資金確保が課題となっている『伝統芸能』は IR とコラボすることで収益源の確保に動きべきでは?

 NHK によりますと、自民・公明の両党が IR (Integrated Resort、統合型リゾート)施設を整備する法案をめぐり、カジノ施設の規模を「IR の延べ床面積の 3%」とする制限を設けることで合意に達したとのことです。

 つまり、残りの 97% は「カジノ以外の施設」で占められることになるのです。運営資金の確保に苦しく『伝統芸能』は IR 事業者と組むことで、伝統の継承・普及に余裕が生まれる訳ですから、売り込みをかける価値はあると言えるでしょう。

 

 30日の会合では、カジノ施設の規模について、面積の上限を1万5000平方メートルにするとともに、統合型リゾート施設全体の面積の3%を超えないように制限するとした政府案に対し、自民党から「厳しすぎる」という意見が出されました。

 これを受けて、1万5000平方メートルとする面積の上限の規制はなくしたうえで、統合型リゾート施設全体の延べ床面積の3%以下に制限することで両党が合意しました。

 「IR =カジノ」のイメージで先行報道が続いていますが、カジノは IR の1施設に過ぎません。むしろ、カジノ以外のエンターテイメント施設が占める割合の方が大きく、この部分で “魅力的なコンテンツ” が提供されているという実態を見落とすべきではないと言えるでしょう。

 コンテンツに自信を持っているのであれば、IR 事業者と組むことで運営基盤が安定するという恩恵を享受できるだけに『伝統芸能』に関わる業界はスタンスの変更を検討する価値があると思われます。

 

IR (統合型リゾート)施設の収益関係

 IR (統合型リゾート)施設はカジノを含む様々な施設がそろった複合施設のことを指します。基本的な収益構造は以下のようになるでしょう。

画像:IR (統合型リゾート)施設の収益構造例

 カジノ施設は収益性が見込めるため、「カジノで得た収益を他の施設に回す」ことが可能になります。特に、単体で運営すると赤字に陥りやすい施設であっても、保持することができるという点は大きな魅力と言えるでしょう。

 この点で IR 事業者と上手くコラボレーションをすることができた業界は資金難から解放される可能性があるのです。

 

『伝統芸能』こそ、IR 施設内に公演会場を確保すべき

 IR 施設の誘致に熱心なの都市の1つは大阪でしょう。大阪市は過去に「文楽協会」への補助金をカットし、それをメディアが報じたことがあります。

 人形浄瑠璃を演じる文楽協会は「日本を代表する伝統芸能の1つ」と宣伝しています。2008年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されましたが、補助金がなければ立ち行かない経営モデルであることは補助金騒動で示されています。

 こうした『伝統芸能』こそ、IR 事業者と足並みをそろえる必要があります。なぜなら、統合型リゾート施設内に “浄瑠璃劇場” を設置することができれば、多少の赤字額までは「カジノからの収益」で穴埋めしてくれることが期待できるからです。

 (外国人を含め、)多くの人々が行き交うエリアに公演スペースを確保できる訳ですから、外国人向けに『英語版のプログラム』を作成し、まずは “日本の伝統芸能” を体感してもらうことが先決です。その後、日本語で行われる本来の公演にも興味を示してもらうことが重要です。

 新しい顧客層を開拓できるチャンスが生まれようとしている訳ですから、それ活かすことができるかは業界全体に大きな影響を与えることになると言えるでしょう。

 

『カジノ事業の運営免許』の容認条件に「日本の伝統芸能と触れ合う機会の確保」を政府に要求すべき

 IR 区域には「美術館などのレクリエーション施設」や「国内旅行の提案施設」を併設することが必須になる方針と報じられています。

 これは意味がないでしょう。なぜなら、ある程度の金額が必要となる海外旅行を “行き当たりばったり” でする人は少数派だと考えられるからです。また、IR 事業者が同じレクリエーション施設を「コストがかからない」という理由でこぞって建設されることは機会損失と言えるでしょう。

 解決策は「カジノ運営の免許審査において『IR 区域に未設置の日本の伝統芸能を行うための公演場』を『レクリエーション施設』として高い評価を与える制度となるように働きかけを行うこと」です。

 『美術館』が林立しても集客効果は限定されます。また、特定の伝統芸能ばかりの施設でも同じ現象が起きるでしょう。「太秦の映画村」を持ち込んでも良い訳ですし、殺陣で敵役の侍集団を切る体験などは独自色が強く、インスタ映えもすると考えられます。

 

 『伝統』と言っても、固執し続けると廃れることは必然です。時代の流れに上手く適応することが不可欠ですし、少子化が進む日本市場を考慮すると、海外に目を向けることは避けられません。

 日本語をあまり理解できない人でも楽しめるように『伝統』を変化させ、それを IR 施設で披露することで新たな顧客層を獲得することに挑戦することが多くの『伝統芸能』で求められていることと言えるのではないでしょうか。