件に、10年から12年で市民権を付与することが盛り込まれています。
一方で、不法移民対策として、メキシコとの国境沿いに壁を建設するため、250億ドル(およそ2兆7000億円)の基金を設けるよう求めています。
また、希望者が抽選でビザを取得できるプログラムは、国益のためにならないとして廃止すべきだとしています。
この問題は「不法移民」をどう取り扱うかという点に集約されるでしょう。
アメリカで生活する “不法移民” にも、税金は費やされています。不法移民に流れる税金の総額が “メキシコとの国境の壁” で削減されるのであれば、公共事業として建設する意味はあると言えるはずです。
1:「国境の壁」と「不法移民」の経済的なコスト比較
経済的なコストについては保守系のシンクタンクである『移民研究センター(Center For Immigration Studies, CIS)』がレポートを公表しています。レポートに掲載されている内容は以下のとおりです。
- 不法移民に生涯で約74722ドルが費やされる
- もし、彼らの子供がアメリカで生まれた場合、その額は94391ドルにまで上昇する
- 壁の建設が中断されると、次の10年で年間 16〜20 万人が押し寄せると推定される
- その額(最小:約1200億ドル)は壁の建設費(推定: 120〜150 億ドル)を十分にペイするものである
- 2015年の不法移民は17万人。この内、9〜12% を阻止できれば、建設費を上回る
- 壁によって不法移民の数を半分にできれば、10年で640億ドル近くの効果が生まれる試算
アメリカ国内に滞在する資格を持たない人物1人に付き、約7万4000ドル(約800万円)が費やされることになるのです。子供がいれば、その額や約1000万円にまで上昇すると NAS (全米アカデミー)の調査よって報告されています。
本来はアメリカ国民に還元されるべき政府予算が不法移民に費やされている訳ですから、総額を考慮すると壁を建設する意味はあると言えるでしょう。
2:不法移民流入数を現在の半分にできれば、壁建設の効果は十分すぎるほどある
トランプ大統領は議会に「基金として250億ドル」を要求したと報じられています。上記の試算で示された建設費の2倍となっていますが、それでも費用対効果が疑われる数値ではありません。
“トランプの壁” によって、不法移民の流入数を半分にできれば、10年で640億ドルの効果が得られるのです。仮に、4人に1人の割合で越境を断念させる結果に終わったとしても、プラスになる計算なのです。「この政策に対する代替案」を提示することは簡単なことではないと言えるでしょう。
壁の建設は公共事業となりますので、アメリカ人の雇用が増加します。不法移民に費やされていた予算の一部がアメリカ人の給与となり、雇用情勢が改善することに加え、他の社会保障などにも予算を回す余裕が生まれるのです。
また、不法移民が関わる犯罪を根絶する抜本的な対策となる訳ですから、公共事業としてはかなり高い評価が得られることでしょう。
日本では「海」が “天然の壁” として機能しているため、不法移民の数自体が少なく、他国と比較すると寛容な姿勢を持つ人が多いように思われます。
アメリカかヨーロッパのように陸続きで国境を接していると、不法入国者を防ぐためのコストが馬鹿にできないレベルになってしまうケースがあるのです。その “しわ寄せ” が社会全体への行き、安全圏から「かわいそうな難民を保護すべき」と主張するリベラルに対する支持が低下していると言えるでしょう。
右傾化が進んだ理由は左派(リベラル)が自国民よりも、不法移民などの外国人優遇を掲げたからです。その姿勢がどういった結果を招くのかを貴重な教訓とする必要があると言えるのではないでしょうか。